つい最近まで、
一里塚で、自店の決算書をみるのが怖かった。
まず目にいるのは△印、赤字が目に入るもの。
売上は減り、借り入れは増える。
どうしてやりくりしていけばいいのか。
そんなのがいっぱい詰まった決算書だ。見たくなるはずがない。
なんとかしなくちゃ、なんとかしなくちゃ、と考えこんでいたよ。
あるときに、商工会からきた人から言われた。
「そんな悩みは自分のこと。自分のことばかり考えていてはだめだ」って。
俺、怒ったよ。いや俺だけじゃない。
おとなしい妻までが顔色を変えたもの。
難しい経営のお説教かと思ったら、自分の子供も頃の、こういう話だよ。
小遣い帳を見る。見開き1ページに一つぐらいで、「貯金」という言葉ある。
ここに、おじいちゃんの肩たたきでもらったお金。
お母さんの手伝いでもらったお金が入っているのだ。
二人とも、「有り難う。おまえのおかげで助かったよ」
と、ニコニコしてお駄賃をくれた。
それを郵便局に持って行った。小銭は狸の貯金箱に入れておく。
家族のみんなを喜ばした分だけお小遣いが貯まっている。
嬉しかった。
「商売はお客様を喜ばしたお駄賃をいただくのと同じ」。
そんなふうに考えてみたら、って。
妻が、あとからいったよ。「今のやり方とずいぶん違うね」。
それで思わず二人で笑った。それが5年前。とても寒い日だった。
赤字や借金を減らそう。少しでも儲けようとがんばってきて、これだ。
どうせ金のかからないことならだまされても損はないのだから、
やってみようと思った訳よ。
素直じゃないから、そのときは返事しなかったがね。
俺たちだって、だてに商売24年やってきた訳じゃない。
少しはその人の話で、わかるところもあったし。意地もある。
だから、俺だって思ったのだよ。
いつの日かは、きっと。必ず。絶対に、と。
決算書を手にして、「俺たち、今年はどれだけ客様に喜ばれたか」って。
わくわくして決算書を見る日のことを。そんな時がくることを。
夢でもいい。同じ夢なら資金繰りに追われる夢よりましだし。
そのために朝早くからお店開いて、なにか一つでも、
お客様が喜んでくれることないかな。工夫はないかな、と、
できることから始めたよ。
なあーに、金も知恵もないのだから
たいしたことなどやれっこないのだが。
こんな老夫婦二人のお店でも、
お客様に喜んでいただけることがあるに違いないと、
始めたよ。思った。「孫を喜ばすのと同じ要領だ」。
5年目だ。夫婦で、孫をつれて納税に行ったのは。
前夜から税務署に行くのが楽しみだった。ほんとうだ。
なんだか、おばあちゃんに通知票を見せに行くような気持ちだ、
といったら、妻が笑った。
うまくいけば3代目になる1歳の孫も笑ったよ。
一里塚で、自店の決算書をみるのが怖かった。
まず目にいるのは△印、赤字が目に入るもの。
売上は減り、借り入れは増える。
どうしてやりくりしていけばいいのか。
そんなのがいっぱい詰まった決算書だ。見たくなるはずがない。
なんとかしなくちゃ、なんとかしなくちゃ、と考えこんでいたよ。
あるときに、商工会からきた人から言われた。
「そんな悩みは自分のこと。自分のことばかり考えていてはだめだ」って。
俺、怒ったよ。いや俺だけじゃない。
おとなしい妻までが顔色を変えたもの。
難しい経営のお説教かと思ったら、自分の子供も頃の、こういう話だよ。
小遣い帳を見る。見開き1ページに一つぐらいで、「貯金」という言葉ある。
ここに、おじいちゃんの肩たたきでもらったお金。
お母さんの手伝いでもらったお金が入っているのだ。
二人とも、「有り難う。おまえのおかげで助かったよ」
と、ニコニコしてお駄賃をくれた。
それを郵便局に持って行った。小銭は狸の貯金箱に入れておく。
家族のみんなを喜ばした分だけお小遣いが貯まっている。
嬉しかった。
「商売はお客様を喜ばしたお駄賃をいただくのと同じ」。
そんなふうに考えてみたら、って。
妻が、あとからいったよ。「今のやり方とずいぶん違うね」。
それで思わず二人で笑った。それが5年前。とても寒い日だった。
赤字や借金を減らそう。少しでも儲けようとがんばってきて、これだ。
どうせ金のかからないことならだまされても損はないのだから、
やってみようと思った訳よ。
素直じゃないから、そのときは返事しなかったがね。
俺たちだって、だてに商売24年やってきた訳じゃない。
少しはその人の話で、わかるところもあったし。意地もある。
だから、俺だって思ったのだよ。
いつの日かは、きっと。必ず。絶対に、と。
決算書を手にして、「俺たち、今年はどれだけ客様に喜ばれたか」って。
わくわくして決算書を見る日のことを。そんな時がくることを。
夢でもいい。同じ夢なら資金繰りに追われる夢よりましだし。
そのために朝早くからお店開いて、なにか一つでも、
お客様が喜んでくれることないかな。工夫はないかな、と、
できることから始めたよ。
なあーに、金も知恵もないのだから
たいしたことなどやれっこないのだが。
こんな老夫婦二人のお店でも、
お客様に喜んでいただけることがあるに違いないと、
始めたよ。思った。「孫を喜ばすのと同じ要領だ」。
5年目だ。夫婦で、孫をつれて納税に行ったのは。
前夜から税務署に行くのが楽しみだった。ほんとうだ。
なんだか、おばあちゃんに通知票を見せに行くような気持ちだ、
といったら、妻が笑った。
うまくいけば3代目になる1歳の孫も笑ったよ。