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ON THE ROAD

適当に音楽や映画などの趣味についてだらだら

『古都』 川端康成

2022-08-23 21:43:26 | 

好きな作品の舞台となった土地を訪れる「聖地巡礼」というのがあるが、私は逆に訪れる土地が舞台となる作品に触れてみる。
夏休みの旅行で久々に京都に行くことになり、京都が舞台の作品ということで読んでみた。実は川端作品はこれが読むの初めて。

読書好きな人が「あの人が書く日本語は美しいね」なんて言っていたりするが、私はいまいち「美しい日本語」というのが理解できない。そんな私でも川端康成の書く日本語は美しいと思えた。いや、美しいというよりは品がある。

ストーリーは生き別れた双子の姉妹と出会うという、現実的とは言えないがファンタジックな内容でもないもの。しかしながら不思議と全編に幻想的な雰囲気が漂っているんだよな。これは京都×川端の相乗効果なのかな。
ラストの千重子が「また来て」と言った後に苗子が首を振るが、それは縦か横かはわからない。そんなところからも作品に対する奥ゆかしさのようなものまで感じてしまう。

植物園とか平安神宮とか有名どころなんだろうけど、知らない場所も出てきてガイドブック的にも参考になる。ぜひ作品の舞台を訪れてみたい。
ちなみに京都旅行は直前の体調不良で中止した。



『カラマーゾフの兄弟』 ドストエフスキー

2022-07-18 00:05:54 | 
文学界の金字塔とも言えるこの作品をついに読みましたよ。まずもって言いたいのは、「長い」と。

ストーリーの筋はギリギリ追えても、作品に含まれる哲学まではとてもじゃないが理解できない。そんでキリスト教色がかなり濃く、作品でも重要な部分と言われている「大審問官」の章はちんぷんかんぷんである。

サスペンス的にも楽しむことはできるが、それしか拾えていないとホントに読んだとは言えないだろう。残念ながら今の私にはまだ早かったようだ。

今作を読んだ後だと、『罪と罰』が読みやすい作品だったんだなと感じる。

『悪童日記』

2022-05-28 18:17:43 | 


結構重そうな作品だけど、SNS見ているといろいろな人が手に取っているイメージがある。
それならばと私も読んでみたが、確かに重い作品である。しかし、日記ではないが日記のように主人公である二人の少年の戦時中の日々が数ページごとに章が区切られて綴られているため読みやすくはある。

戦争という秩序が失われつつある世界を舞台に、逞しく生きているはずの二人の子供の無邪気さが怖く感じられる。物語の中で双子は名前も出てこず、区別されることもないが、自分たちの世界を持っていて、大人も読者も入り込む余地がないとさえ感じられる。
話は全然違うが、『禁じられた遊び』に通ずるところがあるかな。

ラストはなかなかにショッキングだが、続編もあるんだね。読もうかどうしようかは検討中。

『法学を学ぶのはなぜ?: 気づいたら法学部,にならないための法学入門』 森田果

2022-05-28 00:34:46 | 


私は別に法学部出身ではないが、法律にはちょいと興味はある。ちょこちょこ新書なんかで法学関係は読んでいたが、一番初めに読むにふさわしい作品だなと思った。

法律ってものすごく身近なものではあるが、法学を学んでいるか学んでいないかで見方に大きく乖離があると思う。
例えば何か事件が起こったとしても、素人は一元的な善悪でしか判断できないが、法律家っていうのは物事を多面的に見ることができるんだなというのを感じた。

普段なかなか考える機会のない法律(ルール)がどんな目的を持って存在しているかということを知ることができたのは非常に意義がある。

法学部を目指す人、なんとなく法律に興味を持っている人には非常にいいとっかかりの一冊であった。
文章は平易ながら法学の世界へ導いてくれる。

『女ごころ』 モーム

2022-03-25 21:11:13 | 
タイトルだけで勝手に恋愛小説なのかと判断してゲンナリ感はあったが、実際に読むと「恋愛小説」の一言で片付けられる作品ではない。
主人公である未亡人メアリーの恋愛をベースとしつつもサスペンス要素もあり、モーム特有の人間模様だけでなく物語展開も楽しめるのが特徴だ。

他の人はどう思うかは知らんが、私はこの作品と『お菓子とビール』を是非とも比較したい。
『お菓子とビール』には自由奔放で快活なヒロイン、ロウジーが登場する。一方今作にも性別こそ違うが、似たようなタイプのロウリーが登場する。名前もキャラも似ているのは偶然だろうか。モームとしては『お菓子とビール』の意識が頭にあったのではないだろうか。

そして特筆すべきは両作にヒロインが男性を「完璧な紳士」と評するセリフが登場すること。ただし、その使われ方はまるで違う。
メアリーは婚約者であるエドガーを「完璧な紳士」とロウリーに言う。エドガーは頼れる男性で社会的地位も高く、その評価は間違ってはいないだろう。
一方ロウジーは粗野で周りからの評判も良くないが心奪われた男のことを「完璧な紳士」と評す。同じ言葉であっても読み手としては重みに違いを感じてしまう。うまく説明できていないかもだが、作品を超えてモームの凄さを実感した。

今作はモームの代表作からは外れるかもだが、ぜひ『お菓子とビール』とセットで読んでほしいものだ。