(1)仏アレバ社は、3・11で、日本へのMOX燃料(プルトニウムとウランの混合酸化物)輸送を中断していた。
福島第一原発事故後初めて、6月下旬に【注】、高浜原発3号機(関西電力)に、アレバ社が製造したMOX燃料を運び込むことになった。
高浜原発は稼働していない。関西電力は、原発新規制基準策定(7月予定)に合わせて高浜原発再稼働審査を原子力規制委員会に申請する予定だが、再稼働の見込みは立っていない。
にも拘わらず輸送が実施された背後に、安倍晋三内閣の原発推進政策に便乗しようとする仏政府の思惑がある。
(2)このほど来日したオランド・仏大統領は、安部首相との間で、「原子力分野での協力強化」をうたった共同声明に調印した。
共同声明には、「核燃料サイクルのパートナーシップ深化」と称する青森県六ヶ所村の再処理施設創業開始、および「使用済み燃料の再利用」を盛り込んだ。アレバ社の貴重な収入源となっているMOX燃料の販売を継続したい仏側の希望を反映した形だ。
一方、原発輸出を「成長戦略」に取り込みたい安部首相は、三菱重工がアレバ社とともに「開発し、トルコ政府が建設に合意した原子炉「アトメア1」の今後の売り込みを期待している。2011年度に3千億円の損失を出して以降、収益悪化が止まらないアレバ社を抱える仏側も同じ期待を持っている、とされる。
(3)核燃料サイクルは、日本で破綻している。そこからアレバ社がどれだけ利益を引き出せるか、疑問。
「アトメア1」の、黒海に臨む建設予定地では住民の反対運動が起きている。完成できるのか、不確定要素が残る。
まず、福島第一原発事故の収拾に「協力」し合うのが筋だ。
【注】6月27日頃。輸送船2隻の仏国シェルブール港出発は4月17日(日本時間18日)。輸送量10トン以上。なお、関電は、2014年秋頃から高浜第3、第4号機でMOX燃料を使用することを前提に家庭向け電気料金の原価を算定していることが明らかになっている。【2013年6月18日付け日本海新聞】
□渡部睦美(編集部)「仏ア社が高浜原発にMOX ~仏オランド大統領・安部首相の原子力協力」(「週刊金曜日」2013年6月14日号)
*
(1)安倍晋三・首相は、4月28日から5月4日にかけて、ロシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコを歴訪した。
トルコでは、原発4基の建設を三菱重工を中心とする企業連合が受注することが確実になった。世界有数の規模で、事業費は2兆円を超える見込み。3・11以来、初の原発輸出だ。
UAEでは原子力協定に署名し、サウジ、帰国後にはインドと、原子力協定の競技を始める。同協定は、原子力関連部品を輸出するのに必要だ。
6月7日には、来日したオランド・仏大統領との間で、日本での核燃料サイクル、原発の共同開発、輸出推進での協力を確認。日本原燃社長と仏アレバ社CEOとが協力強化の覚書に署名した。トルコでは、アレバ社と三菱重工との合弁会社が開発した原発が建設される見込みだ。
(2)トルコでの原発建設には懸念材料がある。
トルコは、マグニチュード7級の大地震にたびたび襲われてきた。1999年8月の地震では、死者が1万人を超えた。
その状況下で、日本側が、設備の維持管理をはじめ原発運転のノウハウを初歩からトルコ側に教え込まなければならない。
事故が起きた時の責任を負わされる可能性があるのははっきりしている。【飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長】
事実、6月7日、蒸気発生器の拝観が破損して昨年から止まっていた米カルフォニア州の原発を廃炉にすると発表された件では、運営側は製造した三菱重工に損害賠償を請求する。
さらに、トルコとの交渉では、最終処分場問題にはあえて触れない、と事前に申し合わせていた。「核のゴミ」問題を曖昧にした。【経産省関係者】
(3)6月5日に公表された成長戦略第3弾には、「原発再稼働」に<政府一丸となって最大限取り組む>と盛り込まれている。
