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旧ソ連憲法評注(連載最終回)

2015-01-22 | 〆ソヴィエト憲法評注

第八編 ソ連の国章、国旗、国家および首都

本編は、表題どおり、ソ連の国の象徴や首都についてのまとめ規定である。

第百六十九条

ソヴィエト社会主義共和国連邦の国章は、太陽の光のなかにえがかれ、麦畑でかこまれた地球のうえの鎌とハンマーからなり、各連邦構成共和国の言語で、「万国のプロレタリアート団結せよ!」という文字が記される。国章の上の部分には、五尖の星がおかれる。

 国章中の鎌は農民、ハンマーは労働者を象徴しており、ソ連が労農プロレタリアートの国であるという標榜を表現していた。「万国のプロレタリアート団結せよ!」のメッセージは、マルクス‐エンゲルス『共産党宣言』のあまりにも有名な一句からの引用である。

第百七十条

ソヴィエト社会主義共和国連邦の国旗は、方形の赤い布であり、旗ざおに近い上の隅に金色の鎌とハンマーがえがかれ、その上に金色でふちどられた五尖の赤い星がえがかれる。旗の幅と長さの比は、一対二である。

 冷戦時代には、アメリカの星条旗と並び、ソヴィエトの赤星旗も覇権の象徴であった。ただし、アメリカ憲法には国旗の定めはない。

第百七十一条

ソヴィエト社会主義共和国連邦の国歌は、ソ連最高会議幹部会が承認する。

 国歌については、具体的な指定が憲法になかった。本憲法制定当時の国歌は1944年に制定された版であったが、本憲法制定と同年に歌詞だけ一部変更された。

第百七十二条

ソヴィエト社会主義共和国連邦の首都は、モスクワ市である。

 ロシア革命後首都として固定されたモスクワは革命の象徴でもあったため、憲法にも首都として明記されていた。

第九編 ソ連憲法の効力およびその改正手続き

 憲法最終編の本編は、憲法の最高法規性と改正手続きを定めている。

第百七十三条

ソ連憲法は最高の法的効力をもつ。すべての法律および国家機関のその他の法令は、ソ連憲法にもとづき、これにしたがって公布される。

 憲法の形式的な最高法規性を宣言している。ただ、日本国憲法第九十七条に相当するような実質的な最高法規性を謳う規定は見えない。

第百七十四条

ソ連憲法の改正は、両院それぞれの代議員総数の三分の二以上の多数決で可決されたソ連最高会議の決定によって、行なわれる。

 憲法改正は最高会議の決定のみで行なうことができ、日本の現行憲法のように国民投票は必要とされなかった。両院それぞれで代議員総数の三分の二というハードルは高いように思えるが、一党支配体制では事実上共産党が決定した改憲案に対して反対票が優位を占める可能性はほとんどなかった。


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