世の中が最悪になって来た。
ご丁寧にも素早くかつ毎週という恐ろしい頻度で米国労働省により発表される、米国失業給付申請数はかつて見たことがない高い水準に達している。
下のグラフがそれだ。縦軸の単位は万人。横軸は発表のタイミングを表し、発表のある日(毎週水曜日)の前週の失業給付申請数全米合計の棒グラフである。
【出所: 米国労働省】
これからが怖いというのに今も「あまあま・ゆるゆる」なトーキョーとは違い、ニューヨークなんてとっくにロックダウンをしているわけで、当然解雇される人が多数発生する。特にサービス業がそうだ。だから失業給付申請数がこの状況なのだ。
4月-6月期の米国経済は相当落ち込むはずだ。いろんな人がいろんなことを言うが同期の米国のGDPは年率でマイナス25%~30%程度の落ち込みになるという予想が平均的なところだろう。近年見たことがないようなひどさだ。しかし市場関係者はいつも先の先まで読み込もうと努力するので、それくらいの経済水準の悪化であれば、すでにそれは一度は株式価格におおむね織り込まれたと言える。ここが重要なのだが、いつも時間のズレがあるのだ。経済実態よりも株式・債券市場の方が動き始めるのが早いのである。先が見えた時には相場は終わっている。まとめると・・・
● 経済実態が悪くなるのはまだまだこれからで、将来の話。
● いつもそうした景気変動を早くから読み込む株式市場は、2月後半から暴落に打ちのめされたが、それはすでに過去の話。
誤解してもらっては困るけれど、これから先も、下げ相場はまだまだ何度もあるだろうけどね・・・。
したがって米国株式市場は、3週間ほど前から逆に明るくどんどん上昇中。下のグラフは米国株式市場の代表的指数であるS&P500だが、その直近の状況を見てみよう。上の失業給付申請のグラフの最後の3週間の暗さとは対照的だ。
【出所: S&P】
株式市場は2月19日に天井をつけたあと下げ続けて3月23日に恐怖のどん底(上のグラフで黄色い丸)を経験した。この3月23日につけた瞬間的安値は、2月19日につけた史上最高値から見れば、マイナス35%の下げだ。長い時間かかって市場が作った時価総額のうち、わずか1カ月の間に同じ市場が3分の1以上を失ったことになる。
その黄色い丸のどん底で今度は私が株式を買えればいいのだが、そうは行かなかった。本当の底値で買える人なんて少ないのだ。ウォーレン・バフェットじゃあるまいし。
どん底にいる当事者って、ここまで相場の動きが速いとどんなにデータを眺めていても(↓)、その瞬間には適正な価格水準などなかなか判断できないものなのだ。
【出所: フリー画像】
どん底の3月23日は月曜日。その前日の22日(日曜日)にアトムとくーちゃんのパパがこのブログのコメント欄でお尋ねになるので、私は「株式なら、そろそろ買いなはれや」と返答している。こういう時、自分のブログは便利だ。自分の過去の記事やコメントのやりとりを見ると、自分の考えがよくわかる。グラフをたくさん描いて眺め、文章もこれだけ書いていると自分の頭の中のもやもやした考えが整理される。
私のアトムとくーちゃんのパパへの返信はまったく正しかった。再び上の米国株式指数のグラフをこの下に貼り付けてみよう。しかし自分がアトムとくーちゃんのパパに言った通りに、私はそのどん底で株式を買えたわけではなかった。どん底の23日月曜日(黄色い丸のところ)の週は、翌日24日から株価が急速度で反発してしまい、私は買えずに諦めて終わった。しかし次の30日月曜日で始まる週は、反動が来て再び相場が弱気に転じて暗く終了した。赤い丸がついた4月3日の金曜日で、その週は終了である。
【出所: S&P】