だが、危険な原発セールスを続ける安部政権には、成長戦略の実績づくりとは別の狙いがある。「もんじゅ」を含む核燃料サイクルの推進、そして日本の原発再稼働の切り札にしたい、という思惑が隠されている。【古賀茂明・元経産官僚】
民主党政権にかげりが見えていた昨年5月25日、細野豪志・原発担当相(当時)の私的諮問機関(遠藤哲也・元原子力委員会委員長代理ら「原子力ムラ」の重鎮らで構成される)が中間報告「核燃料サイクルの検証と改革」をまとめていた。この内部文書(通称「細野ペーパー」)いわく、<六ヶ所再処理工場を利用した他国の使用済燃料の処理・返還の可能性を含め、我が国買う根尿サイクル全体の更なる「国際化」を進めることが視野に入ってくる>。
日本が「世界貢献」をうたい文句に、新興国で出た「核のゴミ」を一手に集めて再処理をして戻す。それを果たすのに「もんじゅ」の建設続行を含め、核燃料サイクルを大規模に展開しなければならない。・・・・こういう理屈を経産官僚と「原子力ムラ」がひねり出した。【古賀茂明】
(4)「再処理」が原発セールスの「売り」となっているふしがある。
日本の再処理は日米の原子力協定で認められたものだが、この協定は2018年7月に切れる。「協定が切れる前に再処理の権利を手放したら、二度と戻ってこなくなる」と、「原子力ムラ」の有力者が自民党に対して熱心にロビー活動を行っていた。
再処理の前提は原発が動いていることだ。核燃料サイクルが「売り」ということは、国内の原発再稼働を前提としている。
原発を売り込む一方で、使用済み核燃料については「核不拡散」の美名のもと、日本で再処理を引き受ける目論みともとれる。
だが、「六ヶ所村」は完成予定の今年10月は危ぶまれているし、「もんじゅ」に至っては運転再開の準備作業すら認められていない。
□本誌取材班「安部首相 原発セールスの危険な舞台裏」(「週刊朝日」2013年6月21日号)
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福島第一原発事故後初めて、6月下旬に【注】、高浜原発3号機(関西電力)に、アレバ社が製造したMOX燃料を運び込むことになった。
高浜原発は稼働していない。関西電力は、原発新規制基準策定(7月予定)に合わせて高浜原発再稼働審査を原子力規制委員会に申請する予定だが、再稼働の見込みは立っていない。
にも拘わらず輸送が実施された背後に、安倍晋三内閣の原発推進政策に便乗しようとする仏政府の思惑がある。
(2)このほど来日したオランド・仏大統領は、安部首相との間で、「原子力分野での協力強化」をうたった共同声明に調印した。
共同声明には、「核燃料サイクルのパートナーシップ深化」と称する青森県六ヶ所村の再処理施設創業開始、および「使用済み燃料の再利用」を盛り込んだ。アレバ社の貴重な収入源となっているMOX燃料の販売を継続したい仏側の希望を反映した形だ。
一方、原発輸出を「成長戦略」に取り込みたい安部首相は、三菱重工がアレバ社とともに「開発し、トルコ政府が建設に合意した原子炉「アトメア1」の今後の売り込みを期待している。2011年度に3千億円の損失を出して以降、収益悪化が止まらないアレバ社を抱える仏側も同じ期待を持っている、とされる。
(3)核燃料サイクルは、日本で破綻している。そこからアレバ社がどれだけ利益を引き出せるか、疑問。
「アトメア1」の、黒海に臨む建設予定地では住民の反対運動が起きている。完成できるのか、不確定要素が残る。
まず、福島第一原発事故の収拾に「協力」し合うのが筋だ。
【注】6月27日頃。輸送船2隻の仏国シェルブール港出発は4月17日(日本時間18日)。輸送量10トン以上。なお、関電は、2014年秋頃から高浜第3、第4号機でMOX燃料を使用することを前提に家庭向け電気料金の原価を算定していることが明らかになっている。【2013年6月18日付け日本海新聞】
□渡部睦美(編集部)「仏ア社が高浜原発にMOX ~仏オランド大統領・安部首相の原子力協力」(「週刊金曜日」2013年6月14日号)
