ザ・コミュニスト

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ソチと性的少数者

2014-02-08 | 時評

7日に挙行されたソチ五輪開会式にアメリカをはじめ、欧米主要国首脳が出席しなかった。その理由の一つに、ロシアが導入した同性愛宣伝禁止法なる時代錯誤の弾圧政策が挙げられた。開会式前日のIOC総会の会議では、国連事務総長が性的少数者への差別に反対を表明した。

これほどまで性的少数者の人権問題が国際的にクローズアップされる状況は、画期的と言える。少なくとも同性愛者を処罰することにつながる抑圧政策に対しては、国際的にも批判網が形成されつつあるということである。しかし、なお限界がある。

一つはそうした批判網が専ら欧米諸国中心にとどまっており、アジア・アフリカにはいまだ同性愛処罰政策を保持する諸国が少なくないことである。アジアにあっても、日本は伝統的に同性愛を処罰する政策を持たないにもかかわらず、安倍首相がしっかり出席したのは、自国の非処罰政策に対する確信を持っていない―必ずしも処罰に反対しない―証拠ともなる。

もう一つの限界は、これまでのところ、国際社会での動きが同性愛を処罰から解放する自由主義的な観点にどとまっていることである。処罰からの解放は重要な一里塚ではあるが、まだ多くの諸国で結婚から同性愛者が排除され、同性愛者の家族形成の権利が侵害されていることへの国際的な批判網は見られない。

欧州のいくつかの国や米国の一部の州ではすでに同性婚の解禁に踏み切るところも出てきているが、国連をはじめ国際社会ではこうした自由権中心の解放から社会権中心の解放への転換はまだ先のことのようである。

とりあえずは同性婚そのものではなく、最低限同性間パートナーシップのような準婚制度の先行導入を国際的に呼びかけていくことは、各国で同性婚に反対する保守派との妥協的な落としどころとなると考えられる。


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