じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

坂口安吾「ラムネ氏のこと」

2023-07-10 15:18:08 | Weblog

★ 市役所から介護保険証、日本年金機構から年金の請求書類が届いた。いよいよ高齢者の仲間入りだ。(といっても今の時代、個人差はあるものの65歳と言えばまだまだ若い。昔の65歳は今では75歳ぐらいかも知れない)

★ さて、高校生が期末テストの現代文を勉強していた。坂口安吾の「ラムネ氏のこと」が範囲というので読んでみた。

★ 小林秀雄、島木健作、三好達治と文学史に名を刻む面々が鮎を肴に「ラムネ」の話に及ぶ。三好が、ラムネの玉を発明したのはラムネ―氏だというから議論は紛糾。解決編は後日に譲ることとなった。

★ 坂口安吾は「ラムネ」の話で読者を喚起し、その後、フグ料理、茸の話題へと進む。死(毒)を恐れず食にチャレンジした人たち、彼らはラムネ氏に通じるものがあるという。

★ 最終章でいったん話題が転換し、切支丹が渡来した当時、「愛」という言葉の翻訳に窮した話になる。当時、日本語で「愛」は「不義」の意味を含んでいたという。それで「愛」を表す原語に「御大切」という訳を当てたという。

★ 結語は「フグに徹しラムネに徹する者のみが、とにかく、物のありかたを変へてきた」という。

★ 既成の価値観、とりわけ国策や世相に惑わされず、自らの信念に従った者のみが至れる境地があるということか。作品が書かれたのが戦中ということを考えれば、ギリギリの国策批判なのかも知れない。

★ 三木清の「人生論ノート」でも思うが、思想的に窮屈な時代に自らの考えを発表することはなかなか労を要するようだ。

☆ 「御大切」のエピソードは大学の倫理学の教授が話していたのを思い出す。この作品が元ネタだったのだろうか。

 

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