風のBLOG

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『ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち』2022春 西日本・東日本ツアー 5週目

2022-06-16 11:25:52 | 全国巡回公演

6月6日[月] 福島県いわき市 平商業高校 同校体育館

6月7日[火] 福島県相馬市 相馬総合高校 相馬市民会館

6月8日[水] 山形県鶴岡市 鶴岡南高校・鶴岡工業高校 鶴岡市文化会館(荘銀タクト鶴岡)

 

平商業高校

風の公演は初めてとなる平商業高校。実は2年前に公演を予定していましたが、感染症の影響で延期となりました。ですが、この2年の間も担当の先生方が熱い想いを持ち続けてくれて今回の出会いに結びつけてくれました。

午前中に1・2年生、午後は2・3年生が観劇。開演前は校長先生が「芸術は豊かな感性を育み、生活に潤いや彩りを与えてくれます。今日は普段の生活から離れて、忙しい時間の中で忘れがちな大切なものを感じてほしい」と生徒さんたちにお話しされました。また担当の先生は「演劇は静かに見なければいけないと思うかもしれませんが、自分たちの感じたように自由に見てください!」と声を掛けてくれました。

先生のかけ声でさらに、リラックスした生徒さんたちは、自由に、そして感じるままに楽しみながら舞台を共につくりあげてくれました。動きのある客席が時間と空間にリズムを生みだし、舞台に立つ私自身もあっという間に2時間が過ぎていきました。カーテンコールでは「あきらめないことの大切さを感じた」と生徒さんからの言葉がありました。またヘレンの友達パーシィーが大人気でした!

公演後には各回とも自然とバックステージ、役者との交流がはじまりました。明るくて気さくに話しかけてくれる生徒さんたちは指文字を真似たり、ポンプの水を出して盛り上がったり、涙を流しながら「セリフが心に刺さった」「今すぐまた見たい」など、たくさんの想いと笑顔を贈ってくれました。

演劇部との座談会も行われ「メイクはどうしていますか」「演劇の仕事をずっとしているけれどプライベートでは何をしていますか」「演劇を始めたきっかけは」「やめたいと思ったことはありますか」など、多くの質問がありました。後から先生が教えてくれたのですが、最初は何を話したらいいか分からず、座談会に少し消極的気味だった様子の演劇部のみなさん。ですが少しずつ打ち解け合っていき、最後には自分たちから役者に進んで話しかけにいっていました。今月25日には発表があるとのこと。応援しています、頑張ってください。有志で片付けを手伝いに来てくれた生徒さん、アナグノス校長先生と写真を撮りたいと走ってきてくれた生徒さん、最後の最後までありがとう。みなさんの姿に支えられました。

担当の先生は以前、 飯舘村の学校に勤めていた時に『ハムレット』を観てくれていたそうです。「また会えると思います!」とキラキラの笑顔で見送ってくれました。

 

 

 

相馬総合高校

相馬東高校と新地高校が統合してできた相馬総合高校。こちらの学校も2年間の延期を経て、実った公演です。統合前の各校では、今までも風の上演を行ってきましたが、統合後に全校生徒が集まるのは今回の芸術鑑賞会が初めてだそうです。会場にぞくぞくと集まる生徒さんたち。生徒会役員の進行で開会しました。はじめに校長先生が「コロナ禍のなかで奪われたものがあります。それは文化や芸術です。音楽を鑑賞する、映画を見る、演劇を観る機会がなくなってきてしまいました。YouTubeやテレビを見ることはできますが、今日は画面ではなく、生の息づかいや熱いハートを感じてほしい」と熱く語ってくれました。

およそ600人いる生徒さんたちの視線を全身で浴びる、そのような感覚になるほど集中している客席。1幕が終り休憩になるといろんな声が聞こえてきました。袖から客席を覗くと、ヘレンの動きを真似ている生徒さんもいました。カーテンコールでは生徒会長さんから「まだ見たいと思うほどでした。この物語を通じて色んなことを考えました」と真っ直ぐな瞳でメッセージをもらいました。

終演後はロビーで生徒さんたちをお見送り。手を振り合ったり、「面白かったです」と感想を伝えてくれたり、「最後は涙が止まりませんでした」とまたまた涙を流して話してくれたり。ひとりひとりの表情を見ることができました。お見送りの途中では演劇部のみなさんと顧問の先生とその場で座談会も行いました。18・19日に大会がある演劇部のみなさんは練習も佳境に入っています。発声の話から色々と膨らみましたが、みなさんの今の姿で、自分たちが力を出し合ったこと、考え悩み、見つけて信じたことを大切にして、舞台に立ち人の前に立つとができたらと願っています。思いきり、やりきってきてください!!

 

鶴岡南高校・鶴岡工業高校

今週最後の公演地は山形県鶴岡市。田川地区合同演劇鑑賞会のなかで行われた公演です。両校とも以前に『TOUCH』『肝っ玉おっ母とその子供たち』を上演しています。今回は午前中に鶴岡南高校、午後に鶴岡工業高校の生徒さんが荘銀タクトホールで鑑賞しました。

鶴岡南高校の担当の先生は公演前に「ヘレン・ケラーの物語を通して、みなさんの生き方や人のあり方を考えてもらいたい」と生徒さんにメッセージを送りました。先生の言葉を受けとめるように、生徒さんたちは真摯な姿で舞台と向き合ってくれました。私にとっては、生徒さんがこの2時間で少しでも、これからの何かにつながる瞬間を感じてくれたらと望み、また演劇とは人にとって社会にとって何なのだろうと、考えさせてもらえる時間になりました。カーテンコールでは生徒会長さんが「僕たちも夢や目標に向かって頑張りたい」と力強く話してくれました。また代表で副会長さんが、学校からの贈りものサクランボを贈ってくれました。公演後には、担当の先生が「親としても教師としても、子どもたちを押し込めるのではなく、その子の姿を見つめていきたいと思った」と率直な想いを伝えてくれました。

午後の公演の鶴岡工業高校では、開会前からとても元気な声が会場中に響き渡っていました。「演劇の世界へようこそ!」という担当の先生の素敵な言葉で幕が開きました。「笑いたい時は思いきり笑ってください」という先生の言葉を聞いて、もともと活気のある空間でしたが、生徒さんたちの姿がさらに活き活きしていたように感じました。力強くどっかりとした客席、というのでしょうか。彼らの「ここいいる」という意志が明確に伝わってきます。芝居中は色んな場所から話し声、笑い声が聞こえ、今ここで共に生きている時間をつくりあげてくれました。見られることで感じる肉体に起こる感覚。みんなのなかに舞台がある、そんな実感がありました。カーテンコールでは生徒会長さんが「T・H・A・N・K・Y・O・U」と指文字をヘレンに打ってくれました!この指文字には生徒さんも先生もびっくり。嬉しいサプライズでした。公演後、担当の先生は生徒さんたちの姿をとても喜ばれていました。

生徒さんたち、先生方、ありがとうございました!ツアーを続けていく中で「公演をほんとうに楽しみにしていました」とういう声、「夢」「目標」という言葉を生徒さんたちから多く聞き、そして先生方からは「教師である自分たちを振り返る時間でした」という声も聞きました。誰もが今を懸命に生き、誰もが自身のために誰かのために思考していることを、あらゆる場面で感じました。一緒に公演をつくれることを、そのことで共に笑い泣き、未来を夢見られることを心から願い、明日の出会いに期待して『ヘレン・ケラー』の旅はつづきます。

文:渋谷愛(アニーサリバン役)