第90回全日本フィギュアスケート選手権(2021)、男子ショートプログラム(ジャッジスコア)。今日も現地観戦のメモから印象を書いていく。
<G1>
三浦佳生 SP:92.81(5)
ヴィヴァルディ「四季」より「冬」♪ 白と青。第一滑走を引いて「漬物石になりそう(滑走順の早い選手が高得点を出し、その得点を越えられない状態が長く続くこと)」と言われたが、まさにその通りになった。
4サルコウ+3トウ、3アクセル、4トウとジャンプがクリーン 勢いのあるステップで、スケーティング全体が滑らかになっている。
パーフェクトな出来にガッツポーズ、第一滑走からスタンディングオベーション
杉山匠海 SP:65.34(19)
「Welcome Home」♪ 黒にカラフルなストーン。膝をついたポーズからスタート、3アクセル転倒したが、3ルッツ+3トウ、後半両手上げ3フリップと軽やかなジャンプを決める。キャメルスピンの姿勢がきれいで、スケーティングも無理がない。
壷井達也 SP:77.31(12)
映画「ツリー・オブ・ライフ」♪ 緑。こちらも膝をついたポーズから。3アクセル、3フリップ、3ルッツ+3トウと安定したジャンプ。どこか穏やかな雰囲気で通した。
鈴木零偉 SP:53.45(24)
「天国への階段」レッド・ツェッペリン♪ 黒に炎の模様。3ルッツ(エッジエラー)、3サルコウ+3トウ、イーグルからの2アクセルと大きなミスなくジャンプをこなした。フライングキャメルでドーナツ姿勢からアップライト、片手ビールマンのような姿勢もあって、わりと体が柔らかいのかな
木科雄登 SP:45.92(29)
「Bad」マイケル・ジャクソン♪ 黒地に金。冒頭から手拍子をもらっていたが、アクセルが2回転で転倒、単独トウループは3回転。コンビネーションジャンプは一つ目が2サルコウとなり、3トウをつけたが3トウのダブりで無効に。なんだか勢いがない、、、
後で「怪我してるのよね」と観客の人たちが話しているのが聞こえた。本来の元気を取り戻して、またこの舞台に帰っておいで
吉岡希 SP:72.94(14)
「Mountain Top」RADWIMPS♪ 紫。またまた膝つきポーズから、流行りか 4トウ、3アクセル、3ルッツ+3トウと軸の細い、真上に上がるタイプのジャンプを跳ぶ。スピンはだんだん回転速度が遅くなってしまうのが残念 以前よりスケーティングがきれいになったと思う。
大島光翔 SP:65.86(18)
「Real?」♪ 黒ベスト、ゼブラ柄パンツ。得意なロック調の曲 3アクセル、3フリップは良かったが3ルッツ+3トウで転倒。ステップは元気いっぱいだがレベルは2止まり とにかく楽しければいい!かな。
<G2>
和田龍京 SP:42.34(30)
ショパン「バラード第4番ヘ短調」♪ 白と薄紫。羽生結弦が使いそうなピアノ曲 3ルッツ転倒、3トウでステップアウトして2トウをつけたが無効に。2アクセルは決まった すらっと背が高い選手。
古家龍磨 SP:46.59(27)
「ハレルヤ」♪ 白茶黒。2アクセル、3ルッツ+2トウ、3フリップ(回転不足)、なんとかまとめた感じ。基本に忠実に丁寧に演技をしている印象。
鈴木楽人 SP:55.00(23)
「Melodie」♪ 白と緑。3トウ+3トウ、3サルコウ、後半2アクセルと大きなミスはなし。スピンの最後にかけて回転が遅くなってしまうが、スケーティングはわりときれい。
櫛田一樹 SP:72.37(15)
「Falling Like The Stars」♪ 青シャツ。冒頭にきれいな4トウが入り、イーグル、ターンからの3アクセルも決まる。3ルッツ転倒でコンビネーションなしになってしまった フライングスピンに入るジャンプが高い。
歌詞と連動する振付で豊かな表現がいい。すらりと長身で映える。
中村俊介 SP:52.78(25)
「Eye」Coba♪ 黒にカラーストーン。3アクセル転倒、4トウも転倒。少し体力を奪われたか、スピンのスピードがないような 全体のスピードはあるんだけど。
この曲が合ってないというか、まだ早いのかも
石塚玲雄 SP:57.06(20)
「ビートルズコンチェルト」♪ 青。かつて高橋大輔が使った曲が続く 3フリップ(エッジエラー)+3トウ(q)、2アクセル、後半3ルッツ(回転不足)転倒。技術的には高くないが、表現の意欲は感じられる。気持ちの入ったステップ、スピンの回転が安定していて姿勢も良い。
古庄優雅 SP:45.99(28)