しかしその直後の週末(4月4日~5日)には、世の中がかなり見えて来た。経済実態はさらに今後どんどん悪くなるのだろうが、欧米ではウィルス感染者数や死者数の予想がある程度できて来たのだ。ピークが近いと思われる兆候が見えてきた。そうなると株式市場は強い。私もこの時の日曜日に「明日の朝に株式を買ってみよぉ~♪」とやっと決心したのである。
以前から私が少しだけ持っているグローバル株式のインデックス・ファンドを買い足そう。そのファンドとは、米国バンガード社のトータル・ワールド・ストックETFである。ドル建てで、世界各国の株式8,000以上の銘柄から構成される巨大なファンドであり、総資産に占める経費(運用手数料や事務コスト)率が0.08%という格安な運用である。みなさんも販売手数料、運用手数料、事務コスト合計で初年に4.2%、その後は毎年1.2%くらいは平気で取られる一部の株式投信なんてやめて、ぜひこれをどうぞ。さて、そのファンドの国別配分は以下の通り。
【出所: バンガード】
広く各国に分散しているが、米国株式が55%を占めるので、米国株式市場を見ていればこのファンドの動きもおおよそ掴める。
下のグラフがそのファンドの価格の動きだ。縦軸がファンドの単価で通貨は米ドルだ。変動する方向や全体の形は上の米国株式指数のグラフとほとんど同じである。このファンドも米国株式市場と同じく2月半ばに史上最高値をつけるが、その後は下げ続けることになる。そして米国株式指数と同様の動きを繰り返して3月23日に底を打ち、その後の反発の上昇相場を迎える。
【出所: Yahoo Finance】
私はその途中、4月6日(月)に買おうと決心したのである。その日にこのブログのコメント欄で、私はissy-familyさんと会話している。本当にブログって便利だねぇ。私はissy-familyさんに「本日ちょっとだけ、この記事で書いたETFの買い注文を出しました。ニューヨーク市場が開いたら、その発注が執行される予定です」と書いている。私は本当にそうしたのだ。野村證券さんに電話してとっても優秀な営業担当者さんに「ニューヨークの寄り付き(=市場開始時)で、成り行き(=安くなったら買うなんてことは考えず、その時の価格ですぐ)の買い」をお願いした。安いところに指値して買おうなんて企んでたら、きっと朝から価格はそのまま上がってしまって買えなくなるからだ。
上のグラフでは細かくてわからないので、上のグラフの赤い線で囲った部分を拡大してみたのが下のグラフである。
【出所: Yahoo Finance】
横軸に日付がある。4月6日の月曜日に始まる週、このファンドの価格はガンガン上昇した。野村證券さんは私のリクエスト通り、この週初4月6日の寄り付きで買ってくれていた。購入価格は62.54ドルである(黄色いひし形のところ)。この62.54ドルはこのファンドのこの日のニューヨーク市場で最初の取引価格であり、その取引の中に私の注文も含まれていたことになる。さすが世界のノミューラ、事前に私が依頼した通りの内容(つまり寄り付きの成り行き買い)の正確な取引執行能力。手数料を払っているだけのことはある。安いネット証券ではこうは行かないかもしれない。
米国株式市場同様、この週にこのファンドの価格は上昇し、9日(木)の終値は66.88ドルとなった(↑のグラフで赤いひし形のところ)。3日前の私の買い値から7%近く上昇したことになる。毎日とにかく動きが速い。1日のどこで買うかでも、価格がずいぶん変わる。ちなみに10日(金)は米国は休場だ。今後またきっと大きく下がる局面があるだろう。そこでまたちょっとこのファンドを買い足そうと思う。世界中の株式が入ったようなこのインデックス・ファンド。手数料は世界最低レベル。通貨はドル建て。これで十分だ。
金利の世界に目を転じよう。米国の中央銀行は頑張っている。2週間前にお知らせしたグラフを更新して再びお見せしよう。これは中央銀行が買い取った資産の残高を示している。つまりそれだけ市場に資金を放出したことになる。経済を刺激するべくがんばっているのだ。数週間前からなりふり構わずそれをやっていて、中央銀行の資産残高はロケット打ち上げ状態。赤い丸(↓)はすでに6兆ドルを超えている。
