Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

白黒かカラーか?

2006-09-21 21:07:20 | 報道写真考・たわ言
先日同僚とちょっとした議論をした。

「白黒かカラーか?」

メキシコからの移民を撮った一連のポートレートを、彼が白黒に変換しているのをみた僕が、カラーのままのほうがいいのでは、と言ったのが始まりだった。

情緒をだすため、ドラマティクにするためなど理由はいろいろあるが、カラー写真から色を抜いて白黒写真に変換するのは良くみられる手法だし、写真コンテストなどでもわざわざ白黒に変換して応募される作品も少なくない。

確かに目障りになる色をなくすことによって、主題(言いたいこと)がはっきりする写真もあるし、その効果は認めよう。僕の写真の中でも、これまで意識的に白黒に変えたものがいくつかある。

しかし、基本的に僕はそこに写っているものは色も含めてそのまま現実として受け止めたいと思っているから、報道写真に関しては「芸術的にみえる」とか「情緒がでる」というような理由でむやみに写真を白黒に変えてしまうことには抵抗がある。だいたいわざわざ白黒に変えるくらいなら、初めから意思をもって白黒フィルム(モード)で撮ればいいのに。。。とも思うのだ。

身体から流れ出る血の色は赤く、立ち昇る炎はオレンジ色。日に焼けた僕の肌は褐色で、晴れ渡った空は青色。。。それが僕らの接している現実の光景だ。

しかし、そこから色を抜き取ってしまうことで、写真がどこか気高い「芸術作品」のようになってしまい、見る人が普段の生活レベルで共有できる「日常性」を失ってしまうようなことはないだろうか。そこに写されているものは悲惨な現実なのに、どこか非日常で現実的でないような、ある意味美しくさえもある。。。そんな感覚に陥ってしまう恐れはないだろうか。

僕の同僚は、カラーは目障りになるという理由で一連のポートレートをすべて白黒に変えた。

それらは彼の撮った写真だし、彼自身の写真を通しての主張があるから、もともと僕がうんぬん意見することではなかったかもしれない。結局のところ、白黒かカラーかは個々のフォトグラファーの好みの問題ということになってしまうのだろうし、それがいいか悪いかなど、他人が判断できるわけでもないのだから。。。