語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【空港】民営化元年の今年 ~地方空港は赤字経営だらけ~

2016年02月07日 | 社会
 (1)格安航空(LCC)の台頭に加え、予想以上の原油安のおかげで、世界の航空界が勢いづいている。
 日本では、経営破綻後、再生されたJALが史上最高益を叩き出した。ANAはJALを抜いてトップカンパニーの座を射止めた。
 かくのごとく景気のよい航空界では、今年、空港民営化の幕が開く。

 (2)空港民営化の第一弾は、仙台空港(宮城県)だ。
 東日本大震災(2011年)では、滑走路に津波が押し寄せた空港だ。その仙台空港が2016年7月1日、全国で初めて国管理空港から完全民営化空港に衣更えする。震災復興と同時に、赤字にあえぐ日本の地方空港再生のモデルケースにすべく、安倍政権が推し進めてきた空港民営化の目玉政策だ。
 当初、空港経営に手を挙げた企業は、
   ①三菱地所・ANA
   ②三菱商事・楽天
   ③イオン・熊谷組
   ④東急電鉄・東急不動産
の4企業グループだったが、うち④が勝ち残り、東急電鉄を中心に7社で特定目的会社「仙台国際空港」を設立。今夏以降、滑走路から管制、ターミナルビルまでを一体経営することになる。

 (3)空港の民営化は、航空先進国の英国から始まった。ロンドンのヒースロー空港に、シャルル・ドゴール空港(仏)、シドニー空港(豪)が続いた。
 成功例として挙げられるヒースロー空港では、ガトウィック空港など周辺7空港を一括して経営。欧州の空の玄関として機能し、周辺空港はLCCを呼び込んで、就航便が急増した。1986年に株式会社化され、翌1987年には上場を果たした。

 (4)一方、97もある日本の空港は、羽田や伊丹などを除けば、ほとんどが赤字経営だ。
 そこで、英国のように民営化し、企業経営のノウハウを取り入れれば黒字転換できるのではないか、とばかりに昨今、民営化論議が盛んに行われてきた。

 (5)従来の空港は、滑走路や格納庫などの空港本体の運営と、ターミナルビルの経営が切り離されてきた。ターミナルは自治体や第三セクターが運営し、空港運営を国交省の役人が担ってきた。
 だが、地方空港は就航便が少なく、着陸料収入だけでは滑走路のメインテナンスや管制費用のコストを賄えない。
 そこで、ターミナルビルにテナントをたくさん入れ、その賃料で空港本体のコストを出そう、というのが民営化政策の発想だ。
 
 (6)民営化政策第一弾の仙台空港は、「東北のグローバルゲートウェイ」を目指すと意気盛んだ。
 が、果たしてうまくいくか。
 ヒースロー空港などで民営化が成功したのは、立地条件が抜群だからだ。欧州の一流ブランドショップがターミナルビルのテナントに入り、旅行客でなくても買い物や遊びに空港へやってくる。
 そんな条件がそろう日本の地方空港は、ほとんど皆無だ。
 仙台空港ではLCCを呼び込み、就航便を増やすことはできるが、それだけで経営は成り立たない。

 (7)空港運営権売却といえば、仙台に先駆け、関空と伊丹空港の一体経営の権利を2015年12月、オリックスを含む数社が購入した。2兆円を超える高い買い物だった。
 で、赤字の関空をどう建て直すか、頭を捻った結果浮上したのが、周辺地域のカジノ構想だ。
 カジノくらいやらないと地方空港の赤字は埋まらない、ということか。 

□森功「今年は空港民営化元年。赤字経営だらけの地方空港は変われるか? ~ジャーナリストの目第281回~」(「週刊現代」2016年1月30日号)
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 【参考】
【神戸】希望の星から転落した神戸空港 ~埋立開発行政の破綻③~




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