語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】司法の役割を果たした福井地裁判決

2014年06月19日 | 震災・原発事故
 (1)日本国憲法は、立法・司法・行政の三権が分立した民主主義国家体制を定めている。
 三権分立制度の狙いは、国民・市民の人権、自由を守ることにある。
 三権のうち司法の主要な役割は、憲法が保障する国民・市民の基本的人権を守る、という視点から立法と行政をチェックするところにある。

 (2)5月21日の福井地裁判決は、まさに司法本来の役割を果たした判決だ。判決は、関西電力大飯原発3・4号機運転差し止めを命じた。
 <生存を基礎とする人格権が公法、私法を問わず、すべての法分野において、最高の価値を持つとされている以上、本件訴訟においてもよって立つべき解釈上の指針である>
 <個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、各人の人格に本質的なものであって、その総体が人格権であるということができる。人格権は憲法上の権利であり(13条、15条)、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、我が国の法制下においては、これを超える価値を見出すことはできない。したがって、この人格権とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは、人格権そのものに基づいて侵害行為の差し止めを請求できることになる>
 同地裁判決は、人格権重視の視点から、以下のように断じた。
 <被告(関西電力)は本件原発の稼働が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている>

 (3)福島原発事故以前の原発訴訟で住民側を勝訴させたのは、
  (a)高速増殖炉もんじゅの設置許可を無効とした名古屋高裁金沢支部判決(2003年)
  (b)北陸電力志賀原発2号機の運転差し止めを命じた金沢地裁判決(2006年)
 のみだった。そして、(a)および(b)のいずれも上訴審で逆転敗訴となっている。

 (4)もし、最高裁が1件でも住民側勝訴の判決を出していたら、福島原発事故は防げたかもしれないのだ。
 この意味で、福島原発事故に関し、司法の責任は大変重い。
 福島原発事故を経験してしまった現在、全ての裁判官は、司法本来の役割を果たすべきだ、ということを強く肝に銘ずべきだ。 
  
□宇都宮健児「司法の役割を果たした福井地裁判決 ~黒風白雨 28~」(「週刊金曜日」2014年6月13日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【佐藤優】独裁者の「再選」... | トップ | 【食】遺伝子組み換え作物規... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
「世界が輸入禁止にしている食品」を食べさせられている私たち (「世界が輸入禁止にしている食品」を食べさせられている私たち)
2014-06-21 04:11:06
「世界が輸入禁止にしている食品」を食べさせられている私たち
http://www.asyura2.com/12/genpatu27/msg/295.html
http://kingo999.blog.fc2.com/blog-entry-854.html
農林水産省「諸外国・地域の規制措置(平成24年8月27日現在)」より、輸入禁止の食材を抽出しました。イラスト・デザイン: 水谷ゆたか PDFにしています。
ダウンロードはこちらから。 --> 世界が輸入禁止にしている日本の食材
http://kingo999.web.fc2.com/PDF/Ban_on_import.pdf
【韓国】
(福島):ほうれんそう、かきな等、梅、ゆず、くり、キウイフルーツ、米、原乳、きのこ類、たけのこ、青わらび、たらのめ、くさそてつ、こしあぶら、ぜんまい、わさび、わらび、コウナゴ、ヤマメ、ウグイ、アユ、イワナ、コイ、フナ、アイナメ、アカガレイ、アカシタビラメ、イシガレイ、ウスメバル、ウミタナゴ、ムシガレイ、キツネメバル、クロウシノシタ、クロソイ、クロダイ、ケムシカジカ、コモンカスベ、サクラマス、シロメバル、スケトウダラ、スズキ、ニベ、ヌマガレイ、ババガレイ、ヒガンフグ、ヒラメ、ホウボウ、ホシガレイ、マアナゴ、マガレイ、マコガレイ、マゴチ、マダラ、ムラソイ、メイタガレイ、ビスノガイ、キタムラサキウニ、サブロウ、エゾイソアイナメ、マツカワ、ナガヅカ、ホシザメ、ウナギ、飼料
(群馬):ほうれんそう、かきな、茶、ヤマメ、イワナ、飼料
(栃木):ほうれんそう、かきな、きのこ類、たけのこ、くさそてつ、さんしょう、こしあぶら、茶、たらのめ、ぜんまい、わらび、ウグイ、イワナ、飼料
(茨城):ほうれんそう、かきな等、きのこ類、たけのこ、こしあぶら、茶、原乳、メバル、スズキ、ニベ、ヒラメ、アメリカナマズ、フナ、ウナギ、コモンカスベ、イシガレイ、飼料
(宮城):きのこ類、たけのこ、くさそてつ、こしあぶら、ぜんまい、スズキ、ウグイ、ヤマメ、マダラ、ヒガンフグ、イワナ、ヒラメ、クロダイ
(千葉):ほうれんそう、かきな等、きのこ類、たけのこ、茶、ほうれんそう、かきな等は3市町(旭市、香取市、多古町)のみが対象。
(神奈川):茶
(岩手):きのこ類、こしあぶら、ぜんまい、わらび、せり、たけのこ、マダラ、イワナ、ウグイ

