ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

テロは「フランス問題」

2015-11-21 | 時評

テロはいつどこで起きてもおかしくない━。これが「反テロリスト」の十八番である。これは、「いつどこでもテロを起こす」というまさしくテロリストの脅しと全く同一の論理に基づく不安惹起言説である。

「反テロリスト」は日本にも存在し、東京五輪を見越して日本でもテロが起きるなどとしきりに煽り、警察権力の強化に結びつけようと画策しているが、この手の「反テロリスト」の言説戦略の狙いが大衆にテロの恐怖を煽って警察、諜報機関の権限を強化することにあるのは間違いなく、前に指摘した「テロ‐反テロ」ゲームの一環でもあるのだ。

テロはまさしく恐怖を惹起する戦術行動だが、それに対抗するとする「反テロリスト」の「いつどこでも」言説もまた、対抗的に恐怖を煽る戦略である。このような戦略に乗せられないためには、テロは決していつどこでも起きているのではないという事実を認識することである。

実際、今年始めの新聞社襲撃テロといい、先般のパリ同時テロといい、このところ狙われているのは専らフランスである。さらにパリの後、別集団によって引き起こされたマリのホテル襲撃事件の舞台マリはアフリカにおけるフランスの旧植民地である。

近年の大量殺傷テロは、フランス国内ないしは旧フランス植民地諸国に集中しているのである。なぜなのかは簡単に解答できないことであるが、おそらくはフランスの移民政策の問題点とそれとも関連する帝国主義時代の負の遺産が、今になって絡み合い噴出しているのだと思われる。

最近のテロは、場所はともあれ「フランス絡み」で起こるという事実は否定のしようがない。その意味で、テロは「フランス問題」である。そう言えば、テロの語源テルールもフランス語起源であり、かの国は何かとテロと縁が深いようである。

ここでフランスを槍玉にあげるつもりはないが、テロ対策は「いつどこでも」ではなく、今、まずフランスでその内外政策を反省的に検証するところから始められるべきである。本当に、いつどこでもテロが起きる時代に突入しないためにも。


コメント    この記事についてブログを書く
« 「テロ‐反テロ」ゲーム | トップ | 「恐怖からの自由」で連帯 »

コメントを投稿