【出所: FRB】
縦軸は中央銀行の資産残高で単位は兆ドル、横軸は年だ。
さらに中央銀行は先週新たなことを打ち出した。最近格下げされ、格付けがBB格以下の企業が発行したものも含めた社債を買い取ることを9日水曜日に発表したのである。これは一昔前なら禁じ手だ。格付けが低い特定の弱い企業を中央銀行が直接的に支援することを意味するからだ。
この週に市場で起こった多くのことのうち、最も面白いことが低格付け社債の暴騰だった。低格付けの債券なのに中央銀行が買ってくれると約束したのだから、これほど心強いことはないだろう。将来の不況に怯えた2月からの低格付け債券価格の急落と、それを中央銀行が助けてくれるとわかった後の急上昇をこれから見てみよう。
BB格以下の債券で構成される「ハイ・イールド」と呼ばれる債券がそれに相当する。下のグラフはそのハイ・イールド債に投資するドル建てファンド、iシェアーズ・iBoxxハイ・イールド社債のETFの価格の推移である。これも私の上記株式のETFと同様、誰でも買える。日本人でも買える。
【出所: Yahoo Finance】
赤い丸で示したのが先週の最終営業日4月9日の木曜日の値動きだ。この日中央銀行から先述の発表があったので、その日の価格変動レンジは、その前日のそれから飛びぬけて上にある。笑ってしまうくらいだ。この日つけた高値は、3月23日(金)につけた瞬間最安値と比べたら、なんと25%ほど高い。3週間で25%の上昇。改めて言うがこれは債券価格の変動で、株式価格の変動ではない(笑)。世の中いろんなことが起こるもんだ。振り返ってこのグラフを見てみると、2月からの大きな下げも、すでに3分の2は取り戻せてしまっている。損したのは慌てて底値で売った人たちである。債券の世界ですら、大儲けも大損もあるのだ。ちなみにこのBB格以下の米国企業の債券は日本の銀行も大量に保有している。買う時はなかなか買わずに高値になってから買うのが好きな彼らは、ちょっと下がると怖くなりすぐ売るので、今回も激しい下落の途中で大損して売っているのかもしれない。
ここしばらく気になっているのが日本の株式市場の頼りなさである。いつも前日の米国株式市場の動きを真似るように動く日本株式が、最近はかなり弱い。米国株式市場はどんどん上昇しているのに、日本株式はそれについてゆけない日々が続いている。早くからロックダウンも果敢に行い国民に失業を強いつつもCOVID-19の感染者数のピークが早くも見えて来たし、広く国民にスグにでも現金を給付しようとする米国。一方、すべてが鈍く中途半端でほとんど何もしていないに等しいが、悠長にこれからマスク2枚を配布するも今後の感染拡大が懸念される日本。その2国の緊張感の違いを、2国の株式市場の動きの違いが表していると思われる。あらゆる点で平和ボケな我が国。国民は不満を言うだけで、耐え忍んでより大きく勝つことが出来ずに、相対的にはどんどん沈んで行ってしまう。まずはシンガポールを見習おう。とっくに追い抜かれてしまっているが・・・。
アベちゃんは人々の接触を削減するために企業に対して事務のリモートワーク化を要請している。しかしそれを要請したいなら、どうすればそれがすぐに実現できるかを彼もまずは学んでから要請した方がいいだろう。いきなりそれを言われても、その準備がない日本企業の多くはそれができない。リモートワークあるいは在宅勤務は素晴らしいことであるし、多様な状況にある人々に新たな雇用のチャンスを与え、やたら低い日本の生産性も向上させる手段になりうるものだ。それはSDGsという、美しくかつ喫緊の課題にも絡む話でもある。しかし今の日本の状況では、多くの企業はスグに対応できそうもない。