映画「ムーラン・ルージュ」より「ロクサーヌのタンゴ」♪ 茶と黒。3フリップでステップアウト、3トウで転倒、2アクセルは入る。名前のように優雅にはいかなかったか、、、
<G3>
山隈太一朗 SP:55.11(22)
「ナチュラル・ソングブック」♪ 紺と緑。チェロを奏でるような所作からスタート。柔らかくスピード感があるスケーティング。アクセルがパンク、3ルッツ+2トウ、フリップが2回転に ジャンプはかなりヤバい、、、。それでも、曲が激しくなるパートで情熱的なステップはレベル4。スピンもレベル4をそろえた。
この得点はフリー進出ボーダーラインか?と思ったが、なんとか進出決定
片伊勢武 SP:69.32(16)
ドラマ「義経」より「伝説、そして神話へ」♪ 水色の着物風。3アクセル鮮やか!と思ったら3ルッツ転倒。後半3サルコウ+2トウ頑張る。
一歩がよく伸びてグライドする。キャメル、シット共にスピンがきれいで、全体に柔らかな雰囲気が持ち味
長谷川一輝 SP:56.86(21)
「Blues for Klook」♪ 紫。3ルッツ+3トウは片手をついたが耐える。2アクセルは下りてイーグルに繋げた。フリップが2回転になってしまって無効に
プログラム自体は自分のものとして、しっかり演じていると思った。ステップに入れたスライディングが効果的。
堀義正 SP:35.83(32)
「マラゲーニャ」♪ 黒。フリップ、アクセルとパンク、3サルコウ+2トウはなんとかこらえた。キャメルスピンの姿勢が不安定。ステップの振付はわりと良かった。
早川晃太郎 SP:38.52(31)
「ふたりでスローダンスを」♪ ブルー系。3サルコウ(回転不足)、2アクセル着氷。3トウ転倒。つなぎで入れたイナバウアーやイーグルがきれい。
辻村岳也 SP:50.03(26)
「Perhaps Love」♪ 白。3トウ+3トウ(回転不足)転倒 3サルコウ、後半2アクセルは入る。フライングキャメルスピンの出で足の下ろし方に工夫がある。つなぎのスパイラルや、伸びのあるスケーティングがいい所。
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整氷中はトイレ混雑が予想されるため、堀選手の前あたりから外へ出ていく観客がぞろぞろ。いささか残念だが、仕方ないか、、、
辻村選手はスキップしないで見てよかった
***
<G4>
6分間練習から、いきなり空気が変わる・・・
須本光希 SP:68.55(17)
「Forever Aint Enough」♪ 白。彼も膝つきポーズからスタート。3ルッツ(エッジにアテンション)+3トウ、2アクセルと入り、3フリップはなんとか抑える。
彼らしい端正なスケートが健在 スピンの各姿勢がきちんとしていて、イーグルだけでも素敵。スライディングで余韻を残すフィニッシュもまた素敵
森口澄士 SP:76.14(13)
「I'm Still Standing」♪ 黒に色とりどりの模様。まず3アクセルがバシッと決まり、3ルッツ+3トウも入って波に乗る。フライングキャメルスピンは少しふらついて減点 3フリップにもアテンションがついている。
アカデミー仕込みの足さばきの良さを見せつけながら、ノリノリでステップ。よく踊れている。手ごたえ十分の出来に、フィニッシュポーズ長めで気分良く終わった
宇野昌磨 SP:101.88(2)
マルチェッロ「オーボエ協奏曲」/ヴィヴァルディ「チェロ協奏曲ハ短調」♪ 紺がかったグレー。しなやかに動き、4フリップをびしっと決める。4トウ+2トウ、3アクセルも高いGOEをもらえる質の良さ
コーチのランビエール氏が「美しい」と感じて宇野選手に伝える動きが、宇野選手自身の自然な動きと合っているのではないだろうか。無理なく練習の成果を出すことができている。そして、やはり昌磨にはクラシックの曲が合う
強さと美しさを併せ持って、いっそう進化していく
羽生結弦 SP:111.31(1)
「序奏とロンド・カプリチオーソ」♪ 水色、同色のチョーカー。怪我の回復状況が心配されたが、心配要らなかった。。。
清塚信也さんの冴えわたるピアノの音。4サルコウ、見事 4トウ+3トウ、きっちり。3アクセル、ステップの一部のよう。
キャメル、シット、スピンの姿勢と回転の速さは他の追随を許さない。ステップの中の小さなジャンプやシット姿勢ツイズル、高速ツイズル、あらゆる動きがピアノの音と一体になって奏でる。
