Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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読者より広告主

2006-03-24 20:26:14 | 報道写真考・たわ言
トリビューン誌の社長であるフィッツシモン氏から社員宛に社内メールが届いた。

昨年に引き続き経営があまり思わしくないことをあげ、これからどのような方針でやっていくべきかを簡単に述べてある。そのなかに、こんな一文があった。

「これから広告量をあげ、経営を向上させていくためには、いかに斬新な手段で広告主たちにアピールできるかにかかっている。。。」

「広告主たち???『読者』の間違いじゃないの?」あれれっと一瞬思ったが、すぐにやっぱりな、と納得。

新聞社といえども所詮はビジネス、広告がはいらなくては会社自体が成り立たなくなる。やはり読者よりも広告主のほうを向いてしまうのだろう。

トリビューンに限らず、広告収入にたよっている媒体ならどこでもこんなもんだ。だから、広告主の批判なんかできなくなるし、相手が得意先の大企業ならなおさらだろう。

以前ボストンヘラルドで働いているとき、こんなことがよくあった。動物愛護団体の活動家たちが、毛皮製品の販売に抗議してファイリーンズ(デパートメント・ストア)の入り口に座り込みなどをして毎年のように逮捕されていたが、僕らが取材していい写真を撮ってきても、ほとんどこの手の記事が新聞に載ることはなかった。いうまでもなく、メーシーズやファイリーンズなどの大手デパートは、車のディーラーシップとならんで新聞社にとって大口の広告主のひとつだからだ。

まあ、こんなことは新聞社の体質としてずっと続いてきていることだし、特に新しいことでもないのだが、こうして社長直々のメールで「広告主へのアピール」なんて説かれると、なんだか複雑な気持ちにもなる。

やはり僕ら現場で働く者たちにとっては、広告主のご機嫌をとるような紙面よりも、読者が納得できるような新聞であってほしいと思っているのだから。

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明日の飛行機で日本に帰ります。4月1日のちひろ美術館での対談をはじめ、いろいろ忙しくなりそうですが、適当に時間を見つけてブログアップします。