語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【官僚】補正予算にたかるシロアリ ~基金という名の裏金~

2014年03月24日 | 社会
 (1)東京・大手町から徒歩数分のところにあるビル1階に、郵便受け100個以上が設置されている。レンタルオフィスの利用者向けで、公的団体やベンチャー企業らしい名前が数多く並ぶ。
 例えば、「地域デザインオフィス(ADD)」。
 常設のオフィスがあるわけではない。今いるかどうかも確認できない。連絡内容を郵送するか、こちらで伝言メモを取り次ぐ・・・・と受付は、問われて返事をした。

 (2)ADDは、2012年9月設立で、2013年5月16日に同所を主たる事務所として登記された。
 経済産業省所管の「津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助事業」の1,400億円以上の基金を管理している。くだんの事業は、東日本大震災被災地の雇用創出と商業回復を目的としている。
 同省が、昨年4月に基金を管理する法人を公募し、3件の応募からADDを選んだ。
 しかし、ADDは選ばれた時点で基金管理に係る実績はなかった。審査は書類選考のみ。
 「外部有識者による第三者委員会において厳正な審査を行った結果」だ、と同省産業施設課はいう。委員会メンバーは、産業技術、地域経済、財務会計の各分野から選んでいる、というが、氏名は公表していない。
 3月14日、参議院予算委員会で蓮舫参議院議員(民主党)が法人選定について質した。「基金管理法人の公募が行われた時点でメールボックスしかなかったのはご存知か?」
 茂木敏充・経済産業相答えていわく、「5月16日に採択の内示をして、その際には適切な事務所を構えるこということでありまして、5月20日に事務所を構えております」。
 続いて、加藤洋一・地域経産審議官答えていわく、「公募申請がありましたときは、新たに占有スペースを借りるという前提で、それを含めて評価採択した」。

 (3)公募開始と重なる昨年4月10日に、ADDの代表理事に就任した財団法人日本立地センター理事の某は、「手伝っていますが、給料は貰っていません。基金管理をやるため神保町でオフィスを借りています」。
 基金管理の経験はない。基金管理の公募があるkとは日本立地センター理事から聞いた。【眞野修司・代表理事(設立時から)】
 眞野代表理事は、都市再生機構OBで、企業誘致や、都市計画に長く携わった人物だ。
 同席したAは、りそな銀行OBで、かつて年金基金運用を担当した。
 ADDにはほかに、経理担当の女性アルバイト1人の計3人が常駐しているらしい。
 管理運営経費として1,400万円(2013年5月~2014年1月)が国から支払われ、月150万円を人件費と事務機器などのリースに使っている。【眞野代表理事】
 この基金の資金はみずほ信託銀行に預けられ、事業の公募と採択の実務は、みずほ情報総研が行っている。

 (4)基金にまつわる疑問は(3)にとどまらない。
 予算の半分強しか使ってないにも拘わらず、補正予算でさらに積み増そうとしている。一方で、使いたい人が使えない。まずは、今残っている予算の円滑な執行や、政策効果の分析などを行ったうえで積み増す必要があるのか、ないのかを考えるべきではないか。
 2月4日、衆議院予算委員会で、玉木雄一郎・衆議院議員(民主党)/元財務官僚は、5.4兆円の2013年度補正予算の、計上された「地域商店街活性化」基金への積み増し53億円の算定根拠について質した。
 2012年度補正で100億円が計上され、2013年度末時点で47億円が残っていたにも拘わらず、経産省はさらに53億円を積み増そうとしている。
 かつて特別会計は離れのすき焼きに例えられたが、額ありきで積み上がっていく補正予算も性質が似ている。基金で使い残しがあるのに積み増しされた「にぎわい補助金」のようなものもたくさんある。基金は単年度で使い切らなくてもいいし、貯め込んでおける。そこから人件費等を抜ける安定財源となる。出し入れが自由な上に、チェック機能が働きにくい。【玉木議員】
 「地域商店街活性化」基金の管理には、全国商店街振興組合連合会が、公募を経ずに選ばれた。都道府県商店街振興組合連合会が申請窓口となって助言・指導をする。応募件数は1,966件、採択件数は1,813件だった。
 全国商店街振興組合連合会が基金を管理している事業には、残高が59億円あるのに、2013年度補正予算で172億円を積み増した「商店街まちづくり補助金」もある。ソフト面をサポートする「にぎわい補助金」に対して、こちらはハード面に力点が置かれる。
 問題は、書類が煩雑であるのに加えて、申請窓口が事務処理に慣れていないことだ。マニュアルも分かりづらい。
 ために、地域振興のための事業なのに、現場では事務的負担が重すぎて振興どころではない。

 (5)統制を欠く基金化は、合法的な裏金化と言ってよい。基金化は、震災復興等の緊急事態に持続的に対応するような場合には有効だが、財政会計法令の規律が十分に利かなくなる。透明性を欠き、事業効果を適時適切に検証できる仕掛けに欠く、という問題がある。それを避けるには、基金ごとに法律など明確なルールを作らねばならない。基金基本法を作ることも視野に入れる必要があるが、役人は規律を免れ弾力的に使いたいから基金化している。違法な裏金が最終的に行き着く先は個人の不正流用だが、その点を別にすれば、基金も実態はあまり変わらない。【有川博・日本大学総合科学研究所教授/会計検査院OB】
 官庁側には基金のメリットがあるが、国民にとってはデメリットだけが目立つ。

□津村一也(ライター)「あきれた1千億の預け方」(「AERA」2014年3月24日号)
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