(1)食事におけるコレステロール摂取は、制限しなくてよい。
こういう見解が、肥満者の多い米国で示された。
食事から各栄養素を摂取する目安を決める「食生活ガイドライン諮問委員会」が、2月19日に公表した『2015年度報告書』は、「コレステロールは過剰摂取を心配する栄養素ではない」と明言している。
(2)米国ほど明示していないが、日本の「食事摂取基準」でも、2015年度版からは、コレステロールの摂取上限目安量は削除された。
従来、卵などコレステロールの多い食品の摂取と心臓疾患との関連を調べた一部の研究で、リスクが増える結果が出ていた。しかし、その後の大規模な全国調査やシステマティックレビューなどで、関連は認められなかったためだ。
そもそも人間は、必要なコレステロールの8割を体内(肝臓など)で合成している。食物から摂取するのは2割程度だ。
食事からの摂取量が増えると、肝臓での合成を減らし、
食事からの摂取量が減ると、肝臓での合成を増やす。
こうした仕組みがあるから、健康な人の場合、食事からのコレステロールを制限する必要はない。
・・・・これが新しい食事摂取基準のメッセージだ。
(3)以上からして、「コレステロールフリー」という強調表示が不要になる。
食用油売り場では、半分以上の商品に「コレステロール・ゼロ」の表示がついている。安い商品ほど大きく「コレステロール・ゼロ」表示されている。
<例>日清オイリオ「キャノーラ油(1,300g入り)」や「サラダ油(1,300g)」。
一方、比較的高価なオリーブ油や胡麻油などには表示がない。
(3)実は、コレステロールは、油脂類の中では動物性脂肪(肉の脂身、ラード、バターなど)に多く含まれているだけで、植物油にはもともと含まれていないのだ。
栄養成分表示でコレステロールの量が義務表示になっていたら一目でわかることだが、コレステロールが「低い」「ゼロ」と強調したい場合にしか表示されていないので、オリーブ油や胡麻油にはコレステロールが含まれているのだという誤解を招きかねない。
(4)コレステロール・ゼロ表示の基準にも問題がある。
食用油の場合、コレステロール・ゼロ表示ができるのは、次の①かつ②の場合だけだ。
①コレステロール・ゼロの量が5mg未満/100g
②脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有割合が15%以下
なぜコレステロール・ゼロ表示に飽和脂肪酸が入ってくるかというと、コレステロールをゼロに減らしても、そのために飽和脂肪酸が増えたらダメという趣旨だ。
植物油の場合、そもそもコレステロールは100g当たり0~24mgなので条件をクリアする。
しかし、飽和脂肪酸については、安い菜種油(7.06%)、サフラワー油(7.36%)であればゼロ表示できるが、胡麻油は15.04%なので②の条件をわずかに超える(ゼロ表示できない)。
しかし、(2)のようにコレステロール摂取上限がなくなった以上、誤解を招く「コレステロール・ゼロ」表示はなくすべきだ。
□植田武智(科学ジャーナリスト)「植物油のコレステロールゼロ表示は合法的優良誤認--なのだけれど」(「週刊金曜日」2015年3月20日号)
↓クリック、プリーズ。↓
こういう見解が、肥満者の多い米国で示された。
食事から各栄養素を摂取する目安を決める「食生活ガイドライン諮問委員会」が、2月19日に公表した『2015年度報告書』は、「コレステロールは過剰摂取を心配する栄養素ではない」と明言している。
(2)米国ほど明示していないが、日本の「食事摂取基準」でも、2015年度版からは、コレステロールの摂取上限目安量は削除された。
従来、卵などコレステロールの多い食品の摂取と心臓疾患との関連を調べた一部の研究で、リスクが増える結果が出ていた。しかし、その後の大規模な全国調査やシステマティックレビューなどで、関連は認められなかったためだ。
そもそも人間は、必要なコレステロールの8割を体内(肝臓など)で合成している。食物から摂取するのは2割程度だ。
食事からの摂取量が増えると、肝臓での合成を減らし、
食事からの摂取量が減ると、肝臓での合成を増やす。
こうした仕組みがあるから、健康な人の場合、食事からのコレステロールを制限する必要はない。
・・・・これが新しい食事摂取基準のメッセージだ。
(3)以上からして、「コレステロールフリー」という強調表示が不要になる。
食用油売り場では、半分以上の商品に「コレステロール・ゼロ」の表示がついている。安い商品ほど大きく「コレステロール・ゼロ」表示されている。
<例>日清オイリオ「キャノーラ油(1,300g入り)」や「サラダ油(1,300g)」。
一方、比較的高価なオリーブ油や胡麻油などには表示がない。
(3)実は、コレステロールは、油脂類の中では動物性脂肪(肉の脂身、ラード、バターなど)に多く含まれているだけで、植物油にはもともと含まれていないのだ。
栄養成分表示でコレステロールの量が義務表示になっていたら一目でわかることだが、コレステロールが「低い」「ゼロ」と強調したい場合にしか表示されていないので、オリーブ油や胡麻油にはコレステロールが含まれているのだという誤解を招きかねない。
(4)コレステロール・ゼロ表示の基準にも問題がある。
食用油の場合、コレステロール・ゼロ表示ができるのは、次の①かつ②の場合だけだ。
①コレステロール・ゼロの量が5mg未満/100g
②脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有割合が15%以下
なぜコレステロール・ゼロ表示に飽和脂肪酸が入ってくるかというと、コレステロールをゼロに減らしても、そのために飽和脂肪酸が増えたらダメという趣旨だ。
植物油の場合、そもそもコレステロールは100g当たり0~24mgなので条件をクリアする。
しかし、飽和脂肪酸については、安い菜種油(7.06%)、サフラワー油(7.36%)であればゼロ表示できるが、胡麻油は15.04%なので②の条件をわずかに超える(ゼロ表示できない)。
しかし、(2)のようにコレステロール摂取上限がなくなった以上、誤解を招く「コレステロール・ゼロ」表示はなくすべきだ。
□植田武智(科学ジャーナリスト)「植物油のコレステロールゼロ表示は合法的優良誤認--なのだけれど」(「週刊金曜日」2015年3月20日号)
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