語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【経済】規制法が必要な業界 ~フランチャイズ商法の光と影~

2014年12月07日 | 社会
 今日のフランチャイズの原型は、1920~30年代に興ったFCビジネス(アイスクリームとレストランの「ハワード・ジョンソン」など)にあるとされる。
 その後、1950年代にケンタッキーフライドチキン、日本では1960年代の不二家などが最初とされ、1970年代にコンビニや外食産業の展開で本格化する。

 フランチャイズとは、パッケージされたイメージブランドによる商品・商号での販売を画一的に全国展開する事業形態のことだ。本部が加盟店にそのノウハウを提供して営業を行わせ、加盟店が本部に指導料(ロイヤリティ/チャージ)を払う契約を結ぶ。
 フランチャイズの業態はさまざまだ。コンビニ(セブン-イレブンなど)、各種小売店(ヤマダ電機、マツモトキヨシ、TSUTAYA、ブックオフなど)、飲食店(マクドナルド、ドトールコーヒー、養老乃瀧、幸楽苑など)、清掃業(ダスキンなど)・・・・。

 FCチェーン店舗数は、全国の小売業者の2割超(252,500店)、売上高は23兆4,700億円。うち52,902店のコンビニの売上が9兆6,000億円に及ぶ(2013年度)。
 コンビニ店舗数は、1994年に郵便局を抜き、2008年にはガソリンスタンドを抜き、2009年に年間販売額が百貨店を超えた。以後もその差は開きつつある。

 フランチャイズの問題点は、本部からの規制が厳しいコンビニに集約されている。フランチャイズそのものが蔓延りすぎているのが問題。庶民の収入が低くて物が売れないから自前もスーパーも儲からないのだが、コンビニだけ収益をあげているのは、巧妙な搾取が行われているからだ。
 巧妙な搾取とは何か。
 加盟店の実態は契約にあるような「独立事業者」ではなく、本部の支配下にあり、従業員のように使われている。労働契約を締結していれば労働基準法に反した就労状態になる状況を正当化するのに使われているのが「フランチャイズ」という仕組みだ。従業員と同じ扱いにするなら本来守るべき労働基準法などさまざまな労働法を、その仕組みの中で回避しているから儲かるに決まっている。
 本来は従業員(労働者)として雇い、「24時間営業」の店舗経営と販売をさせるべきところ、「独立事業者」と称して契約することで、残業時間代や各種保険などの本部負担を回避している。だから、儲かるのだ。
 このことは、「個人を加盟者としるフランチャイズ」という業態そのものが加盟者の無償労働を前提としているので、労働法を脱法した搾取の仕組みであることを意味する。

 フランチャイズは、三段階で本部が儲かる仕組みを持っている。
 (1)最初の契約締結段階。研修、店舗建設や内装、初期商品購入義務などで高い金額を設定して本部が儲かる。
 (2)商品販売段階。バイイング・パワー(販売力)を使ってメーカーや物流業者に大幅な仕入れ価格などの譲歩を迫るのに加盟店には高く仕入れさせるので本部は儲かる。コンビニの場合、さらに高率のロイヤリティをとり本部が儲かる。
 (3)店舗を辞めるときに高額の違約金をとるから儲かる。

 では、本部はリスクを負うのか。
 「独立事業者」として出店させ、赤字でも初期投資回収のため10年、15年の長期契約で縛りつけ、ほとんどの出店リスクを回避している。自前で出店すると、赤字になって撤退する損失をすべて本部が被るからだ。
 要するに、本部は加盟者の労働力を利用し、過去・現在・未来の労働を搾取し、しゃぶり尽くすことができる。経営リスクを負うことなく、店舗を展開することができる。しかも、諸事情でやめる場合は、高額な違約金を請求する。
 「儲けは本部へ、リスクは加盟店へ」
 本部だけが儲かる不平等契約なのだ。

 問題の多いフランチャイズ契約だが、日本にはそれを取り締まる法律が存在しない。
 米国では州ごとにフランチャイズ関係法があり、契約の入口と契約後の両方が規制される。韓国では、近隣出店(ドミナント)を規制するために距離制限(原則250m)を設け、加盟店者との団体交渉義務もある。
 日本の中小小売商業振興法(1973年に制定)では、フランチャイズ本部が「特定連鎖化事業」に該当する場合は、契約締結前に一定の情報を開示しなければならない、と定めている。しかし、開示項目が限定的で、しかも商品の販売を伴わないサービス業のフランチャイズには適用されない。実効的な法規制とはとうてい言いがたい。

  「優越的地位の濫用」や「再販売価格の拘束」などを規制する独占禁止法にも抵触する問題を多々含むため、公正取引委員会は実態調査をした上で「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」と題する文書を発表した。
 その「フランチャイズ・ガイドライン」(2011年6月23日付けが最新版)では、十分な情報開示」の必要性を説き、具体的な開示事項を示しているが、あくまでガイドラインにとどまるという限界がある。

□片岡伸行「23兆円産業!! この業界には規制法が必要だ ~フランチャイズ商法の光と影~」(「週刊金曜日」2014年11月28日号)
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