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ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2014.8.19 520円で社会勉強!

2014-08-19 19:45:02 | 日記
 いまだ帰省しない息子のこと。
 夏休みに短期アルバイトをする!ということで初めてタウンワークを見て申し込みをし、面接に行ってきたという。
 何をするのか、と訊けば、3時間5,000円という時給の高さに惹かれて、なんと力仕事(内装資材搬入)なのだ、と。一番不向きではないか!鍛えてもいないのにいきなり怪我でもしては・・・と、過保護にも心配していたのだけれど、これも本人の為ということで、とりあえず夫と2人、グッと黙っていた。

 昨日午後、面接が終わって、本人からLINEで報告がきた。
 「ちょっと勤務は無理そう」という。「日程が合わないのか、きつそうなのか」と尋ねると、「朝6時に京都駅に集合で、防護靴等揃えるため初期投資に8,000円もかかる」と言われ、自分から保留にしてきたそうだ。
 朝が弱いのは自分が一番判っているし、その時間に集合場所まで行くとなると、会館で朝食すら摂っていけない。
 まあ、焦らず近所で探すように、と言ったところ「そうする」との答えだった。
 結局、面接場所迄の地下鉄代往復520円は自腹で(当然だが)、本人、18歳にして初めての社会勉強となったようだ。

 夏休み中に無計画にお小遣いを使い過ぎて、しかも下宿の食事も大学生協もお盆中はお休みで・・・ということで、かなり切羽詰まっていたようだ。けれど、「時給が良い=キツい、大変」という現実を垣間見ることが出来たなら、良かったことだ。
 
 思えば、私も大学1年の夏休み、友人の紹介で富士五湖周辺の合宿所で住み込みのアルバイトをしたことがある。
 旅館やホテルと違って夕食・朝食の2食だけでなく、昼食も含めて3食提供する宿だったので、地元の高校生や、もしかしたら湖で遊べるかも、と東京から安易に考えてやってきた大学生アルバイトたちは、朝早くから100人分くらいの朝食の支度。片付けが終わればそのまま昼食の仕込み、片付け、さらに夕食の支度、片付け。
 大広間、見渡す限りに並ぶお膳にひたすら食器を並べ、肉を焼き、野菜を切り・・・。食事はお客さんたちの後に余り物。おかずが足りなくてふりかけだけ、などということもザラだった。ヨレヨレになって一日の仕事が終わって、蚕棚のような二段ベッドに入る前に宿泊客が入った後の浴場で入浴するのだが、もうお湯は少ないし、汚れているし・・・、でかなり悲惨なものだった。

 午後少し休憩があったと記憶しているけれど、遊びに行く元気など全くと言っていいほどなく、ひたすらベッドで休息、だった。一体何時間労働だったのだろう。12時間は優に超えていたと思う。まさに女工哀史の世界、時給に換算したら一体いくらだったのだろう。
 体力勝負の仕事だというのに寝不足に加え、軟弱な私は何度も貧血で倒れたり、指を切ったり・・・と、それはそれは不向き極まりない申し訳ない劣等生アルバイトだった。
 けれど、その時に頂いた7万円ほど(最低2週間だったか、もっと長くと言われたけれど、ほうほうの体で友人と引き揚げてきた。)はあまりにもったいなくて、長いこと手を付ける事が出来なかった。
 その後、ファーストフードやら、洋服店の店員やら、宛名書きやら、翻訳やら家庭教師やら・・・と、社会勉強と称してひと通りやらせて頂いたが、やっぱり身体を使う仕事は不向きだな、ということは実感した次第である。

 これから息子がどんなアルバイトを経験するのかわからないけれど、こうしてだんだん働くということ、社会の厳しさを実感していくのだと思う。

 ところで、先月、取材を受けた新聞記者の方から、今日から始まった6回シリーズの2回目として、明日掲載するという連絡を頂いた。
 毎日新聞・くらしナビで「がん・ステージ4を生きる:笑顔で過ごしたい」というもの。
 明日20日の毎日新聞朝刊、よろしければどうぞご覧ください。
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2014.8.18 主役はあくまでも自分

