次の文を読み,下記の設問A~Cに答えよ。解答は所定欄にしるせ。
ローマ最古の成文法として知られる( イ )法は,紀元前450年ごろ共和政ローマにおいて制定された。
当初,共和政ローマでは貴族が国政の実権を握っていた。1)軍民の最高官コンスルおよび最高諮問機関である元老院も貴族によって構成されていたため,平民が政治に自らの意思を反映させることは容易にできなかった。平民は不満を募らせ,貴族との間で身分闘争をおこし政治的権利の獲得をめざした。その成果の一つとして平民の権利を法によって守る( イ )法が制定されたのである。
その後,前367年にはリキニウスらの改革によって,貴族など有力者による公用地占有の制限や,コンスルの1人は平民から選出することが定められた。また,前287年に制定された( ロ )法によって,貴族と平民の法的平等が達成されることになった。
当初,ローマ法はローマ市民にだけ適用される市民法であった。共和政ローマは2)支配の拡大をめざして戦争を続けたが,やがてその版図を広げるにしたがって,諸民族間での商取引や交流がさかんになっていき,また,支配下におさめた異民族間の問題をどのような基準で決するべきかという問題が生じた。その結果,万民法の必要性が意識されるようになった。
3)元首政期のローマ帝国住民は,ローマ市民権者と4)属州民と奴隷に分かれていたが,212年皇帝( ハ )の発布した勅令により帝国全土の全自由民にローマ市民権が付与され,その結果ローマ法はローマ帝国全領域の自由民に適用されることになった。このような帝国の変化をコスモポリタニズム思想の現実化の一つとしてとらえることも可能であろう。
その後6世紀に5)東ローマ帝国の6)皇帝ユスティニアヌス1世は,これまでの法学者の学説や歴代の皇帝の勅法などを収集整理し,共和政以来のローマ法を集大成させた7)『ローマ法大全』を編纂(さん)させた。
東ローマ帝国滅亡後,ローマの法典も散逸していったが,中世期イタリア北部に創立された( ニ )大学をはじめ,イタリアの諸都市で,ローマ法の研究が行なわれた。イタリアへはヨーロッパ各地から学者が訪れ,ローマ法の知識はヨーロッパ全土へと広がっていった。
A.文中の空所(イ)~(ニ)それぞれにあてはまる適当な語句をしるせ。
B.文中の下線部 1)~7)にそれぞれ対応する次の問1~7に答えよ。
1.何人のコンスルが選出されていたか。次のa~dから1つ選び,その記号をマークせよ。
a.2人 b.3人 c.4人 d.5人
2.グラックス兄弟による改革が実施された時期にローマの支配に服していなかったものはどれか。次のa~dから1つ選び,その記号をマークせよ。
a.アテネ b.エフェソス c.サグントゥム d.マッシリア
3.元首政ローマの最初の元首の名をしるせ。
4.属州に関する記述として正しいものを,次のa~dから1つ選び,その記号をマークせよ。
a.属州とはイタリア半島を含むローマの征服地である
b.属州の徴税・土木事業などを請け負う人々を徴税請負人という
c.元老院議員が属州統治の任務を負うことはなかった
d.マルクス=アウレリウス=アントニヌス帝のときダキアが属州となり,帝国の版図が最大となった
5.東ローマ帝国に関する記述として正しいものを,次のa~dから1つ選び,その記号をマークせよ。
a.西ローマ帝国の場合とは異なり,ゲルマン民族の移動の被害は受けなかった
b.東ローマ帝国では一貫してラテン語が公用語として用いられていた
c.東ローマ帝国では神権政治が行なわれていた
d.7世紀以降,軍管区制がしかれるようになった
6.この人物の治世下に行なわれたこととして正しくないものを,次のa~dから1つ選び,その記号をマークせよ。
a.北アフリカやイタリアを再征服し,地中海のほぼ全域へ勢力を拡大した
b.聖ソフィア聖堂を再建した
c.ゴート戦争の末,555年に西ゴート王国を征服した
d.国家統制による農業・商工業の振興に努め,養蚕業を導入した
7.この編纂に携わった法学者の名をしるせ。
C.文中の下線部 について,コスモポリタニズムの有していた傾向について,「ポリス」の語を用いて,1行でしるせ。
【解答1】
A.
(イ) 十二表 (ロ) ホルテンシウス
(ハ) カラカラ (ニ) ボローニャ
B.
1.a 2.d 3.オクタヴィアヌス
4.b 5.d 6.c 7.トリボニアヌス
C.ポリスの枠を超え全世界の全ての人間が平等であるべきだという考え。
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