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近未来日本2050年(連載第19回)

2015-09-04 | 〆近未来日本2050年

四 弱者淘汰政策(続き)

民活福祉政策
 前回紹介した脱社会保障政策を補充する政策が「民活福祉政策」である。すなわち、これは国が社会保障から撤退した空白を民間の福祉事業で埋めるという策であり、言い換えれば福祉の民営化である(政権は「民営化」という表現を好まない)。
 この点、ファシスト政権成立以前に民間福祉事業と言えば、ほぼ非営利の福祉事業を意味したが、ファシスト政権は医療を含めた広範囲な福祉事業への営利企業の参入を大々的に認める政策を導入した。その結果、株式会社立の福祉施設や病院が多数生まれている。
 特に、前回も紹介したように新設が禁止されている介護保険施設を補うものとしての営利的介護施設は民活福祉の象徴であり、他業種からの多くの参入があり、将来的には介護施設の主流となるとすら言われている。
 一方、長くタブーとされてきた株式会社病院も解禁されている。この点、国も「国立病院の収益化」を掲げ、国を51パーセントの過半数株主とする国立病院運営会社(持株会社)を設立したうえ、証券市場に上場するという大胆な策を打ち出したのである。
 その他、既設の私立病院や公立病院の株式会社化も解禁したため、多くの病院が株式会社に移行している。この施策は医療の露骨な営利化として医療関連団体からの批判も根強いが、株式会社化によって経営基盤が安定した成功例も多いと反論されている。
 もう一つの策は認可慈善団体の免税措置である。これは厚労大臣による審査と認可を受けた慈善団体については法人税を免除するという政策で、非営利系の福祉事業を税制面で優遇し、発展を促すものである。この制度は脱税の手段として悪用される危険を指摘されながらも、脱社会保障政策の代償として財務省も容認している。
 また、大幅に縮減された公的年金の補充としての個人年金保険も盛んになっており、統計によると約55パーセントの世帯が何らかの個人年金保険に加入しているという(平成24年(2012年)時点では約23パーセント)。
 同様に、健康保険の4割負担化を補うものとしての商業医療保険の活用も盛んになっており、年金保険と合わせ、金銭給付面での民活福祉も進んでいる。論者の中にはこれを弱者に過酷なアメリカ型福祉への大転換とみなす者もいる。


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