2014-08-18 20:20:51 | 日記
 何度もご紹介している朝日新聞静岡版・渡辺亨先生のコラムの最新号。今回も、そうそう、そうこなくっちゃ!と思ったので、ご紹介させて頂きたい。
 またも自意識過剰なタイトルになったが、再発治療を続けて行く上で、「主役はあくまでも自分」というのは常々実感していることだ。
 他でもない自分の人生、再発して無治療と決めない限り、基本はエンドレス、生きている限りの治療になる。ということは、当然自分の生き方そのものに直結してくる。
 だから、初発時の治療のように規定通り、言われた通りの標準的なレジメンだけが全てではなくなるのだ。
 自分がどうありたいのか、自らのQOLを保ちつつ、人生を精一杯愉しむ余裕を持ちながら、主治医と(もっといえば薬剤師さんや看護師さん等沢山の医療関係者の方たちとのチーム医療の長所を最大限活用しながら)二人三脚で作り上げていく治療、それこそが再発治療の醍醐味だと思う。

以下、転載させて頂く。

※  ※   ※(転載開始)

がん内科医の独り言(2014.8.16)
抗がん剤いつまで
 ■再発後の治療は長丁場
 「抗がん剤治療はいつまで続けるのですか?」
 再発がん治療を受けている患者からよくある質問です。
 抗がん剤治療が行われる状況は大きく分けて二つあります。一つは初期治療です。がんと診断後、手術や放射線治療と組み合わせ、完全治癒を目指す治療です。抗がん剤の期間はあらかじめ設定され、通常は半年以内に終わります。初期治療では、多少の副作用はどうにか乗り越え、規定の治療の完遂が大切だと我々は考えています。
 もう一つは転移・再発後治療です。がんが他の臓器に転移した場合、完全治癒は困難な場合が多いのですが、がんと共存して発病前と同じような生活を送ることができるよう痛みや呼吸困難などの症状を和らげ、延命をめざします。
 この場合、抗がん剤治療は期間はあらかじめ設定しません。原則は、効果があり副作用も許容範囲内ならば続けます。
 副作用が強くて続けられない場合は、抗がん剤の量を減らしたり、ケモ・ホリデー(抗がん剤を英語でケモセラピー、略してケモと呼びます)と言って抗がん剤治療をしばらくの期間はお休みしたりすることもあります。気分転換に旅行するなど、趣味に気持ちを向けることも大切です。
 また、永久に効果が続くわけではないので、別の薬剤への変更もあるし、効果が期待できそうな薬剤を使い尽くしてしまう日も来ます。新薬の効果や安全性を確かめる臨床試験に参加し、次世代のがん患者によい治療を残すことも重要な取り組みです。
 転移・再発後の治療は山あり谷ありの長丁場ですが、毎日の生活や仕事を犠牲にしないよう、気持ちの余裕を持つことも大切です。患者は医師の指示に従わなければならないと考えるのではなく、医師とコミュニケーションをよく取り、相談しながらいっしょに治療を組み立てていきましょう。(浜松オンコロジーセンター・渡辺亨)

(転載終了)※ ※ ※

 再発治療が始まってからは、基本的にずっと治療をお休みするということはなくなる。だから、治療がごくごく自然に自分の生活の一部になる。けれど、なるべく生活の全部にしてはいけない、と思う。もちろん長丁場の治療は、山あり谷あり“まさか”の坂のオマケつき。だから、どうしてもここだけは踏ん張りどころ!と短期入院して治療専念、生活の全てを捧げざるを得ないということもあるだろうけれど、基本は日常生活や仕事をこれまで通り続けられるように、効果と副作用のバランスを取りながら、日々を過ごす事が何よりの目標になる。
 こうして私は6年半をやり過ごしてきた。今のところ、規定量より少ない内服薬の服用でなんとか落ち着いた日々を送らせて頂けていて、今の治療を止めたい、とは全く思わない。このまま少しでも長く、今の薬で粘りたいと思う。
 もちろん、この薬が効かなくなる日が早晩やってくることも、理解している。その時は、今度はT-DM1(カドサイラ)のお世話になろう、とも考えている。その先、次の次のことは、まだ今はリアルに考えない。そうこうしているうちにまた、副作用がそれほど酷くなく効果のある新薬が出るかもしれないし、あるいは治験に参加することが出来るかもしれない。

 何より、今この時を大切に、美味しいものを食べ、行きたい所に出向き、会いたい人に会い、細く長くしぶとく仕事も続ける、これぞ私が主役!の幸せな人生への近道であると思う。
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2014.8.16-17 概ね幸せ、ちょっぴり残念~週末あれこれ 遺影の次は3D!