【中国】
(福島、群馬、栃木、茨城、宮城、新潟、長野、埼玉、東京、千葉(10都県)): 全ての食品、飼料

【ブルネイ】
(福島、東京、埼玉、栃木、群馬、茨城、千葉、神奈川(8都県)): 全ての食品

【ニューカレドニア】
(福島、群馬、栃木、茨城、宮城、山形、新潟、長野、山梨、埼玉、東京、千葉(12都県)): 全ての食品、飼料

【クウェート】
(47都道府県): 全ての食品

【サウジアラビア】
(福島、群馬、栃木、茨城、宮城、山形、新潟、長野、山梨、埼玉、東京、千葉(12都県)): 全ての食品

【レバノン】
(福島、群馬、栃木、茨城、千葉、神奈川(6県)): 左記県における出荷制限品目

【シンガポール】
(福島、群馬、栃木、茨城(4県)): 食肉、牛乳・乳製品、野菜・果実とその加工品、水産物

【香港】
(福島、群馬、栃木、茨城、千葉(5県)): 野菜・果実、牛乳、乳飲料、粉ミルク

【マカオ】
(福島): 全ての食品
(千葉、栃木、茨城、群馬、宮城、新潟、長野、埼玉、東京(9都県)): 野菜・果物、乳製品

【台湾】
(福島、群馬、栃木、茨城、千葉(5県)): 全ての食品

【フィリピン】
(福島):ヤマメ、コウナゴ、ウグイ、アユ

【米国】
(福島): 米、ほうれんそう、かきな、原乳、きのこ、イカナゴの稚魚、アユ、ウグイ、ヤマメ、ゆず、キウィフルーツ、牛肉製品、クマ肉製品、イノシシ肉製品、畑わさび、ふきのとう、わらび、こしあぶら、ぜんまい、たらのめ等
(栃木): 茶、牛肉製品、シカ肉製品、イノシシ肉製品、クリタケ、ナメコ、タケノコ、シイタケ、さんしょう、わらび、こしあぶら、ぜんまい、たらのめ
(岩手): 牛肉製品、タケノコ、シイタケ、せり、わらび、こしあぶら、ぜんまい、マダラ、ウグイ、イワナ
(宮城): 牛肉製品、クマ肉製品、シイタケ、タケノコ、こしあぶら、ぜんまい、ヒガンフグ、スズキ、ヒラメ、マダラ、ウグイ、イワナ、ヤマメ
(茨城): 茶、シイタケ、イノシシ肉製品、タケノコ、こしあぶら、ウナギ、シロメバル、ニベ、アメリカナマズ、スズキ、ヒラメ、ギンブナ
(千葉): 茶、シイタケ、タケノコ
(群馬): 茶、ウグイ、ヤマメ
(神奈川):茶

【ロシア】
(福島、群馬、栃木、茨城、東京、千葉(6都県)): 全ての食品

【ギニア】
(47都道府県): 牛乳及び派生品、魚類その他の海産物


★F1トップチーム「放射能汚染された日本の食材は食べない。オーストラリアから直送」
http://blog.goo.ne.jp/jpnx05/e/7771fbf3bbf8e4cb3f3f86b25cc655ea
2014-01-10 01:05:15 | 日本の放射能汚染を恐れるトップチーム
http://www.topnews.jp/2013/10/13/news/f1/97835.html より
2013年10月13日(日)
早ければ、鈴鹿で4年連続でのF1タイトル獲得を決めるかもしれないセバスチャン・ベッテル(レッドブル)だが、そのためには何事にも抜かりがないようだ。ドイツの『Bild(ビルト)』紙が報じたところによれば、2年前に福島で起きた原発事故による放射性物質が混入することを恐れるレッドブルは、魚や食材をオーストラリアから仕入れて鈴鹿に直送させる手配をしたという。『Bild(ビルト)』はさらに、メルセデスAMGも今週末のF1日本GPにおいては特別な注意を払っていると報じ、メルセデスAMGの広報担当者の「我々はまったくリスクを冒していないよ」とのコメントを紹介している。

★福島県三春町の小中学生、【福島産野菜を食べているのはわずか2割】、コメは6割(6/19 福島民報)
http://www.asyura2.com/14/genpatu38/msg/811.html
http://radiation7.blog.fc2.com/blog-entry-3854.html
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

震災・原発事故」カテゴリの最新記事