2014年11月末、「読売新聞」が掲載した異様な「おわび」に世界中が仰天した。
従軍「慰安婦」問題の報道で、同新聞発行の英字紙「デイリー・ヨミウリ」(現・「ジャパン・ニューズ」)が1992年2月から2013年1月にかけて、「性奴隷」(sex slave)などの表現を使用していた、と発表したのだ。
同紙は、
「慰安婦」(comfort women)という表現が「関連知識のない外国人読者には理解が困難」であったと説明し、
「政府・軍による強制を客観的事実であるかのよう」な誤解を招いたことに遺憾の意を表した。
「読売」のおわびは、日本在住の外国人記者に衝撃を与えた。
「ニューヨークタイムズ」紙
「ワシントン・ポスト」紙
「英国放送協会(BBC)」
その他、日本に特派員を置く主要報道機関
がおわびに係る記事を掲載した。
「読売」は、
安倍・現政権の気に障るような政治的表現をしない、と約束しただけでなく、
20年以上も前の記事を自己批判する必要性を感じたのか、
「記事データベースでも該当の全記事に、表現が不適切だったことを付記する措置」をとる。
・・・・とも述べている。
このような公約は、ジョージ・オーウェル『1984年』の主人公、ウィンストン・スミスを彷彿させる。スミスは、真理省の役人として、全能の政府の絶えず変化するイデオロギーと政策に合わせ、日々歴史記録の改竄作業を行っていた。
さらに、「読売」は、12月の続報において、
今後、編集局内で本紙と「ジャパン・ニューズ」の情報共有をさらに進め、
社論を踏まえた「ジャパン・ニューズ」の紙面づくりを徹底する。
・・・・と高らかに宣言した。
このような、上から強制されたイデオロギーに服従するあからさまな姿勢に、世界中のジャーナリストは愕然とした。
「罪の告白に名を借りた政治的表明ではないか、との批判もある」【「ニューヨークタイムズ」紙】
おわびは「驚くべきもの」だ。【「ワシントン・ポスト」紙】
「読売」のおわびは「日本の一部メディアが、戦中の日本の歴史を書き換えようとする政府主導の動きに追随している、との懸念を煽るものだ」。【「ガーディアン」紙】
日本の新聞社が過去の記事の過ちを撤回しても、外国人読者にはたいして興味のないことだ。しかし、このおわびが世界中の新聞の見出しを飾ったのは、「読売」がメディア界の常識からあまりにかけ離れていることを示したからだ。
民主国家においては、大手メディアの役割は政府を監視し、その説明を検証し、行動を調査することであるはずだ。
「読売」が国民の信頼する政府の監視役というよりは、自民党の代弁者を長年務めてきたことは、外国人識者の目には明らかだった。
それにしても、「読売」内部が劣化していることに驚きを禁じ得ない。政府のイデオロギーへの服従を公言することで、信念を持った姿勢と世界から称賛されるどころか、冷笑と恐怖を呼び招くことすら予見できないのだから。
「読売」のおわびは、報道倫理の観点からすると恥でしかない。しかし、同紙の編集委員は、政府への追従と自己検閲は、むしろ誇るべきことだと信じているらしい。
□マイケル・ペン「政府追従を公言--『読売新聞』の「お詫び」 ~マイケル・ペンのペンと剣~」(「週刊金曜日」2015年1月9日号)
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従軍「慰安婦」問題の報道で、同新聞発行の英字紙「デイリー・ヨミウリ」(現・「ジャパン・ニューズ」)が1992年2月から2013年1月にかけて、「性奴隷」(sex slave)などの表現を使用していた、と発表したのだ。
同紙は、
「慰安婦」(comfort women)という表現が「関連知識のない外国人読者には理解が困難」であったと説明し、
「政府・軍による強制を客観的事実であるかのよう」な誤解を招いたことに遺憾の意を表した。
「読売」のおわびは、日本在住の外国人記者に衝撃を与えた。
「ニューヨークタイムズ」紙
「ワシントン・ポスト」紙
「英国放送協会(BBC)」
その他、日本に特派員を置く主要報道機関
がおわびに係る記事を掲載した。
「読売」は、
安倍・現政権の気に障るような政治的表現をしない、と約束しただけでなく、
20年以上も前の記事を自己批判する必要性を感じたのか、
「記事データベースでも該当の全記事に、表現が不適切だったことを付記する措置」をとる。
・・・・とも述べている。
このような公約は、ジョージ・オーウェル『1984年』の主人公、ウィンストン・スミスを彷彿させる。スミスは、真理省の役人として、全能の政府の絶えず変化するイデオロギーと政策に合わせ、日々歴史記録の改竄作業を行っていた。
さらに、「読売」は、12月の続報において、
今後、編集局内で本紙と「ジャパン・ニューズ」の情報共有をさらに進め、
社論を踏まえた「ジャパン・ニューズ」の紙面づくりを徹底する。
・・・・と高らかに宣言した。
このような、上から強制されたイデオロギーに服従するあからさまな姿勢に、世界中のジャーナリストは愕然とした。
「罪の告白に名を借りた政治的表明ではないか、との批判もある」【「ニューヨークタイムズ」紙】
おわびは「驚くべきもの」だ。【「ワシントン・ポスト」紙】
「読売」のおわびは「日本の一部メディアが、戦中の日本の歴史を書き換えようとする政府主導の動きに追随している、との懸念を煽るものだ」。【「ガーディアン」紙】
日本の新聞社が過去の記事の過ちを撤回しても、外国人読者にはたいして興味のないことだ。しかし、このおわびが世界中の新聞の見出しを飾ったのは、「読売」がメディア界の常識からあまりにかけ離れていることを示したからだ。
民主国家においては、大手メディアの役割は政府を監視し、その説明を検証し、行動を調査することであるはずだ。
「読売」が国民の信頼する政府の監視役というよりは、自民党の代弁者を長年務めてきたことは、外国人識者の目には明らかだった。
それにしても、「読売」内部が劣化していることに驚きを禁じ得ない。政府のイデオロギーへの服従を公言することで、信念を持った姿勢と世界から称賛されるどころか、冷笑と恐怖を呼び招くことすら予見できないのだから。
「読売」のおわびは、報道倫理の観点からすると恥でしかない。しかし、同紙の編集委員は、政府への追従と自己検閲は、むしろ誇るべきことだと信じているらしい。
□マイケル・ペン「政府追従を公言--『読売新聞』の「お詫び」 ~マイケル・ペンのペンと剣~」(「週刊金曜日」2015年1月9日号)
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