ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

犯則と処遇(連載第10回)

2018-12-05 | 犯則と処遇

8 更生援護について

 「矯正処遇」を完了した後、対象者はさらに社会内で更生を果たしていく責任を負う。そのような更生過程を支える社会復帰のサポートを「更生援護」と呼ぶ。
 このような更生援護は社会サービス体系の一環を成すものであるから、犯則と処遇の対応関係を法定する犯則法とは別立ての「更生援護法」に根拠を置き、同法に基づいて設立される公益法人である「更生援護協会」が実施機関となる。

 その対象者は、矯正処遇期間が比較的長期に及ぶ「第二種矯正処遇」または「第三種矯正処遇」を受けて矯正センターを退所した者であるが、「第一種矯正処遇」で更新を受けて退所した者も含む。また「第三種矯正処遇」に引き続く「終身監置」の「本解除」を受けた者で、緊急的な保護を必要とする者も含む。

 更生援護は任意のサービスであるから、基本的に本人の申請によって開始されるが、申請することが強く推奨されるので、矯正センターでは更生援護協会への申請を常時サポートする。申請を受けた協会では、その傘下にあって更生援護の実務を担う各地の「更生援護会」を指定し、サービスを提供する。

 更生援護サービスの中心は住居の提供と就労支援であるが、家族関係などの環境調整やカウンセリングが必要なケースもある。従って、「更生援護会」には常勤職のソーシャルワーカー(以下、SWと略す)のほか、非常勤を含むカウンセラーも配置される必要がある。
 「更生援護会」に配置されるSW、すなわち「更生援護SW」という専門職は通常のSWとは異なり、犯則と処遇に関する深い知見を要するため、独立した専門認定資格として養成することを検討しなければならないであろう。

 更生援護サービスの中で最も困難なのは、就労支援である。この点で問題となるのは、現在「前科者」に対して法律上課せられる多種多様な職業上の資格制限である。こうした制限は一般就職の困難な「前科者」の就労可能性をいっそう狭め、ひいては生活難や自暴自棄からの再犯を誘発する。

 「犯則→処遇」体系の下における「処遇」は「処罰」ではないから、そもそも「前科」という概念自体が消滅する。従って、特定の犯則を犯したこと自体が特定の専門的な職業上の適格性を喪失させるような場合(例えば、医師法違反行為をした医師など)を除き、原則的に職業上の資格制限は存在しない。

 とはいえ、「前科」の概念は消えても過去に犯則行為をした「犯歴」そのものを消すことはできない以上、社会一般に伏在する「犯罪者」への差別的偏見にさらされる更生援護対象者の就労は容易でないと想定される。
 そこで、更生援護サービスにおいても、単に就労を斡旋する消極的援護にとどまらず、更生援護対象者自らが共同で自助事業を起こすことを助成したり、適性が認められた者は「更生援護会」の職員として雇用したりする形で、積極的援護を目指す必要があるだろう。


コメント    この記事についてブログを書く
« 共産教育論(連載第22回) | トップ | 犯則と処遇(連載第11回) »