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スウェーデン憲法読解(連載第16回)

2015-02-14 | 〆スウェーデン憲法読解

第七章 政府の活動

 本章は、政府(内閣)の活動に関する細則を定めている。そこでは政府が透明性を確保しつつ、合理的に活動できるようにするための工夫が見られる。

政府官房及びその職務

第一条

政府の事務を準備するため、並びに政府並びに大臣を他の活動において補佐するため、政府官房を設置しなければならない。政府官房には、様々な活動部門に関する省庁が所属する。政府は、その事務を省庁ごとに分配する。総理大臣は、大臣の中から省庁の長を任命する。

 政府官房は、日本の内閣官房に相当する政府の中枢部署であるが、単なる調整機関ではなく、各省庁を包括することで、縦割りのセクショナリズムを防止しようとするものと考えられる。

事務の準備

第二条

政府の事務の準備に際しては、関係する機関から必要な情報及び意見が収集されなければならない。情報及び意見は、必要な範囲内で、自治体からも収集されなければならない。団体及び個人にも、必要な範囲内で、意見を述べる機会が与えられなければならない。

 政府の活動準備に当たり、自治体を含む関係機関からの情報・意見収集、さらにはパブリックコメントの機会の保障が義務づけられている。政府の活動が独善に陥らないための工夫である。

第三条

1 政府の事務については、政府により閣議の際に決定する。

2 ただし、国防軍内における法令又は特別な政府の決定の執行に該当する政府の事務は、法律に定める範囲内で、総理大臣の監督の下、当該事務が属する省庁の長により決定することができる。

第四条

総理大臣は、他の大臣を閣議に招集し、閣議を主宰する。閣議には、少なくとも五人の大臣が出席しなければならない。

第五条

閣議の際には、省庁の長が当該省庁に属する事務についての報告者となる。ただし、総理大臣は、当該省庁に属する一つの事務又は一連の事務が当該省庁の長とは別の大臣によって報告されるよう、指示することができる。

 政府の事務は原則として閣議の決定事項とされ、政府の活動中心が閣議にあることを明確にするとともに、閣議の出席要件や決定方法、報告方法は合理化され、全体して効率的な意思決定ができるように工夫されている。

議事録及び反対意見

第六条

閣議に際しては、議事録が作成されなければならない。反対意見は、当該議事録に記録されなければならない。

 反対意見を明記した閣議議事録の作成が、憲法上義務づけられている。このように閣議に全員一致を求めず、反対意見もあえて記録に残すことは、第一章第一条で宣言された意見の自由を基調とするスウェーデン民主主義の現れとも読める。

第七条

法令、議会への提案及び発すべき他の決定は、効力を有するためには、政府の名の下に総理大臣又は他の大臣による署名が行われなければならない。ただし、政府は、命令により、特別の場合に、発すべき決定に対して、公務員が署名することができるようにしなければならない旨の規定を定めることができる。


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