PCの歴史は演算能力、記憶容量、通信速度などのスペック面において、ドッグイヤーと呼ばれるような速度での天文学的な進化の歴史だと言えます。20年前のPCユーザーに、現代のハイエンドPCゲーム環境を見せたら、目の前の画面がにわかに信じられないのではないでしょうか。
これらのスペックの向上は、多くの場合歓迎されるべきものですが、それに伴って増大していった消費電力は、モバイル利用に対する需要が高まる中、実に悩ましい問題でした。なんだかんだ言っても、消費電力が高い方が性能が高い場合が圧倒的に多いですからね。ネットブックに採用されて一世を風靡したIntelのAtomにしても、確かに低消費電力ではあったものの、メインストリームのCPUに比べると、明らかに見劣りをしていましたから。
つまり、性能と省電力=バッテリーの持ちはトレードオフの関係にあると言えます。
この消費電力の問題、CPUだけの話では当然ありません。近年は画面を描写するGPUの性能向上に従って、Windowsのインターフェイスすら3D処理で行われるくらい劇的な環境変化が起こっていますが、それと同時にGPUの消費電力も馬鹿にならなくなっています。
高性能なGPUは、特に性能を発揮する必要が無いときでも、常に余分な電力を消費し続けています。これはノートPCなどのバッテリー駆動デバイスにとっては大きな悩みの種ですが、かといってチップセット内蔵のGPUではパフォーマンスが稼げない・・・これらのジレンマを解決する方法としてNVIDIAが提案したのは、「状況によって切り替える」という方法でした。
NVIDIA、第3世代のGPU切り替え技術「Optimus Technology」 PC Watch
米NVIDIAは9日(現地時間)、同社にとって第3世代目となるGPUの切り替え技術「Optimus Technology」(オプティマス テクノロジ)を発表した。
GPUの切り替え技術というのは、チップセットやCPUに内蔵されたグラフィックス機能(以降IGPと呼称)とNVIDIAの単体 GPU(以降dGPUと呼称)の両方を搭載し、それらを任意に切り替えて利用する技術である。
これまでもGPU切り替え技術はありましたが、今度の方式は動いているアプリケーションによって、ドライバが自動で動作を振り分けるところにキモがあります。つまり、ソリティアしか使っていないときはIGPのみを、ゲームやHD動画の再生を始めたらdGPUを使うと言うことを、ユーザーが意識せずとも勝手に判断してくれるということです。これによって、パフォーマンスを犠牲にすることなく、長時間のバッテリー駆動を実現しているのです。
とはいえ・・・この技術が生きるシチュエーションというのはちょっと限定的かも知れませんね。据え置きでも消費電力が下がるのはうれしいですが、持ち運び+バッテリー駆動メインのマシンで単独GPUをガンガン使うようなシチュエーションがあんまり想像できないんです。
確かに、「何に使うか分からないから全部入り」と言う要件でなら、必要なときだけ必要なパフォーマンスを発揮できるこの技術は、非常に有効に働くとはおもうのですが・・・果たして、この技術の採用がどれくらい伸びるか、今から楽しみです。