第90回全日本フィギュアスケート選手権(2021)、男子フリー(ジャッジスコア)。
現地観戦メモから。
<G1>
鈴木零偉 SP:53.45(24) FS:105.24(21) 合計:158.69(23)
「Caravan」「Despacito」♪ 黒レースに赤。イーグルからの2アクセルをきれいに決めてスタート。手拍子に後押しされて生き生きとステップを踏んだ。スピンでふらついたがよく立て直し、頑張った!
鈴木楽人 SP:55.00(23) FS:97.85(23) 合計:152.85(24)
映画「アンタッチャブル」♪ 白シャツに黒赤ベスト。ルッツが2回転になり、ループでステップアウトなど細かいミスはあったが、慌てずに自分の得意なジャンプを跳ぶ。転倒なしで通せたのが一番かな。
山隈太一朗 SP:55.11(22) FS:115.45(18) 合計:170.56(21)
映画「ゴッドファーザー」♪ 黒、赤のストーン。3アクセル転倒、3ルッツ+2トウ頑張り、3ループが入る。後半3アクセルがダウングレードで+REP、しかし3フリップ+オイラー+2サルコウを下りた。
滑り出しから定評のある表現力を出していく。バッククロスの姿勢やピンと足が伸びているスピンもきれい。振付が豊かで楽しめた。
長谷川一輝 SP:56.86(21) FS:105.06(22) 合計:161.92(22)
「ビートルズ・コンチェルト」♪ 白にゴールド。3ルッツで傾いたがこらえて2トウをつけ、3アクセル、3フリップもなんとか耐える。ステップでツイズルとツイズルの間に小さいイナバウアーを入れたりするのが可愛い コレオでは大きなイーグルやダイナミックなバレエジャンプも見せた。
プログラムの選手紹介にある特技/趣味が難しすぎる~~~とネットで話題だそうで(東京理科大に通うバリバリ理系男子)
石塚玲雄 SP:57.06(20) FS:120.95(17) 合計:178.01(18)
「雨に唄えば」♪ 黄色ベストに赤タイ。最初からミュージカルの世界に引き込む。スケーティングも滑らか。エッジエラーとか両足着氷があるが、気にせず元気よく滑る。所作がきれいで、笑顔のコレオとステップは観客を巻き込んで作品にしていった。
杉山匠海 SP:65.34(19) FS:109.36(20) 合計:174.70(19)
「アディオス・ノニーノ」♪ 黒に紫。3アクセル、頑張って下りた。両手上げで3ルッツや3ループ+オイラー+3サルコウも(q付いたけど)。女子のように線のきれいなスパイラルとイナバウアー、足を高く上げるキャメル姿勢など、魅力的タンゴが似合う。
「あのスケーティングがきれいな岡山の子」とフィギュアファン仲間で話題になっていた。ノービス時代には吉田唄菜と組んで国際大会優勝の経験もある。今それが活きてるかな
<G2>
大島光翔 SP:65.86(18) FS:129.18(15) 合計:195.04(16)
映画「道」♪ 赤ジャケット風。かの名曲で滑る、その覚悟やよし 4ルッツ挑戦、回転不足で転倒。3アクセルはステップアウト、しかし2本目はしっかり下りて2トウをつけた。3フリップ+オイラー+3サルコウも下りる。
映画の場面そのままにショータイム、でっかいバレエジャンプなど、この曲は彼のキャラに合っている
須本光希 SP:68.55(17) FS:131.07(13) 合計:199.62(15)
「ロミオとジュリエット」♪ 白に紫をさして。きれいなイーグルから、3フリップは手をついた。きれいな3トウ、3ルッツ+2トウが入る。2アクセル+オイラー+3サルコウは滑らかで幅と流れがある。
ジャンプの難度は高くないが、全体に非常に美しい。コレオのリンク縦断イーグルの素敵なこと
片伊勢武 SP:69.32(16) FS:130.33(14) 合計:199.65(14)
映画「マスク・オブ・ゾロ」♪ 黒にゴールド。最初のアクセルでパンクみたいになってしまったが、2アクセル+3トウ、3ルッツと決まって落ち着く。後半3ルッツ+3トウ、3フリップも流れがきれい。I字スピンや両手でキャッチフットのキャメルスピンなども姿勢が美しい。
全体に仕草が優雅
櫛田一樹 SP:72.37(15) FS:114.62(19) 合計:186.99(17)
マイケル・ジャクソン・メドレー♪ 黒ジャケ風、右手に白手袋。4トウを跳ぼうとしたがパンクした模様。3ルッツは軽々と跳び、3アクセルでややつまったがなんとか+オイラー+3サルコウに繋げる。後半のアクセルのパンク、3フリップの転倒が惜しい。
MJのメドレーなら、観客もノリノリになるかと思いきや、そうでもなくて 選手本人も、ちょっと乗り切れない選曲のような気がする。
