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奴隷の世界歴史(連載第6回)

2017-08-08 | 〆奴隷の世界歴史

第一章 奴隷禁止原則と現代型奴隷制

隷属的外国人労働
 児童労働が主として後発国における現代型奴隷制だとすれば、外国人労働は主として先発国または資源国に遍在する現代型奴隷制である。
 一般国民の生活水準が一定以上に発達した諸国では、一般国民が敬遠するようになった低賃金の単純労働・底辺労働の担い手不足が深刻化するため、外国人労働力にそれらを依存するようになる。これが外国人労働の慣習を生み出す共通根である。
 外国人労働はいちおう契約によって成立するとはいえ、しばしば契約内容が不当であり、隷属的な地位に置かれることが多い。中でも、中東産油諸国で一般化している外国人家政婦労働ではしばしば主人による種々の虐待や秘密裏の転売すら行われ、外国人家政婦の家事奴隷化が指摘されている。
 これら中東産油国の中には、人口構成上外国人のほうが国民より多い例すらあり、それら外国人のすべてが奴隷状態に置かれているわけではないとしても、国民としての権利の保障が受けられないまま、従属民化されている。
 他方、先発国向けでは、不法就労と人身売買とが結びつき、組織犯罪集団の資金源となっている疑いが指摘される。中には到着次第、旅券などの必要書類を取り上げたうえ、拘束的環境で強制労働させるような形態もあるとされる。それとも関連して、外国人を性労働者として海外で働かせる性的奴隷慣習と結びついた形態も少なくない。
 ちなみに近年、アフリカから欧州への移民を目指す人々の中継地となっているリビアで移民を拘束し、奴隷として売買する奴隷市場が形成されていることが報告されている。こうした闇の奴隷市場が確立されれば、まさに復刻奴隷制となる。 
 移民受け入れ政策を公式に打ち出している諸国にあっては、外国人労働者はいずれ移民として定住していくため、合法的外国人労働者にも相応の権利保障がなされるとはいえ、永住権を取得するまではしばしば不当な労働条件を強いられ、永住後も低所得層に押し込められることが多い。
 その点、移民政策を採らない日本では1990年代から「外国人技能実習制度」として、外国人労働者を技能実習名目で正規に受け入れる制度を導入してきたが、この制度は実態として、外国人労働者を「実習生」とすることで、労働基準法を脱法し、外国人に隷属的労働を強いる手段の温床とされてきた。
 国際社会では1990年に「国連移住労働者権利条約」を採択し、その中で移住労働者を奴隷状態に置くことを禁止している。しかし、同条約を批准しているのは労働者送り出し国を中心としたわずか50か国弱にすぎず、日本やアメリカその他の受け入れ国側はほとんどが未批准の状態で放置しており、条約体制として全く不備な状況にある。
 外国人労働は、奴隷制が原則的に禁止された現代にあって、奴隷制を補填する手段として、ある意味ではまさに現代型奴隷制の典型なのかもしれない。


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