ご丁寧にも素早くかつ毎週という恐ろしい頻度で米国労働省により発表される、米国失業給付申請数はかつて見たことがない高い水準に達している。
下のグラフがそれだ。縦軸の単位は万人。横軸は発表のタイミングを表し、発表のある日(毎週水曜日)の前週の失業給付申請数全米合計の棒グラフである。
【出所: 米国労働省】
これからが怖いというのに今も「あまあま・ゆるゆる」なトーキョーとは違い、ニューヨークなんてとっくにロックダウンをしているわけで、当然解雇される人が多数発生する。特にサービス業がそうだ。だから失業給付申請数がこの状況なのだ。
4月-6月期の米国経済は相当落ち込むはずだ。いろんな人がいろんなことを言うが同期の米国のGDPは年率でマイナス25%~30%程度の落ち込みになるという予想が平均的なところだろう。近年見たことがないようなひどさだ。しかし市場関係者はいつも先の先まで読み込もうと努力するので、それくらいの経済水準の悪化であれば、すでにそれは一度は株式価格におおむね織り込まれたと言える。ここが重要なのだが、いつも時間のズレがあるのだ。経済実態よりも株式・債券市場の方が動き始めるのが早いのである。先が見えた時には相場は終わっている。まとめると・・・
● 経済実態が悪くなるのはまだまだこれからで、将来の話。
● いつもそうした景気変動を早くから読み込む株式市場は、2月後半から暴落に打ちのめされたが、それはすでに過去の話。
誤解してもらっては困るけれど、これから先も、下げ相場はまだまだ何度もあるだろうけどね・・・。
したがって米国株式市場は、3週間ほど前から逆に明るくどんどん上昇中。下のグラフは米国株式市場の代表的指数であるS&P500だが、その直近の状況を見てみよう。上の失業給付申請のグラフの最後の3週間の暗さとは対照的だ。
【出所: S&P】
株式市場は2月19日に天井をつけたあと下げ続けて3月23日に恐怖のどん底(上のグラフで黄色い丸)を経験した。この3月23日につけた瞬間的安値は、2月19日につけた史上最高値から見れば、マイナス35%の下げだ。長い時間かかって市場が作った時価総額のうち、わずか1カ月の間に同じ市場が3分の1以上を失ったことになる。
その黄色い丸のどん底で今度は私が株式を買えればいいのだが、そうは行かなかった。本当の底値で買える人なんて少ないのだ。ウォーレン・バフェットじゃあるまいし。
どん底にいる当事者って、ここまで相場の動きが速いとどんなにデータを眺めていても(↓)、その瞬間には適正な価格水準などなかなか判断できないものなのだ。
【出所: フリー画像】
どん底の3月23日は月曜日。その前日の22日(日曜日)にアトムとくーちゃんのパパがこのブログのコメント欄でお尋ねになるので、私は「株式なら、そろそろ買いなはれや」と返答している。こういう時、自分のブログは便利だ。自分の過去の記事やコメントのやりとりを見ると、自分の考えがよくわかる。グラフをたくさん描いて眺め、文章もこれだけ書いていると自分の頭の中のもやもやした考えが整理される。
私のアトムとくーちゃんのパパへの返信はまったく正しかった。再び上の米国株式指数のグラフをこの下に貼り付けてみよう。しかし自分がアトムとくーちゃんのパパに言った通りに、私はそのどん底で株式を買えたわけではなかった。どん底の23日月曜日(黄色い丸のところ)の週は、翌日24日から株価が急速度で反発してしまい、私は買えずに諦めて終わった。しかし次の30日月曜日で始まる週は、反動が来て再び相場が弱気に転じて暗く終了した。赤い丸がついた4月3日の金曜日で、その週は終了である。
【出所: S&P】
しかしその直後の週末(4月4日~5日)には、世の中がかなり見えて来た。経済実態はさらに今後どんどん悪くなるのだろうが、欧米ではウィルス感染者数や死者数の予想がある程度できて来たのだ。ピークが近いと思われる兆候が見えてきた。そうなると株式市場は強い。私もこの時の日曜日に「明日の朝に株式を買ってみよぉ~♪」とやっと決心したのである。