2014-08-17 21:35:53 | 日記
 初日、土曜日。
 今日は毎月の楽しみマッサージの日。唯一ベッドの中で朝の連続テレビ小説を見られる幸せな日でもある。その後、おもむろに起き出して、洗濯機を2回廻し、ベランダ一杯に干してから出かける。
 いつもは肩首頭、耳も固く凝り固まっていて、ゴッドハンドのTさんからは「凝っていますね~」と言われつつ「イタタタ・・・」という感じ。が、今回は不思議とイタ気持ちいい・・・止まり。「浮腫んでもいないし、それほど凝ってもいませんね。ちょっと甲斐がないくらいでした」ということだった。
 お盆週間で職場も静か、ヨガのクラスも空いていて・・・とストレスフリーだったからだろうか。来月以降の予約を確認し、あたらしい店長さんとお近づきのお喋りをしてサロンを後にした。

 その後、これまた毎月の恒例、実家の両親と待ち合わせてホテルでランチ会。2人とも時間はかかったが「もう夜は要らない」というくらいしっかりたいらげていった。父は、以前は173cmの身長だったが、背骨の圧迫骨折のため、腰が曲がり、随分小さくなった。166cmの私より小さい。体重も減って、今や45kgだという。母は昔から小柄で150cmちょいだったけれど、今は148cmあるかないかで35kg。自動ドアの前に立っても開かないことがあるらしい。両親の老いを目の当たりにするのは複雑な気持ちだが、とにかくこうして2人でバスに乗り、待ち合わせ場所にやって来てちゃんと食べることが出来ればまだまだ大丈夫、だと思う。来月息子が帰省した折、1泊で庭の草取りのアルバイトに派遣する約束をする。
 両親と別れてからは、最寄駅に戻って、駅前のショッピングセンターで、気付けばまた息子の物をあれこれ買ってしまう。そして、夕方からのヨガベーシックのクラスに寄ってたっぷり汗を流して帰宅した。

 息子が帰省もせずに楽しみにしていた五山の送り火の日。この日のために夏休みの前半を賭けたのに、折悪しく古都は土砂降り。冠水している所もあるとニュースで聞き、LINEで様子を尋ねると、行きたいけれどこれではちょっと厳しいかも、という答え。
 結局、風邪をひくわけにもいかないし、と断念した模様。点火の時は少し小降りになったということだが、彼は部屋から一歩も出られずじまいの土曜日だったらしい。夫と「まあ、あと3年間滞在するのだし、来年以降、また見るチャンスはあるよ」と慰める。私も“座椅子”のブログ更新と、送られてくるであろう写真を楽しみにしていたので、残念。

 日曜日。
 夫が仕事のため日曜出勤。いつもより早く家を出るということで通常通り起床。洗濯物を片付け、クローゼットの断捨離と掃除を済ませて、昼からインナービューティヨガのクラスに参加する。

