語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【日本への遺言】官僚が生んだ「3Y社会」 ~欲なし、夢なし、やる気なし~

2016年08月12日 | 批評・思想
 <いまの世の中で「危ない!」と思うのは、2020年の東京五輪の後に、何の見通しもないことです。
 有力な「次の総理候補」もいないし、政権交代の可能性のある有力政党もない。五輪の次の大イベント計画もなければ、「自分が日々使いたい」と思える新技術・新事業もない。こんなことは、戦後の日本ではなかったでしょう。
 その一番の原因は日本が「低欲社会」になったことです。「欲なし、夢なし、やる気なし」の“3Yなし”状態に陥っています。
 では、どうしてこんな世の中になったのか。私は、戦後日本を創ってきた「官僚主導」が築いた「人生の規格化」の結果だと思います。
 今の日本は、官僚の示した通りの人生を従順に歩めば、福祉でも税制でも一番有利に扱われる社会です。
 日本人は生まれるとすぐ託児所や保育園に入り、小中高大と果断なく進むべし。浪人はマイナス。卒業後は直ちに就業、間を置くとニート、つまり“不良”にされてしまう。
 就業すると、まず蓄財。お金を貯めてから結婚。その後に出産。子供が生まれたらローンを組んで住宅を買え。このためには小住宅を土地の安い郊外に建てろ。子供に一部屋ずつ与えられる多部屋にしろ。
 住宅ローンの返済が終わる頃にはもう中高年。あとは年金を積んで老後に備えよ。年金は必ず官僚に支払って運営してもらえ。老後は子供に頼らず官僚の世話になれ、という。
 こんな人生では夢を感じないし、創造力も湧きません。それでいて官僚自身も一年か二年でポストの変わる無責任な小市民。小市民が小市民を導く世の中では「安全・安心・清潔・正確」な「小天国」はできても「大きな夢」も「楽しい冒険」も生まれない。日本の少子化も「夢不足・楽しみ不足」のせいでしょう。
 いま巷に溢れるのは「夢や欲」ではなく、官僚への嘆願ばかり。日本全体が「夢不足・欲不足・ワル不足」の大危機です。日本人みんながこの惨状に気付いて、官僚主導の小天国を少しずつ揺るがしましょう>

□堺屋太一「官僚が生んだ「3Y社会」 ~戦前生まれ115人から日本への遺言~」(「文藝春秋」2016年9月号)
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 【参考】
【日本への遺言】日本人はステレオタイプの意見だけ ~先入観と固定観念~
【日本への遺言】大豆で日本は復活する ~大豆100粒運動~


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