以前から私が少しだけ持っているグローバル株式のインデックス・ファンドを買い足そう。そのファンドとは、米国バンガード社のトータル・ワールド・ストックETFである。ドル建てで、世界各国の株式8,000以上の銘柄から構成される巨大なファンドであり、総資産に占める経費(運用手数料や事務コスト)率が0.08%という格安な運用である。みなさんも販売手数料、運用手数料、事務コスト合計で初年に4.2%、その後は毎年1.2%くらいは平気で取られる一部の株式投信なんてやめて、ぜひこれをどうぞ。さて、そのファンドの国別配分は以下の通り。
【出所: バンガード】
広く各国に分散しているが、米国株式が55%を占めるので、米国株式市場を見ていればこのファンドの動きもおおよそ掴める。
下のグラフがそのファンドの価格の動きだ。縦軸がファンドの単価で通貨は米ドルだ。変動する方向や全体の形は上の米国株式指数のグラフとほとんど同じである。このファンドも米国株式市場と同じく2月半ばに史上最高値をつけるが、その後は下げ続けることになる。そして米国株式指数と同様の動きを繰り返して3月23日に底を打ち、その後の反発の上昇相場を迎える。
【出所: Yahoo Finance】
私はその途中、4月6日(月)に買おうと決心したのである。その日にこのブログのコメント欄で、私はissy-familyさんと会話している。本当にブログって便利だねぇ。私はissy-familyさんに「本日ちょっとだけ、この記事で書いたETFの買い注文を出しました。ニューヨーク市場が開いたら、その発注が執行される予定です」と書いている。私は本当にそうしたのだ。野村證券さんに電話してとっても優秀な営業担当者さんに「ニューヨークの寄り付き(=市場開始時)で、成り行き(=安くなったら買うなんてことは考えず、その時の価格ですぐ)の買い」をお願いした。安いところに指値して買おうなんて企んでたら、きっと朝から価格はそのまま上がってしまって買えなくなるからだ。
上のグラフでは細かくてわからないので、上のグラフの赤い線で囲った部分を拡大してみたのが下のグラフである。
【出所: Yahoo Finance】
横軸に日付がある。4月6日の月曜日に始まる週、このファンドの価格はガンガン上昇した。野村證券さんは私のリクエスト通り、この週初4月6日の寄り付きで買ってくれていた。購入価格は62.54ドルである(黄色いひし形のところ)。この62.54ドルはこのファンドのこの日のニューヨーク市場で最初の取引価格であり、その取引の中に私の注文も含まれていたことになる。さすが世界のノミューラ、事前に私が依頼した通りの内容(つまり寄り付きの成り行き買い)の正確な取引執行能力。手数料を払っているだけのことはある。安いネット証券ではこうは行かないかもしれない。
米国株式市場同様、この週にこのファンドの価格は上昇し、9日(木)の終値は66.88ドルとなった(↑のグラフで赤いひし形のところ)。3日前の私の買い値から7%近く上昇したことになる。毎日とにかく動きが速い。1日のどこで買うかでも、価格がずいぶん変わる。ちなみに10日(金)は米国は休場だ。今後またきっと大きく下がる局面があるだろう。そこでまたちょっとこのファンドを買い足そうと思う。世界中の株式が入ったようなこのインデックス・ファンド。手数料は世界最低レベル。通貨はドル建て。これで十分だ。
金利の世界に目を転じよう。米国の中央銀行は頑張っている。2週間前にお知らせしたグラフを更新して再びお見せしよう。これは中央銀行が買い取った資産の残高を示している。つまりそれだけ市場に資金を放出したことになる。経済を刺激するべくがんばっているのだ。数週間前からなりふり構わずそれをやっていて、中央銀行の資産残高はロケット打ち上げ状態。赤い丸(↓)はすでに6兆ドルを超えている。