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(1)安倍晋三・首相は、4月28日から5月4日にかけて、ロシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコを歴訪した。
トルコでは、原発4基の建設を三菱重工を中心とする企業連合が受注することが確実になった。世界有数の規模で、事業費は2兆円を超える見込み。3・11以来、初の原発輸出だ。
UAEでは原子力協定に署名し、サウジ、帰国後にはインドと、原子力協定の競技を始める。同協定は、原子力関連部品を輸出するのに必要だ。
6月7日には、来日したオランド・仏大統領との間で、日本での核燃料サイクル、原発の共同開発、輸出推進での協力を確認。日本原燃社長と仏アレバ社CEOとが協力強化の覚書に署名した。トルコでは、アレバ社と三菱重工との合弁会社が開発した原発が建設される見込みだ。
(2)トルコでの原発建設には懸念材料がある。
トルコは、マグニチュード7級の大地震にたびたび襲われてきた。1999年8月の地震では、死者が1万人を超えた。
その状況下で、日本側が、設備の維持管理をはじめ原発運転のノウハウを初歩からトルコ側に教え込まなければならない。
事故が起きた時の責任を負わされる可能性があるのははっきりしている。【飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長】
事実、6月7日、蒸気発生器の拝観が破損して昨年から止まっていた米カルフォニア州の原発を廃炉にすると発表された件では、運営側は製造した三菱重工に損害賠償を請求する。
さらに、トルコとの交渉では、最終処分場問題にはあえて触れない、と事前に申し合わせていた。「核のゴミ」問題を曖昧にした。【経産省関係者】
(3)6月5日に公表された成長戦略第3弾には、「原発再稼働」に<政府一丸となって最大限取り組む>と盛り込まれている。
だが、危険な原発セールスを続ける安部政権には、成長戦略の実績づくりとは別の狙いがある。「もんじゅ」を含む核燃料サイクルの推進、そして日本の原発再稼働の切り札にしたい、という思惑が隠されている。【古賀茂明・元経産官僚】
民主党政権にかげりが見えていた昨年5月25日、細野豪志・原発担当相(当時)の私的諮問機関(遠藤哲也・元原子力委員会委員長代理ら「原子力ムラ」の重鎮らで構成される)が中間報告「核燃料サイクルの検証と改革」をまとめていた。この内部文書(通称「細野ペーパー」)いわく、<六ヶ所再処理工場を利用した他国の使用済燃料の処理・返還の可能性を含め、我が国買う根尿サイクル全体の更なる「国際化」を進めることが視野に入ってくる>。
日本が「世界貢献」をうたい文句に、新興国で出た「核のゴミ」を一手に集めて再処理をして戻す。それを果たすのに「もんじゅ」の建設続行を含め、核燃料サイクルを大規模に展開しなければならない。・・・・こういう理屈を経産官僚と「原子力ムラ」がひねり出した。【古賀茂明】
(4)「再処理」が原発セールスの「売り」となっているふしがある。
日本の再処理は日米の原子力協定で認められたものだが、この協定は2018年7月に切れる。「協定が切れる前に再処理の権利を手放したら、二度と戻ってこなくなる」と、「原子力ムラ」の有力者が自民党に対して熱心にロビー活動を行っていた。
再処理の前提は原発が動いていることだ。核燃料サイクルが「売り」ということは、国内の原発再稼働を前提としている。
原発を売り込む一方で、使用済み核燃料については「核不拡散」の美名のもと、日本で再処理を引き受ける目論みともとれる。
だが、「六ヶ所村」は完成予定の今年10月は危ぶまれているし、「もんじゅ」に至っては運転再開の準備作業すら認められていない。
□本誌取材班「安部首相 原発セールスの危険な舞台裏」(「週刊朝日」2013年6月21日号)
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