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旧ソ連憲法評注(連載第13回)

2014-09-11 | 〆ソヴィエト憲法評注

第四十八条

1 ソ連市民は、国家的および社会的なことがらの管理ならびに法律と全国家的および地方的な意義をもつ決定の討議と採択に参加する権利をもつ。

2 この権利は、人民代議員ソヴィエトおよびその他の選挙制の国家機関を選挙し、これらに選挙され、全人民的な討議および投票ならびに人民的監督に参加し、国家機関、社会団体および社会的自主機関の仕事、ならびに労働集団の集会および居住地の集会に参加することができることにより、保障される。

 本条と次条は広い意味での参政権に関わる規定である。順序としては、社会権と自由権の間に挟まる形で規定されており、社会権より劣後していることは特徴的である。
 狭義の参政権を保障する本条第二項で、参政権の行使は投票に限らず、国家機関ないし公共的機関の仕事に就くこと(公務就任権)、職場や地域の集会に参加することなど多様な形で保障されているように見えるが、実際のところ共産党独裁体制では公職選挙は出来レースであり、各種集会も党公認の官製集会にすぎず、実質的な参政権は確保されていなかったと見られる。

第四十九条

1 ソ連のすべての市民は、国家機関および社会団体にたいして、その活動の改善を提案し、その仕事の欠陥を批判する権利をもつ。

2 公務員は、定められた期間に市民の提案および申請を審理し、それにたいする回答を行ない、必要な措置をとる義務をおう。

3 批判を理由とする迫害は、禁止される。批判を理由に迫害をした者は、責任をとわれる。

 本条は、人民主権原理の表れとして、請願権よりは直接的だがイニシアティブほど直接的ではない、独特の提案・批判権を定める規定である。第三項で批判を理由とする迫害の禁止を注意的に定めているとはいえ、支配政党たる共産党への批判はタブーであり、実際上ソ連の体制批判者は陰に陽に抑圧されていたことは、よく知られている。


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