Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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記事の商品価値

2008-02-08 10:36:09 | 報道写真考・たわ言
またまた書き込んでいただいたコメントからブログのネタをいただいたようで恐縮だけれど、テレビの視聴率に関するコメントには非常に共感するものがあったので、僕なりの意見を書いてみたいと思う。

この点についてはテレビに限らず新聞も全く同じで、購読数、そしてウェブページならクリック数で、その記事の「商品価値」が決められてしまうようなところがある。

洗剤や車などを売るような一般企業と違い、報道に関わる新聞社には、情報を売って利潤を生む以外に、読者に知識を与え「教育」することによって社会を改善していこうというジャーナリズムの重要な役割があるはずだ。

その使命と経営上の利益とのバランスがとれていればいいのだが、経営陣が変わったりして利益だけを求めるようになると新聞社もおかしなことになっていく。コメントでも述べられているように、購読率をあげようとして「読者が求めるもの」を選んで報道するようになると、それはだんだんとジャーナリズムの使命から離れ、確実に記事の質の低下につながっていくからだ。

ウェブサイトのクリック数を調べるとよくわかるが、読者がクリックするのは芸能関係と動物関係がやたら多い。たしかにこの分野は世界情勢やその他の硬いニュースよりも一般受けするし、クリック数が多いのも納得できる。

このクリック数というのが曲者で、結構重要な役割を果たしているのだ。営業マンが紙面への広告をとるときに、「これだけクリックされているから広告の効果は期待できますよ。。。」というような売込みができるから、クリック数が多ければ多いほど、価値の高いページということになる。

しかし、だからといってこんなクリック数だけを基準にして芸能とか動物ものを記事のなかにあえて増やしたり、ウェブサイトのフロントページに持ってくるとしたら、紙面はどうなってしまうか?本来のジャーナリズムとはかけ離れた、単なる娯楽紙と成り果ててしまうだろう。

トリビューンの紙面では、昨年、フロントページに続いて2番目にあった国際情勢(World)のページが、国内情勢 (Nation)と入れ替えられて3番目にきてしまった。国際情勢は、国内のことに比べて「読者の関心が薄い」という判断によるものだが、アメリカ人はもっと世界のことを知ったほうがいいんじゃないか、と思っている僕にとっては全く納得のいかない紙面変更だった。本来なら、「読者の関心が薄い」からこそ、読者の興味や知識を高められるようにもっと力を入れて報道すべきだと思うからだ。

。。。とまあいろいろ御託を並べてしまったが、新聞社といえども所詮は企業。広告収入を経営の源のひとつとしている以上、独立したジャーナリズム機関となることは不可能だし、ましてやそこから給料をもらっているサラリーマン・カメラマンである僕が新聞のあり方を愚痴ってもあまり説得力がないな、という気もしているのだけれど。。。