全て、彼の思いどおり。たった一人で練習して、たった一人でキス&クライに座って、これを成し遂げる。
フィギュアスケートの神が、羽生結弦の姿になって、そこにいた。
田中刑事 SP:84.10(10)
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」より「Paris」♪ 黒に緑や紫のパイピング。直前の羽生の演技の興奮冷めやらない、異常な空気の中でも、平常心で臨んでいた。4サルコウ、3フリップ+3トウを決めたが、アクセルが2回転になったのが惜しい 切なさと力強さの両方が感じられるステップ。ギターの音と彼の動きがよく合っていた。
山本草太 SP:93.79(4)
「イエスタデイ」♪ ダークグレーのシャツ。ゆっくりとステップを踏みながらスタート。大きなグライドから4サルコウ イーグルから3アクセル ぴんと足が伸びたキャメル姿勢が美しい。3フリップ+3トウを下りて小さくガッツポーズ。
ステップはこうするんだよ、と語るような、足元だけで素敵なステップはレベル4。当然の自己ベスト更新
<G5>
友野一希 SP:87.79(7)
「ニュー・シネマ・パラダイス」♪ 水色と青。動き出した瞬間から映画の世界に引き込む。4トウを巧く抑えて2トウをつけ、4サルコウは少しオーバーターン。3アクセルがきれいに決まった。
スピンの出方一つも表現の一部、物語を紡いでいく。少年が大人になっていく姿を見せるようなステップ。最後のスピンを見ながら、終わるのが惜しい、、、と思った。
美しい作品 それでも、わずかなミスのせいで90点を越えられない…
三宅星南 SP:90.52(6)
「アンチェインド・メロディ」♪ 白シャツ。ロマンチックな曲で伸びやかに滑り出す。4サルコウ入り、3アクセル上手く抑える。3ルッツ+3トウもばっちり キャメルスピンはあまり速くないが 一歩が大きくダイナミックで、ステップもレベル4。
久々に素晴らしい出来の彼を見た。大きくガッツポーズ、自己ベスト大幅更新
佐藤駿 SP:87.27(8)
ヴィヴァルディ「四季」より「夏」♪ 紺に金のストーン。6分間練習できれいに着氷していた4ルッツが、3回転で開いてしまった それでも4トウ+3トウで高いGOEをもらい、後半の3アクセルもしっかり、尻上がりに調子を上げていく。
全体としては悪くなかったけど、冒頭のジャンプのミスは得点には響いてしまった。
ちょっとした動きが羽生結弦に似てきたような 私の気のせいかしら
島田高志郎 SP:86.76(9)
「Giving Up」♪ 一際すらりとした体型が目立つ。4サルコウ、少しオーバーターンしたけど下りた 3ルッツ+3トウ、後半3アクセルと滑らか。一蹴りの伸びの良さ、程よく力の抜けたブルースらしい表現。歌詞としっかり連動して動いている。キャメルスピンでは体の柔らかさも見せる。
すっかり大人になったな
鍵山優真 SP:95.15(3)
「君微笑めば」マイケル・ブーブレ♪ 黒シャツに白系ベスト。また衣装を変えたようだが、ちょっと微妙 4サルコウは単独にせず3トウをつけた。4トウで珍しく転倒 3アクセルは問題なし。
多少ミスがあっても、プログラムそのものが楽しく、軽やかで明るいムードを最後まで保つ。スピンの回転速く、しゅっと止まったりふわっと跳んだりを織り込んだステップも面白い。
終わって「やっちゃった」という感じの苦笑いに、会場も まだ天真爛漫な少年
本田ルーカス剛史 SP:78.53(11)
「苦悩する地球人からのSOS」♪ 黒と紺。3アクセル頑張り、3フリップ(アテンション)、3ルッツ+3トウを下りる。スピンとステップを、今季ジュニアに出られる最終シーズンで世界ジュニア代表を狙うか。
結果、羽生結弦が2位に9点以上の差をつけてトップに立ち、宇野昌磨が2位につける。6.73点差レベル4でそろえたのは偉い。コンビネーションスピンではY字姿勢も見せた。
予定に4回転も入っているが、ジャンプは今季ジュニア課題で跳んだ。スピンは足換えとフライングが逆のようだが ジュニアグランプリファイナルに派遣予定だったが中止になったのでの3位に鍵山優真、4位山本草太との差は1.36。5位三浦佳生、6位三宅星南までが90点越え。7位友野一希、8位佐藤駿、9位島田高志郎、10位田中刑事までが80点台。11位本田ルーカス剛史、12位壷井達也。
ジュニア勢は三浦、本田、壷井に続いて14位吉岡希、16位片伊勢武。吉岡、片伊勢が上位3人に割って入るのはやや厳しいか。
決戦は、日曜日