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ちがった空

 「今、信号、黄色だったわよ」ダコタDC3エスカル機の副操縦士が叫んでいる。最近無意識に黄色信号に飛び込み、ヒヤッとすることがある。ちゃんと前は見ているのだけれど注意力が落ちてきているのか。

 昔は前さえ見ていれば、運転中どんなに会話に熱中していても、無意識に人を避け、自転車を避け、信号では止まることが出来た。運転に意識の入り込む余地は無かった。

 もっとも、車の外を可愛い娘でも歩いていたら、いきなり無意識の世界から伝令が走り、意識の世界では作戦会議など始めてしまう。こうなると熱中していた会話がぎこちなくなり、人間関係にまた亀裂が生じる。残念ながら人間の脳は創造的な思考を二つ同時には出来ないようになっているようだ。これは重要な問題ではあるが本題とは関係が無いので話を先に進める。作戦会議が創造的な思考であるかについてもノーコメントである。

 最近、脳の研究が進み、視覚をつかさどる部分が二箇所あり、一方が無意識の行動への入力になっていて、もう一方が意識行動への入力になっているらしいと分かってきた。この無意識の行動は、多くの動物に備わる原始的な脳機能で、意識行動は人間など高等動物のみに見られる脳機能のようである。そして無意識行動と意識行動は並列して同時に出来る。

 この分類で行くと、運転は創造的な思考とは無関係に、無意識のうちにうまくやることの出来る類の動作のようである。だから、前さえ見ていれば運転をしながら、しりとり遊びも出来るし、早口言葉だって言える。副操縦士の愚痴を聞いてやるなどお手の物である、、、、はずであった。

 どうも年とともに、原始的な生存機能である無意識による行動の精度が下がってきているようだ。無意識だけに運転を任しておくと危なくてしょうがない。意識的に運転をサポートする必要があるようだ。運転中、口数が少なくなってきたのはそういうわけである。この点は是非ご理解いただきたい、副操縦士殿。

 こういった面白い脳の話が書いてある「脳の中の幽霊、ふたたび」V.S.ラマチャンドラン、角川書店はおすすめである。字は大きいし、ページ数は少ないので、すぐ読めると思う。前著であるサイエンスライターとの共著「脳の中の幽霊」も時間があれば読んでみることをお勧めする。理屈っぽそうで面白くなさそうと思った方、それは私の文章が下手なせいであって、本当に面白い、保証つき。

 「副操縦士君、さっき黄色で突っ込んだのはね、右折車も歩行者もいなかったし、第一こんな深夜に他の車なんぞいないからだよ。ちゃんと考えているから大丈夫」

副操縦士による後書き: プライドを傷つけないように黄色と言ってますけれど、本当は赤なんです。赤で突っ込んでいくから怖くてしょうがないのですけど、どう言っていいものやら、ふうー、、、


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