 ECで脱毛する前、もしかするとこのまま死ぬまでずっと脱毛したままかもしれない、という恐れもあって2年前の夏、遺影を撮影した。ところがどっこい、再びしっかり髪の毛が生え、昨年の秋からは、かつらを外して自毛で日々を過ごすことが出来ているのだから、有難いことである。
 それにしても、我ながら新しがりというか自意識過剰というか、なんというか。“今を残そう3Dフィギュア!「今のあなた」を世界にひとつしかない3Dフィギュアに!自分の1/10サイズに出会える新鮮な感動を提供いたします”という写真室の触れ込みにフラフラと吸い寄せられた。撮影料は決して安くはないので、ちょっと迷ったのだけれど、説明を聞いてぐっと傾き、予約し、今日はその撮影日だった。
 90秒程度、ターンテーブルの上で静止するだけ。3Dスキャナーでデータを取り込み、3Dプリンターが再現してくれる。
 そうはいうものの、小さなターンテーブルに乗り、ライトで眩しいほど照らされ、思ったより回転の速度が速いのに驚く。最初の3/4回転(270度)は、回転等の雰囲気を掴むための撮影しない時間、次の1/2回転(180度)で顔を撮影。その間は出来れば瞬きも我慢してください、動くと鼻がずれたりします、と言われ緊張する。次の2回転(720度)の間に、カメラが上下に動いて頭の上から足の先まで撮影していく。90秒かけて360度一回転するとばかり思っていたので、こんなスピードでグルグル回されるとは・・・びっくり。どんなふうに映っているのか、ドキドキするも何とか撮り直しなく無事に終了。隣のPCに取り込まれた画像を確認する。小さなお子さんは作れればとても可愛いけれど、どうしても動いてしまうので何度も撮り直しになったりして難しいとのこと。さもありなん、である。
 その後、スタジオに移って同じポーズで普通に写真撮影。こちらフィギュアと一緒にプレゼントしてくれるのだそうだ。
 あとは2週間後の仕上がりを待つだけである。出来上がったら、またどんなものかご報告したいと思う。夫は「うーん、そういうものが見張っていたら、再婚出来ないなぁ」と。私がいなくなったらまだ再婚する気でいたのか!?失礼しちゃう、である。複製も可能ということらしく、息子の部屋に一つお目付け役で送れば、とのこと。いやいや、いくらアニメのフィギュア好きの彼と言えど、五月蝿い母のミニチュアがいたら、息子はせっかくの一人暮らしの楽しさが半減するだろうから、遠慮しておこう。

 撮影後、仕事が終わった夫と合流して、イタリアンの夕食を済ませてきた。
 明日からまた新しい1週間が始まる。週の半ばにはCT撮影、そして週末からは京都行きが控えている。
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2014.8.14 お盆週間に思うこと

2014-08-14 21:37:37 | 日記
 今週はお盆週間。昨朝は帰省ラッシュスタートということで、高速道路渋滞のニュースが喧しかった。

 我が家では、夫も私も全く関係なく淡々と職場に通う、ごく普通の日々を送っている。
 かように子どもが家からいなくなるということは、そうした四季折々の長期の休みとは無縁に淡々と日々が動くということなのだな、とちょっとしんみりする。
 そもそも私自身、父母ともに実家が23区内だったので、田舎というものが存在しなかった。だから、子どもの頃から夏休みやお盆に父母の“田舎”に帰り、海や山、川で遊んだりして長期間を過ごした、という経験がない。唯一、小学生の頃、母方の祖母の実家に、従姉弟たちと一緒に長逗留させてもらったことはあったのだけれど、基本は都内で、従姉妹の家にお泊りに行ったりするのが関の山だった。

 それは、息子も同じようなものだ。昨年秋に亡くなった義母が、故郷の家を引き払って義妹夫婦宅に身を寄せたのはかれこれ15年以上前のことだから、息子も乳幼児の頃に2,3回訪れたことはあっても、物ごころついてからお盆の時期に田舎を訪れる、という感覚はおそらく持ち合わせていない。
 今、一人、学生会館に残っている彼こそが一番“お盆である”ということをヒシヒシと感じているのかもしれない。
 お盆週間の間、会館のフロントはクローズ、朝夕の食事提供もストップだそうで、住人たちは皆、各々の故郷に帰省しているようだ。大学もこの時期はすっかりお休みになってしまうので、安価な生協で食事を摂ることも出来ず、お財布の中身とにらめっこらしい。
 先日、2か月近くぶりにSkypeで話したのだが、当初、五山送り火を見ないと帰れない、とか9月の初めに部活の合宿があるから、とかアルバイトがしたいから、などと威勢よく言っていたものの、来年は前期試験が終わったら、この時期には帰省した方が良さそうだと思い直したらしい。

 長くこの事務室でアルバイトをしている方が、職員から「お盆なのにお休みもされず、大変ですね」と言われて「いえいえ、電車が空いているのだから、こういう時こそここに来るに限るのよ」とおっしゃっていた。
 なるほど、夫は夫でいつもの通勤電車の混雑が緩和されて快適の様子。さすがに座ることは出来なくとも、吊皮にしっかりつかまって最前列に立てると疲れ方が違うという。
 職場でも休みの方が目立っている。いつもの調子で冷房が効くと寒いくらいだ。H・M・LのダイヤルスイッチをMはLにして、LはOFFにして回っている女性たちである。

