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李國祥「循環再唱」(香港)

2005年08月30日 05時47分51秒 | CD紹介

 英文タイトルが「RECYCLE」。タイトルどおり、昔のヒット曲のカバーアルバムだ。3つの矢印が三角を作る、リサイクルマークまで付いている。曲もリサイクルだけど、ほぼ引退状態だった彼自身もリサイクル?!
 が、安易な作りではない。吟味して曲を選び、時間をかけて録音に臨んだように感じられる。昔ほど声が伸びていないけれど、彼本来の魅力である低音を丁寧に聞かせている。最後のアルバムから10年近く経っているが、ボーカルは成熟した部分が大きいかもしれない。
 先行オンエアの「為什麼」は五輪真弓の作曲で、続く「一首獨唱的歌」は中村雅俊の「ふれあい」。香港ポップスの名曲の多くが、日本のポップスのカバーだった時代があることの証しといってもいい。昔の曲は歌詞が美しく、しみじみする。
 デビュー当時から彼をバックアップしてきた倫永亮のピアノで静かに歌う「願」とドラマチックに歌い上げる「内心戯」。今、ピアノだけでこれだけちゃんと歌える人はあまりいないかも・・・
 昨年亡くなった黄霑詞曲「忘記他」は、スパニッシュギターにカスタネットで、麗君のしっとりした歌い方とはまた違った味わいだ。王菲の「如風」葉[イ菁]文の「零時十分」は林振強作詞で、これも数々の名曲を残した作詞家の仕事を噛みしめる。60年代のナイトクラブを舞台にした映画主題歌「我和春天有個約會」はシンプルなバンドのライブ感覚で、映画の場面が思い出される。最後の3曲は北京語で、ちょっとアップテンポにした羅大佑「童年」、切ない女心を歌って意外と違和感がない辛曉「味道」も聞ける。
 プロデュースは陳澤忠。昔の李國祥の作品でもよく一緒にやった人だけど、はっきり言って、最近この人の名前を聞くことが少なかった。けれど、昔以上に、今の李國祥の良さを理解して引き出したと思う。同時に、陳澤忠の音楽を体現できる歌手が李國祥なのかな、という気がする。(最近仕事が少ないのは、そういう歌手が少ないから、かも)
 音数ひかえめ、衣装もシンプル、凝らないパッケージとコストをかけてない感じだが安物っぽくはない。そのまま大陸で発行するのか、ISRCナンバー(大陸での曲の登録番号のようなもの)も各曲に振ってある。レーベルはおそらく陳澤忠グループのもの。ディストリビューションだけ東亞唱片。ベテランが個人レーベルからアルバムを出すのは、最近では李樂詩の例もある。コストをかけずにうまくやれば、何万枚も売れなくても採算が取れる方法がありそうだ。大手がばっちり広告費をかけて売り出しても元が取れるとは限らない昨今、実力のある人がプレッシャーを受けずに好きな音楽を出してそこそこ売れたら、悪くない。
 引退後の李國祥は、福祉施設でリハビリ関係の仕事をしていたと聞いている。これからどんなスタンスで歌っていくつもりなのか(そもそも完全に復帰するつもりなのか?)わからないけど、今の彼は、歌うことを大切に思っている、と思う。空白の時間は無駄ではなかった。
循環再唱 @YesAsia.com

コメント (2)
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