Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

スマートフォンをコンシューマー寄りにすると

2009-02-14 23:59:59 | Thinkings

スマートフォンという言葉がIT関連ニュースに上がり初めてもう数年になります。
そもそも、普通の携帯電話と何が違うかと言いますと、普通の携帯電話が通話機能ありきで多機能に進歩してきたのに対し、元々手帳として様々な個人情報を管理するためのPDAに、通信機能と(おまけの)通話機能をつけたのがスマートフォン。このように、その出自は全く異なりますので、操作性も求められる機能も、同じ携帯電話というカテゴリにあっても、それぞれ全く異なっています。

そのような性質上、マーケットをビジネス向けに絞って展開してきたスマートフォンですが、最近はそれぞれの壁がだいぶん薄くなってきているようです。iPhoneというネットありきの”異端児”や、従来のモデルも普通の携帯電話に混じって売られるなど、表面上はコンシューマー向けにも徐々に浸透してきているように感じられます。

そして、今後その路線はさらに拡大していくかもしれません。iPhoneしかりAndroidしかり・・・そして、マイクロソフトも黙っていられなくなるでしょうから。

MSのスマートフォン戦略--予測されるコンシューマー路線への転換 CNET Japan

IDCのアナリストRyan Reith氏は、「Microsoftは大変な苦境に陥っている。価値提案を見直さなければならない。重要な点は、ユーザーインターフェースを一新し、スマートフォンをもっとコンシューマー向けのものにすることだ」と言う。

5年前から携帯電話が次のネットワークデバイスの主役になると言われている割には、通常の携帯電話には相変わらず貧弱な専用ウェブブラウザしか搭載されていないという現実があります。今後、通話よりもネットワークの利用に重きを置くユーザーに対してスマートフォンへの置き換えは徐々に進んでいき、携帯電話向けのサービスが徐々に駆逐されていかざるを得ないでしょう。フルブラウザが多くの機種に搭載されている時点で、携帯向けのサービスに限界を感じていることが伺えますから、そんなに見当違いな予想ではないでしょう。

スマートフォンが一般の機種から置き換わるとどうなるでしょうか?まず、先に挙げた携帯電話向けウェブサービスの縮小・駆逐があります。携帯向けの有料コンテンツ・・・ニュースとかの情報、壁紙などがほとんど売れなくなるでしょうね。今でも何で売れているか疑問ですけど。また、ソフトウェア開発の自由度が跳ね上がりますので、iPhoneのAppStoreを見れば分かるように、様々なソフトウェアが携帯電話の画面を飾ることになるでしょう。

そしてこれが重要なのですが、キャリアへの依存がこれまで以上に少なくなるでしょう。
今は、ナンバーポータビリティでキャリア間の異動が楽になったとは言え、通信の準主役であるメールアドレスを握られていますので、うかつな異動ができないのが現状です。ところが、スマートフォンがメインになれば、PCと同じメールアドレス、もしくは専用に新しくとったメールアドレスを使い回すことで、気軽に機種・キャリアを変更できるようになります。各キャリアは、これまで以上に顧客を引き留める努力を迫られることでしょう。

ただですね、ここまで引っ張ってきて申し訳ないのですけれど。非常に根本的な問題として、「ネットワークの利用に重きを置くユーザーがどれくらいの割合でいるか」という問題があります。いくらスマートフォンが浸透しても、「通話とメールしか使わない」層にとっては無用の長物。機能的には普通の携帯電話とスマートフォンの壁が薄くなったとは言え、ユーザーの使用シーンが伴わなければこういう話は単なる妄想に過ぎません。
以前にも、携帯電話の機能のうち、使っているのは20%に満たないという調査結果を記事にしましたが、いくら上方の企業が気張ったところで、よほどエポック且つ便利な使い方の提案や、革命的なマーケティング戦略を”各キャリアが”行って行かなければ、日本においてはスマートフォンはビジネス・マニア向けという構図は変わらないのではないでしょうか。・・・いや、だってあのiPhoneですらダメだったんですからね。