冬の夜空にまたたく、特徴的な三連星。その一目で分かる形と大きさから「星座の王様」とも呼ばれるオリオン座のベルトの部分です。そのオリオン座の右肩に位置する赤色の一等星はベテルギウスと名付けられていますが、この星は「赤色巨星」というカテゴリーに属しています。
赤色巨星とは、太陽を初めとする恒星の晩年の姿です。太陽と同じ程度の質量の星ならば、この後ガスをゆっくりとまき散らしながら白色矮星と呼ばれる残骸を残して死に至ります。しかしながら、ベテルギウスは太陽の1000倍を超える巨大な星。一般に、太陽質量の8倍を超える恒星は超新星爆発と呼ばれる大爆発を起こし、中性子星やブラックホールを残骸として残すとされていますから、ベテルギウスの場合はほぼ確実に超新星爆発する運命にあると言えます。
そのベテルギウスに爆発の兆候が出ているとの報道がありました。つまり、近い将来、オリオン座からベテルギウスが消える、つまり星座の形が変わってしまう可能性が出てきました。
ベテルギウスに爆発の兆候 大きさ急減、表面でこぼこ asahi.com
オリオン座の1等星「ベテルギウス」で、超新星爆発へ向かうと見られる兆候が観測されている。米航空宇宙局(NASA)が6日に公開した画像には、星の表面の盛り上がりとみられる二つの大きな白い模様が写っていた。この15年で大きさが15%減ったという報告もあり、専門家は「爆発は数万年後かもしれないが、明日でもおかしくない」と話す。もし爆発すれば、満月ほどの明るさになり、昼でも見えるようになる。
近い将来と言っても、あくまで「天文学的なスケールで」という話ですけどね。
ところで、ベテルギウスが超新星爆発を起こした場合、600光年という比較的近くでの発生となるわけですが、地球への影響はどうなのでしょうか?
超新星爆発が起こった場合、50光年以内までにある天体に住む生命体は、すべからく壊滅的なダメージを受けるとされていますので、600光年離れているベテルギウスの場合、ガンマ線バーストでも直撃しない限りはそこまで大きな影響はないと言う説が濃厚なようです。ひとまず安心ですね。
有史以来、超新星の記録はあるものの、ベテルギウスのようによく知られた一等星が無くなる、という現象は前代未聞です。実際に起こったとしたら、膨大な観測の目がそこに向くことになるでしょうし、そこから得られた超新星爆発のデータは、天文学に大きな進歩をもたらすでしょうね。そして、もう一つの大きな影響は、星座関連の書籍等の刊行物、各種プラネタリウム等に関して、一斉に修正が入ると言うこと。これは、冥王星の時よりもずいぶん大きなトピックになるでしょう。・・・なんだか、ある意味楽しみですね。