語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【地方分権】ポスト成長期は地域の時代 ~「緑の福祉国家」~

2014年03月08日 | 医療・保健・福祉・介護
【地方分権】ポスト成長期は地域の時代 ~「緑の福祉国家」~

 (1)ここ数年、若い世代の間で「ローカル」なものや地域再生といったテーマへの関心が明らかに高まっている。
 海外留学をへて地域の活動に向かう若者も珍しくない。
 若い世代のこうした意識や行動の変化は、私たちの生きる時代の構造変化を反映したものだ。

 (2)「拡大・成長」の時代(高度成長期がその象徴)においては、工業化というベクトルを中心に世の中全体が一つの方向に進むので、「進んでいる―遅れている」という時間軸に沿った一元的な物差しで各地域をとらえていた。
 <例>東京は進んでいる、米国は進んでいる、etc.。

 (3)「ポスト成長」の時代(人口減少を含む)においては、(2)のような時間軸自体が背景に退き、むしろ各地域のもつ固有の特徴や価値に、人々の関心が向かうようになる。

 (4)(2)の拡大・成長の時代は、中央集権化が強固に進む時代でもあった。
 なぜなら集権的なシステムのほうが経済にとってより効果的だったからだ。
 ここで「経済の空間的ユニット」という視点がポイントになる。つまり工業化の時代においては、鉄道の敷設にしても、道路建設や工場の配置にしても、到底ひとつの地域では完結せず、国レベルのプランニングが重要だ。おのずとそれは、「中央」での政策決定を要請する。

 (5)(3)の、現在のようなポスト工業化の成熟時代においては、人々の主な関心は福祉や環境、まちづくりやコミュニティーといった領域となっていく。これらは、本来的に「ローカル」な性格のものだ。
 つまり、経済構造の変化に伴って、問題解決の空間的ユニットがシフトしているのだ。
 ここにローカリゼーションないし分権化の基本的根拠がある。

 (6)他方、各地域は互いに孤立して存在するのではない。特に東京などの大都市は、地方都市や農村部から食料やエネルギーを安価に調達している。そこには、ある種の「不等価交換」が存在する。よって、地域間の「再分配」の仕組みが同時に不可欠だ(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度や農業支援を含む)。
 ローカルな経済循環から出発し、再分配の仕組みを重層的に組み込みつつ、ナショナル、グローバルへと積み上げていく。・・・・そうした社会の構想(「緑の福祉国家」)が、いま求められているのではないか。

□広井良典(千葉大教授)「ポスト成長期は地域の時代 ~(未来への発想委員会)地方分権を問い直す:上~
(朝日デジタル 2014年3月7日05時00分)

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