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持続可能的計画経済論(連載第42回)

2018-09-04 | 〆持続可能的計画経済論

第10章 計画経済と政治制度

(2)政経二院制
 計画経済と政治制度の関係では、代表制のあり方が問題になる。この点、旧ソ連のような行政指令型の計画経済では、経済計画は行政機関の任務であったから、旧ソ連の国家計画委員会のような計画行政機関が用意されれば足り、代表制の問題はさほど重要性を持たない。
 もっとも、そのような強大な権限を持つ行政機関を代表機関がどのように監督し得るかという民主的な監督の問題は発生するが、これは代表制そのものというより、行政監督の問題である。
 しかし、企業体の自主的な共同計画を軸とする新たな計画経済にあっては、そうした共同計画を策定する代表機関の制度や構成いかんが重要な問題となる。
 最もラディカルな制度としては、企業体の代表機関に一本化することが考えられる。例えば、業界ごとの代表者で構成する代表機関である。これは職能代表制に近い構成となる。
 特に、「合理的な共同計画に従って意識的に行動する、自由かつ平等な生産者たちの諸協同組合からなる一社会」という定義に基づくマルクスの共産主義社会論からは、生産協同組合(企業体)自身が代表機関を持つという構制が導かれるであろう。
 マルクスによれば、共産主義社会では、(一)統治機能は存在せず、(二)一般的機能の分担は何らの支配をも生じない実務上の問題となり、(三)選挙は今日のような政治的性格を完全に失う。そして共産主義的集団所有の下ではいわゆる人民の意志は消え失せ、協同組合の現実的な意志に席を譲るという。イメージとしては、協同組合が合同して直接に執政するような体制である。
 しかし、経済計画はそれだけでも多くの審議と調整を要する作業であるので、他の一般政策の審議は別途代表機関を設けて機能分担するほうが合理的であろう。その意味で、経済計画機関は一般代表機関とは別立ての企業代表機関として設置運営し、一般代表機関は経済計画機関の策定した経済計画に承認を与えるのみにとどめるのがよい。
 こうした計画(経済)/一般(政治)の二本立て代表機関―政経二院制―は、世界共同体を構成する領域圏のレベルにセットで設置されることになる。ただし、政経二院制といっても、両者の関係は完全な対等ではなく、政治院である民衆会議が言わば上院的な位置づけとして計画の最終的な承認権を保持する構造になるだろう。
 また世界共同体レベルにおける経済計画機関(世界経済計画機関)には、二院制構成は適用されず、総会(世界民衆会議)直轄機関としての位置づけが強くなる。世共の場合、政治的統合性が重視されるからである。ただし、この場合も世界経済計画機関は官僚制機関ではなく、世界の生産事業機構体で構成する合議機関である。
 なお、世界共同体内部の広域的なまとまりである汎域圏は経済計画そのものよりも、世界経済計画の枠内での地域間経済協調を主任務とするから、固有の経済計画機関が設置されることはない。


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