吉岡希 SP:72.94(14) FS:97.63(24) 合計:170.57(20)
ガーシュウィン「ラプソディー・イン・ブルー」♪ 白シャツにグレーのベスト。4トウはオーバーターンで2トウをつけ、4サルコウ転倒、単独の4トウも転倒。3アクセルは入った。後半3ルッツで転倒、3回で減点4は痛い
ステップはそれなりに頑張っていたが、気持ちがジャンプに行き過ぎた感じがした。
森口澄士 SP:76.14(13) FS:125.16(16) 合計:201.30(13)
「ジキル&ハイド」♪ 黒に赤や紫が入るベスト。3アクセル2本続けて転倒したが、3ループで立て直し、3フリップ+オイラー+3サルコウ、3ルッツ+3トウを決める。イーグルからの2アクセルや、イナバウアーからスライディングのコレオ。
スコアを見るとスピンでレベルが取れていないようで、、、回転数足りなかったか。ちょっと表現が難しい曲だったかも
<G3>
いきなり空気が変わる・・・
壷井達也 SP:77.31(12) FS:157.90(8) 合計:235.21(9)
ラフマニノフ「10の前奏曲 作品23ー4,5,7」♪ 薄水色。いきなり4サルコウ、決まった 3アクセル+2トウ、3アクセルと軽やか。スケーティングがするする~という感じで、力が入ってないのがいい。ジャンプに不安がない安心感。
ピアノ曲でノーブルな雰囲気を醸し出し、衒いのないオーソドックスなところが持ち味。ここへ来て覚醒した
本田ルーカス剛史 SP:78.53(11) FS:146.69(11) 合計:225.22(12)
「Blues For Klook」「The Prophet」♪ 濃紺。先輩たちへのリスペクトを感じさせる選曲 冒頭の4トウは転倒したが、3アクセル+2トウ、後半3ルッツ+3トウ、2アクセル+オイラー+3サルコウなどよく跳んだプログラム。手をだらんとしたり、その場でくるんとターンしたり、ブルースのムードもよく出している。高いバレエジャンプ、カッコいい スライディングでフィニッシュ。
この2曲はキャラに合っていたようだ。
田中刑事 SP:84.10(10) FS:148.32(9) 合計:232.42(11)
映画「セッション」♪ 茶系の半袖シャツにサスペンダー。4サルコウ2本を予定していたが、1本は3回転、もう1本は2回転に。ルッツも2回転になったが3トウをつける。後半きれいな3アクセルが入ったが、コンビネーションにしなかったので+REPで基礎点を損してしまった
ステップの身のこなしが洒脱、はっちゃけて踊るコレオで本領発揮 この表現力を活かすためにも、ジャンプを安定させたかった。
島田高志郎 SP:86.76(9) FS:146.91(10) 合計:233.67(10)
チャップリン・メドレー♪ グレーの燕尾服風。映画のフィルムが回り始める音でスタート。4トウ予定が2トウに、4サルコウはステップアウト。3アクセル+2トウ、後半3アクセル+オイラー+2サルコウと入ったのは良かった。
ステップはふわふわっと軽やかで、チャップリンらしいコミカルな動きも愛らしい。気持ちを込めたコレオ、終盤の3トウと3ルッツはステップの一部のように自然。
彼の良さは引き出せているプログラム
佐藤駿 SP:87.27(8) FS:164.86(6) 合計:252.13(7)
「オペラ座の怪人」♪ 黒ジャケに赤で模様。4ルッツ!4フリップ!4トウ+2トウ!単独4トウ!とにかく跳んだ 多少ステップアウトしても、とにかく跳ぶ。3連続にする予定の3アクセルで詰まり、なんとか1トウをつけた。3フリップの転倒でコンビネーション1本少なくなったのが、得点としては痛かったか。
スピンの出方など、ちょっとしたところも表現につなげる意識が出てきた 転倒で肩を痛めたようで、終わって挨拶のとき左手を上げなかった。大丈夫だろうか・・・
友野一希 SP:87.79(7) FS:175.88(5) 合計:263.67(5)
「ラ・ラ・ランド」♪ 青シャツ。ピアノを奏でる仕草でスタート。4トウ+2トウ、4サルコウ、さらに4トウ、決まった 曲がスローのパートで高難度のジャンプが跳べるのは偉い。3アクセルもオーバーターンでこらえて+オイラー+2サルコウに繋げ、単独もきれいに決める。
強い意欲が空回りにならずに力になる、それだけの練習を積んできたことがわかる。熱狂のコレオで会場が一体に この場で見られたことが嬉しい
「史上最強」言葉通りのフリーをやりきった
<G4>
三宅星南 SP:90.52(6) FS:162.30(7) 合計:252.82(6)
