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ON THE ROAD

適当に音楽や映画などの趣味についてだらだら

『民俗学入門』 菊地暁

2022-12-24 21:27:17 | 


民俗学は学生時代ちょこっと授業を受けただけだが、関心はあった。
その経験から民俗学というと、どこぞの伝承がどうだ、祭がどうだ、カッパがどうだというものをイメージしてしまう。しかし、この本を読んでその認識は変わった。民俗学というのは現代を含む人々の暮らしを包括した学問である。

具体的には筆者が冒頭で定義している民俗学の「民族」を挙げる。
①衣食住に関するもの
②生産・生業に関するもの
③交通・運輸・通信に関するもの
④交易に関するもの
⑤社会生活に関するもの
⑥口頭伝承に関するもの
⑦信仰に関するもの
⑧民俗知識に関するもの

私がイメージするザ・民俗学というものもあれば、ピンとこないものもある。しかし、どれも私達の生活に関わっているのは間違いない。
衣食住の衣は人の社会性に寄与している。女性の下着の話も出ているが、日本で女性がブラを着けるようになったのは社会の変化による価値観の変化によるものと言っており興味深い。

生業に関しては筆者のアルバイト時代のエピソードをエッセイ的に語っており読み物としても面白かったりする。
また、トピックごとに学生からとったアンケートが載っており、リアルな声が聞けるのがこの本の大きなポイントだと思う。他にも気になる箇所はたくさんあり、珍しく付箋をペタペタ張りながら読んでしまった。

初学者ですらない私がいうのも僭越ながら、面白い一冊ではあったものの、これをもって入門したというのはちょっと違う気がする。もっと気楽に入門への取っ掛かりくらいに読むのがいいかと思った。ある人にとっては期待していたのとは違う内容かもしれない。 

『英国諜報員アシェンデン』 サマセット・モーム

2022-12-17 23:49:11 | 


スパイ映画はいくらでも観てきたが、スパイ小説というのは初めて読むかな。自身が諜報員だったとはいえ、モームが描くスパイ小説というのはどんなのだろう。

てっきり長編だと思っていたら連作短編だった。中には短く肩の力を抜いて読める作品もあって読んでいて結構楽しかった。
スパイ小説ではあるが、しっかりとモームのテイストがある。というかスパイ小説としては読まない方がいいか。ストーリーに派手さはないが、登場人物は個性的で、軽妙かつシニカルな会話が繰り広げられている。

第5章で「どんな手段も許されるのは、恋愛と戦争だけだと思っていました」という台詞があるが、同じようなことをガルパンのダー様もおっしゃっていた。調べたら「all is fair in love and war」という普通にあることわざなんだね。

『飛び立つ季節―旅のつばくろ―』 沢木耕太郎

2022-12-10 09:00:02 | 


JR東の新幹線のポケットに入っている冊子で連載していた旅エッセイの第二弾。連載が終わった時はショックだったが、こうやってまた読めるのは嬉しい。ちょこちょこ読んでいてのがあって懐かしい気持ちになる。
また、『魔の山』と2ヶ月戦っていたから、内容と相まって開放的な気持ちになれる。

一冊目はJR東圏内の旅ばかりだったが、島根や九州も訪れていてびっくりした。

沢木さんの旅エッセイを読むと旅に出たくなる。それもふらっと行くようなやつ。もともと私はきっちり予定を立てずに旅行に行くが。そのスタイルは沢木さんの影響を知らずに受けているのかもしれない。もしくは単にものぐさな性格によるものか。

そんな旅のスタイルと同様に軽やかで親しみのある文体が好き。私が行ったことある場所については共感を覚えるし、行ったことのない場所には憧れを持つ。

作中では日光を取り上げているが、沢木さんが日光を行ったことないというのは意外であった。作中でも言っているが、東京都の学生は修学旅行で行くから。
そんで浅草から電車に乗るつもりであったが、城南の人間にとって浅草まで行くのは億劫と言っていて、城西の人間としてはものすごく共感できる。

巻末では三冊目も予告していて楽しみである。

『魔の山』 トーマス・マン

2022-11-21 23:04:38 | 


読書に関しては割と背伸びしていくタイプでこれまでも難しい本を読んできたが、この本が一番きつかった。
ただ、この本読めればどの本も読める気がする。

物語として理解できたのは序盤だけで、後は無心でページを捲る作業になっていった。その原因がセテムブリーニだ。こいつがわけのわからん哲学を延々と語るから、物語が難解になっていった。他にも生物学的な話題が出たりと、基本的にこいつらなんでこんな会話してんのの連続である。でも、そのあたりが教養小説言われる所以なのかな。

名高いから読んだが、やはり私にはセブンの「魔の山へ飛べ」が身の丈にあっている。

『 高慢と偏見』 ジェイン・オースティン

2022-09-19 10:45:37 | 


ジェイン・オースティンの非常に有名な作品だが、読んだこともなければ、映像作品も観たことなかった。
モームの10冊に入っているので、いずれは読みたかったのだが、長いし面白くなさそうだったので、手が出せないでいた(残りの9冊の大半も長くて面白くなさそうだが)。

ところが最近U-NEXTで『高慢と偏見とゾンビ』という気になる作品を見つけてしまった。これは原作を読まなくてはな。

てっきり高尚な作品なのかと思ったら、そんなことなく田舎の女性の婚活物語。終始誰が惚れた腫れたなんて話をしていて、何か事件が起きるでもなく、いい意味で安っぽい。

それでも登場人物は魅力的だ。5姉妹もそれぞれにキャラがたっているし、海千山千に意中の人を落とそうとする様子は、面白いしよく描けている。
特に主人公の心理描写は良くて、なんで気持ちが変わっていったかがよくわかる。

読み終わった後にいいタイトルだとしみじみ思える。
翻訳を比較したわけではないが、読みやすい訳であった。