片貝孝夫の IT最前線 (Biz/Browserの普及をめざして)

Biz/Browserの黎明期からかかわって来ました。Bizを通じて日常を語ります。

売りたかったら売らないことだ

2009年03月17日 | 私の正論
丸井池袋店に、売り上げが常にトップの伝説的な売り子がいたという。
その方は、婦人服売り場担当。
初めてのお客様には、決して売り込まないという。商品説明に徹する。
自分の名前を言いながら、商品に対する自分の意見を言う。
そして、会話のメモを取り、似顔絵を描いて次回来社時に備える。
次回来店時には、待ってましたと、用意しておいた商品を次々と紹介する。
お客様は、自分のために用意してくれたことに感激し、ファンになってしまい、その次からは、まっすぐにその方のところへ行くという。

その方が、退職される日が来た。
異様な光景があったという。
開店中の店の中で、花束を持った女性が列をなしている。その方に別れの挨拶をするためだ。
この話は、私の知り合いのMさんの娘さんが、その方と友達で、たまたま父子で池袋に行ったとき、丸井に顔を出したところ花束の列に出会ってわかったことだという。

そういえば、私にも思い当たる話がいくつかある。
私の知り合いの保険のトップセールスの方も、保険の売り込みはしない。相手のビジネスになるように、人の紹介に徹している。こちらから心配になって保険の話を切り出すと、「保険の話をしていいんですか?」だ。
印刷会社ディグの杉井社長も、印刷の営業はしない。いかにしてCO2削減に取り組んでいるか、環境大臣賞をもらった活動を、求められるままに、どこへでも出かけて講演する。その結果「ウチにも印刷の仕事があるんだけど、できますか?」となるという。

翻って、Biz/Browserのビジネスを考えてみる。
一番大切なことは、その顧客がBiz/Browserのような製品を必要としている顧客かどうかだ。それがわかったら、顧客の「困った」を解決するために、自分で調べたり、人を紹介したり、他の製品を紹介したりということに徹することではないだろうか。自分が客なら、そうしてくれたらうれしいし、相手が何を売りたいのか分かっているから、時機が来たら話しかけてやろうと思う。

ある方は、本当に近づきたかったら、2年は商売の話はしないという。自分を理解してもらうこと、自分に興味を持ってもらうための水面下の努力を続けるのだという。

頭で分かっていても、ついつい正面から売り込んでしまう。困ったものだ。