【出所: FRB】
縦軸は中央銀行の資産残高で単位は兆ドル、横軸は年だ。
さらに中央銀行は先週新たなことを打ち出した。最近格下げされ、格付けがBB格以下の企業が発行したものも含めた社債を買い取ることを9日水曜日に発表したのである。これは一昔前なら禁じ手だ。格付けが低い特定の弱い企業を中央銀行が直接的に支援することを意味するからだ。
この週に市場で起こった多くのことのうち、最も面白いことが低格付け社債の暴騰だった。低格付けの債券なのに中央銀行が買ってくれると約束したのだから、これほど心強いことはないだろう。将来の不況に怯えた2月からの低格付け債券価格の急落と、それを中央銀行が助けてくれるとわかった後の急上昇をこれから見てみよう。
BB格以下の債券で構成される「ハイ・イールド」と呼ばれる債券がそれに相当する。下のグラフはそのハイ・イールド債に投資するドル建てファンド、iシェアーズ・iBoxxハイ・イールド社債のETFの価格の推移である。これも私の上記株式のETFと同様、誰でも買える。日本人でも買える。
【出所: Yahoo Finance】
赤い丸で示したのが先週の最終営業日4月9日の木曜日の値動きだ。この日中央銀行から先述の発表があったので、その日の価格変動レンジは、その前日のそれから飛びぬけて上にある。笑ってしまうくらいだ。この日つけた高値は、3月23日(金)につけた瞬間最安値と比べたら、なんと25%ほど高い。3週間で25%の上昇。改めて言うがこれは債券価格の変動で、株式価格の変動ではない(笑)。世の中いろんなことが起こるもんだ。振り返ってこのグラフを見てみると、2月からの大きな下げも、すでに3分の2は取り戻せてしまっている。損したのは慌てて底値で売った人たちである。債券の世界ですら、大儲けも大損もあるのだ。ちなみにこのBB格以下の米国企業の債券は日本の銀行も大量に保有している。買う時はなかなか買わずに高値になってから買うのが好きな彼らは、ちょっと下がると怖くなりすぐ売るので、今回も激しい下落の途中で大損して売っているのかもしれない。
ここしばらく気になっているのが日本の株式市場の頼りなさである。いつも前日の米国株式市場の動きを真似るように動く日本株式が、最近はかなり弱い。米国株式市場はどんどん上昇しているのに、日本株式はそれについてゆけない日々が続いている。早くからロックダウンも果敢に行い国民に失業を強いつつもCOVID-19の感染者数のピークが早くも見えて来たし、広く国民にスグにでも現金を給付しようとする米国。一方、すべてが鈍く中途半端でほとんど何もしていないに等しいが、悠長にこれからマスク2枚を配布するも今後の感染拡大が懸念される日本。その2国の緊張感の違いを、2国の株式市場の動きの違いが表していると思われる。あらゆる点で平和ボケな我が国。国民は不満を言うだけで、耐え忍んでより大きく勝つことが出来ずに、相対的にはどんどん沈んで行ってしまう。まずはシンガポールを見習おう。とっくに追い抜かれてしまっているが・・・。
アベちゃんは人々の接触を削減するために企業に対して事務のリモートワーク化を要請している。しかしそれを要請したいなら、どうすればそれがすぐに実現できるかを彼もまずは学んでから要請した方がいいだろう。いきなりそれを言われても、その準備がない日本企業の多くはそれができない。リモートワークあるいは在宅勤務は素晴らしいことであるし、多様な状況にある人々に新たな雇用のチャンスを与え、やたら低い日本の生産性も向上させる手段になりうるものだ。それはSDGsという、美しくかつ喫緊の課題にも絡む話でもある。しかし今の日本の状況では、多くの企業はスグに対応できそうもない。