「白鳥の湖」♪ 白にゴールド。すらりとした長身に王子様のような容貌が映える。4サルコウ+2トウ、鮮やかに決まった 単独4サルコウはこらえ、3アクセル+オイラー+2サルコウ頑張る。3アクセル転倒したが、後半3ルッツ+3トウや3フリップ、3ループと力の限り跳んだ。
体もリンクも大きく使えるようになっている。曲の盛り上がる中でステップも力いっぱい、レベル4獲得。
ここまでできる人になったか、、、
三浦佳生 SP:92.81(5) FS:183.35(4) 合計:276.16(4)
「ポエタ」♪ 黒に赤ストーン。4ループ、4サルコウ、4トウ、後半4トウ+3トウ、全て着氷(4ループは減点されたが、片足で立っていた。)少々傾いてもしっかり着氷する力がある。3アクセルも2本入り、終盤に2アクセル+オイラー+3サルコウは凄い。
所作に緩急をつけ、ステップでは激しさを見せる。ポエタの熱情を見事に表現して見せた。終わって大きなガッツポーズ
世界ジュニア、てっぺん取ってこい
山本草太 SP:93.79(4) FS:146.39(12) 合計:240.18(8)
「イオ・チ・サロ」アンドレア・ボチェッリ♪ オフホワイト。冒頭の4トウ転倒、4サルコウは手をつく。何かタイミングがずれているのか、アクセルがパンク 3アクセル+オイラー+3サルコウを決めてやっと落ち着いてきた。
後半3フリップ+3トウ、3ルッツ+2トウと盛り返したが、彼本来の伸びやかさがあまり感じられない。。。リンクを半周する大きなイーグルは美しかった。
鍵山優真 SP:95.15(3) FS:197.26(2) 合計:292.41(3)
映画「グラディエーター」♪ 黒にゴールドのパッチ。4サルコウ、3ルッツ、4トウ+3トウ、3アクセル+オイラー+3サルコウ。跳ぶ。跳ぶ。跳ぶ。
後半4トウ、3フリップ+3ループ 3アクセルは少しステップアウトしたが、ジャンプのミスはそれだけ、ほぼ完璧
ステップの一歩一歩にも意味を感じて、心の底から溢れるものが体を動かしているかのよう。テレビで見るより、このプログラムの振付の意味を感じられた。
力を尽くし、心を尽くした演技
宇野昌磨 SP:101.88(2) FS:193.94(3) 合計:295.82(2)
ラヴェル「ボレロ(Boléro IV New Breath)」歌唱:岡本知高♪ 黒にゴールドのストーン。滑り出しから、場を支配する力が伝わってくる。4ループ、決まった 4サルコウ 4フリップ 3アクセルと隙がない。後半4トウで転倒、次の4トウはきれいに入ったがコンビネーションにせず+REP。3アクセル+オイラー+3フリップはきっちり。
どのジャンプも力強く、大きな存在感がある。地味にスピンも上手くなっている気がする(コーチがスピンの名手・ランビエール氏だし)。最後のステップは力を振り絞ってフィニッシュ。
成熟を感じた。
羽生結弦 SP:111.31(1) FS:211.05(1) 合計:322.36(1)
ドラマ「天と地と」♪ 空色に白布や金糸で縫い取り。「やる」と公言していた4アクセル、大きな軌道からいくものと思いきや、3アクセルを跳ぶときのように軽くステップしながら入っていって、、、
跳んだ 下りた? 両足だったか、、、判定はダウングレード。
その後が圧巻。軽々と4サルコウ、3アクセル+両手上げ2トウ、ステップの一部のように3ループ。全く余分な力が入っていない。
琴の音が美しい調べ、その音を奏でていくステップ、めりはりと滑らかさ、スピードと緩急、全てがある。レベル4でGOE最高の1.95(全員が+5)。
後半4トウ+3トウ、4トウ+オイラー+3サルコウ、さらに3アクセル。何もかもが思い通り。
ハイドロブレーディング、大きなオープンアクセル、イナバウアーのコレオから、スピードも姿勢も見惚れるばかりのスピンで締めくくる。終わって高々と手を突き上げた。
ショートプログラムは、この世のものではないものを見ているような気持ちだったが、フリーは不思議な安心感があった。彼は自分ができることを知っている。私たちも彼ができることを知っている。だって、去年できたもの。
「譲る気はない」と言った北京オリンピックへの道、その手で切り開いた。
結果、優勝は羽生結弦、2位宇野昌磨、3位鍵山優真。4位三浦佳生、5位友野一希、6位三宅星南。僅差の7位に佐藤駿、山本草太は8位。9位壷井達也、10位島田高志郎、11位田中刑事、12位本田ルーカス剛史。
この結果を受けて、発表された代表選手についてはこちらで。
4日間競技を会場で見て、今までテレビや配信では、競技のほんの一部しか見えていなかったと思った。今後も機会があれば、できるだけ会場で見たいと思う。
選手、審判、スタッフ、そして観客の皆さん、お疲れさまでした