
民俗学は学生時代ちょこっと授業を受けただけだが、関心はあった。
その経験から民俗学というと、どこぞの伝承がどうだ、祭がどうだ、カッパがどうだというものをイメージしてしまう。しかし、この本を読んでその認識は変わった。民俗学というのは現代を含む人々の暮らしを包括した学問である。
具体的には筆者が冒頭で定義している民俗学の「民族」を挙げる。
①衣食住に関するもの
②生産・生業に関するもの
③交通・運輸・通信に関するもの
④交易に関するもの
⑤社会生活に関するもの
⑥口頭伝承に関するもの
⑦信仰に関するもの
⑧民俗知識に関するもの
私がイメージするザ・民俗学というものもあれば、ピンとこないものもある。しかし、どれも私達の生活に関わっているのは間違いない。
衣食住の衣は人の社会性に寄与している。女性の下着の話も出ているが、日本で女性がブラを着けるようになったのは社会の変化による価値観の変化によるものと言っており興味深い。
生業に関しては筆者のアルバイト時代のエピソードをエッセイ的に語っており読み物としても面白かったりする。
また、トピックごとに学生からとったアンケートが載っており、リアルな声が聞けるのがこの本の大きなポイントだと思う。他にも気になる箇所はたくさんあり、珍しく付箋をペタペタ張りながら読んでしまった。
初学者ですらない私がいうのも僭越ながら、面白い一冊ではあったものの、これをもって入門したというのはちょっと違う気がする。もっと気楽に入門への取っ掛かりくらいに読むのがいいかと思った。ある人にとっては期待していたのとは違う内容かもしれない。