ザ・コミュニスト

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黄昏の超大国

2012-11-08 | 時評

オバマ大統領の再選が決まったアメリカ合衆国の現状は旧ソ連末期の状況に等しい━。こう言えば多々異論もあろう。 しかし、筆者の目にはオバマとソ連最後の指導者となったゴルバチョフとがダブって見える。

ともに体制の危機に、異例の若い年齢で体制内改革派として異例の急浮上を見せて超大国の指導者に就き、揺らぐ体制を立て直すため、「改革」に着手する。だが、より根本的な変革を求める勢力からは「改革」の中途半端さに失望され、体制護持の守旧派からは憎悪すら混じった激しい反撃を受ける。

この点、旧ソ連の国是であった国家社会主義と共産党独裁体制に手を付けたゴルバチョフは守旧派のクーデターを招き、一時失墜したものの、体を張ってクーデターを阻止した急進改革派と市民勢力の手で救い出された。

オバマはアメリカの国是である経済自由主義と「小さな政府」に手を付け、保守派の激しい反発と挑戦を受けたが、今般の再選を賭けた選挙で勝利することによってこれをはね返した。

この先のゴルバチョフとオバマの運命は大きく分かれるだろう。弱体をさらけ出したゴルバチョフは自身を救出した急進改革派によって事実上追放される形で権力の座を降り、ソ連体制解体の幕引きを演じさせられたが、合法的選挙の勝利者となったオバマは追放されないだろう。

しかし、今後も保守派に足を引っ張られる体制内改革者にすぎないオバマも結局のところ、アメリカ合衆国という体制の終末期を演出するだけである。

アメリカ合衆国がソヴィエト連邦のようにもろくもばらばらに解体し去ることはないかもしれない。しかし、2008年世界大不況以降、努力すれば誰もが成功するという“アメリカン・ドリーム”なる神話が崩れ去ったアメリカ社会は、貧富二層―アメリカではほぼ人種の分割線に沿っている―にくっきりと分断されており、すでに「一国二社会」のような分裂を来たしている。

この分裂は、共和/民主という本質的には大差ない二大政党による事実上の分断支配―二党支配体制―という、これまた一つのアメリカ的国是によって、一層助長されていくだろう。

そして、こうした国内の分裂は、国際社会にあっては、中国に代表される新興諸国の台頭やロシアの「復活」という状況の中で、アメリカ合衆国を「唯一の超大国」の座から引き摺り下ろす引力となるであろう。


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