ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

「自由貿易」という青い鳥

2013-04-22 | 時評

自由貿易はアダム・スミス以来、資本主義が追い求める青い鳥である。だが、それが文字どおりに実現されたためしはない。

国際競争に耐えられない国内の弱小産業の保護はそうした産業を顧客とするブルジョワ政治の役目であるから、表向き自由貿易の旗を振りながらも保護貿易が隠れた基調となる。

もし自由貿易が文字どおりに実現されれば、マルクスの予言「自由貿易は社会革命を促進する」が的中しかねないことを支配層は承知しているのだ。

この点、目下国論を二分する論議の的となっているTPPも、実は完全な自由貿易協定ではない。それは全世界に適用される国際条約ではなく、地域間条約にとどまるうえ、抜け道となる例外事項を巡る当事国間の条件闘争がすでに始まっているし、この条約は米国が自国の産業を保護するための新貿易戦略という意味合いも濃厚である。

それでも、TPPは原理的には関税撤廃を目指す包括的な自由貿易協定の性格を持ち、資本主義・市場経済がイデオロギー化した時代の新たな産物ではある。

これに対して共産党は最も強硬な反対論の急先鋒となっているが、コミュニストならばマルクスが真の自由貿易にあえて「賛成」してみせたことを思い出すべきである。

彼は保守的な保護貿易に対して自由貿易が古い民族性を解体し、プロレタリアートとブルジョワジーとの対立を激化させるという破壊的な効果を持つ限りにおいて、これを社会革命の内爆的動因ととらえ、逆説的に「賛成」したのであった。

つまりは、資本主義に青い鳥を自由に追求させてやったほうがかえって自ら墓穴を掘る結果になるというわけである。

コメント