語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>食品>新米は安全か?

2011年08月29日 | 震災・原発事故
 農林水産省は。青森県から静岡県の17都県に対し、玄米のセシウム汚染調査を行うよう求めた。
 暫定規制値(500Bq/kg)【注1】を超えた場合、その地域のコメの出荷は禁止される。
 他方、自主検査を行う自治体は、北陸、近畿、中国、四国地方まで拡大し、13府県が実施を決めた(8月13日時点)。
 検査は、収穫前後の2段階方式で行われる。収穫前の予備検査で(a)200Bq以下のコメ、(b)200Bq超のコメに分類。(a)は収穫後の本検査でも200Bq以下ならそのまま販売可能となる。予備検査、本検査で200Bq超過のコメは、約15haごとに改めて検査し、その結果が500Bq以下ならば販売可能となる。

 「500Bq/kg」は、あくまで「暫定」的な規制値にすぎない。
 チェルノブイリ原発事故後、旧ソ連は、86年5月30日から87年12月15日まで、セシウム137およびストロンチウム90に関して飲料水370Bq/kg、牛乳370~3,700Bq/kg、穀類370Bq/kgなどの規制値を設けた。
 また、事故後に独立国となったベラルーシは、91年以後、穀類やパンの放射線規制値は40Bq/kg以下と定めている。
 日本のコメは、チェルノブイリ原発事故の旧ソ連の穀類の規制値(370Bq/kg)を上回っている。

 暫定規制値の「暫定」は、具体的には何時から何時までの期間を指すのか。
 驚くべし、これは事故発生から「24時間」なのだ【注3】。放射性物質放出継続時間が「24時間」を超える事故は、原子力安全委員会は想定していなかった。「24時間」を超えて放射性物質が放出され続ける事態が想定されていなかった以上、今回の福島第一原発事故に適用できる規制値は存在しない。
 事故から5ヵ月経っても「暫定」規制値を適用し続けている現状は異常だ。
 その異常さは、原子力安全委員会自ら承知していて、新たな規制値制定を求める委員の発言が委員会速記録に記録されている。
 新たな規制値は、現在、食品安全委員会に諮問中であり、答申を見た上で検討する。【厚生労働省食品安全部基準審査会】

 霞が関の官僚が責任逃れに終始する中、消費者は検査そのものに不信を抱く。
 巷では、新米の人気が陰る一方、10年産の古米の人気が過熱する。
 8月の頭にテレビで「11年産が危ない」と扇情的に報道した結果、関東に本拠を置く某米穀会社では、その後5日間に限って例年の2~3倍のペースで売れ行きが伸びた。買いだめしたところで、夏場は虫が湧くだけなのだが【注4】。

 新米が100Bqなのか499Bqなのか、消費者に確かめる術はない。
 ブレンド米をひと粒ひと粒検査するのは、事実上不可能だ。【農水省消費流通課】
 ブレンド米以外なら検討の余地はあるはずだが、農水省が真剣に検討している様子はない。

 【注1】食品衛生法に基づき、11年3月17日に制定された。
 【注2】茨城県鉾田市で、全国で初めてコメから放射性物質が検出された。【記事「収穫前の米から微量セシウム 茨城・鉾田 検出全国初」、2011年8月19日13:02 msn産経ニュース】
 【注3】事故防災の指針集『原子力施設等の防災対策について』の「EPZについての技術的側面からの検討」に拠る。EPZとは、防災対策を重点的に充実すべき地域のことだ。
 【注4】例えば、秋田でも似た状況となった。【記事「原発事故不安、古米品薄…秋田」、2011年8月26日 YOMIURI ONLINE】

 以上、市川琢也「主食のコメは本当に安全なのか」(「週刊金曜日」2011年8月26日号)に拠る。
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