 私は満員の通(痛!)勤電車から離れること19年目。職住近接の有難い身であるので、こうした感謝の気持ちをついつい忘れつつある。
 いけない、いけない・・・私は本当に恵まれているのだ、と改めて思う静かなお盆週間の一日である。
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2014.8.13 100%はない、だから必要以上に検査はしない

2014-08-13 19:44:46 | 日記
 何度もこのブログで紹介させて頂いている、朝日新聞静岡版の渡辺先生のコラム。
 今回も、心穏やかに治療をしていくために、という観点から思いを同じくしたので、以下、転載させて頂く。

※  ※  ※(転載開始)

がん内科医の独り言(2014.8.9)
遺伝子検査
 ■患者混乱させる医師迷惑
 50代の女性が、乳がん治療に関するセカンドオピニオンを求めて受診されました。
 女性は右乳房にしこりを感じたため、病院でしこりに針を刺し、組織の一部を採取する検査を受けました。その結果、ホルモン剤が効くが、抗がん剤を追加した方が良さそうなタイプの乳がんという診断でした。
 1週間後に予定されている手術までに術後の治療を決めるよう言われたそうです。乳がんの7割はホルモン剤によって増殖が抑えられるタイプです。その半分はホルモン剤だけでよいのですが、残りの半分は抗がん剤治療を追加する必要があります。
 脱毛や吐き気などの副作用が強い抗がん剤治療は受けたくない、と思う人は多いと思います。「抗がん剤治療はやはり必要ですか」という患者の問いに対して、「手術前にホルモン剤を数カ月行い、しこりが小さくなれば効くということなので、抗がん剤は必要ないかもしれない」というのが私の意見でした。
 2カ月後、患者は再びセカンドオピニオン外来を受診しました。予定どおり手術が行われており、術後に主治医から抗がん剤治療が必要かどうかを調べる遺伝子検査を勧められたそうです。
 欧米では既に数種類の検査が日常診療として行われていますが、日本ではまだ正式には導入されていません。実施には50万円前後の自己負担が必要です。患者は勧められるまま二つの検査を受けたところ、一つの検査では抗がん剤治療は必要、もう一つでは不要という結果だったそうです。
 結局、高額を負担して実施した検査はあまり役に立たず、主治医からは「抗がん剤がいやならホルモン療法だけをやりましょう」と言われたそうです。これ以上、患者を混乱させてもかわいそうだし、絶対に正しい答えはないので、ホルモン療法だけ続けることに賛成しました。
 しかし、情報処理を間違った医師は患者に大きな迷惑をかけるということを痛感しました。
(浜松オンコロジーセンター・渡辺亨)

(転載終了)※  ※  ※

 日進月歩の医療の進歩により、以前は出来なかった遺伝子検査が可能になった。その恩恵を受ける人は少なくないのだろう。
 けれど、結局のところ、絶対ということはないし、このコラムの例のような場合、言葉は悪いけれど、本当に骨折り損のくたびれ儲け・・・になりかねない。もちろん、患者本人がそれで納得して治療を受け満足できるなら、それは何よりなことだ。が、何でもかんでもとりあえず検査、検査というのはやはり問題だな、というのが私の率直な感想だ。

 もちろん、初発だったら徹底的に検査して、癌細胞を無駄なくしっかり叩くのが完治への王道であるだろうことは疑いがないし、まさか患者を混乱させるために医師がこの2種類の検査を勧めたとは思えないけれど、複数の検査で相反する結果が出る可能性がある、ということを少しでも分かっていれば、そうそう気軽にお薦めすることも出来ないだろう。
 
 誰だって、検査をすればその後結果が出る迄、なかなか平穏ではいられないし、結果が出たら出たでこうしたケースだと実に悩ましい。もちろん、50万円前後を負担したとしても、検査結果に基づいた治療をすることで、その後再発することなく、完治しました、ベストな治療が出来ました、ということなら、それは万々歳。
 けれど、何分世の中、グレーな部分が多い。しかも命に係わることはとりわけそうだと思う。物事には100%はない、ということを頭の片隅にでもおいておくべきなのだろう。

 昨日今日と、これまでの猛暑に比べて随分と涼しい。ならば身体が楽か、といえばそうでもないのが不思議だ。なんだかだるくて眠くて・・・やはり夏の疲れが出てきているのだろうか。
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