語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>官僚の答弁 ~気象庁長官~

2012年03月23日 | 震災・原発事故
 産業に必要だから、という理由で、野田政権は原発を再稼働させようとしている。
 福島第一原発事故の実態・原因がまだ特定されず、また、事故の収束がまだ見えていないにも拘わらず。
 復興に必要だから、という理由で、野田政権は放射能ガレキを全国の自治体に受け入れさせようとしている。
 福島第一原発が放出した放射性物質をあまねく検査する体制が整わず、また、低線量放射線被曝による健康障害の可能性があるにも拘わらず。

 政府は信頼しがたい。
 国/政治家・官僚は、積極的にウソをつかない場合でも、事実を国民に伝えるに消極的な結果、真実を隠蔽する。
 それは例えば、次のような答弁に見ることができる。

(1)期日:2011年11月17日午後2時
(2)場所:気象庁(東京都千代田区大手町1丁目3-4) 1階 会見室
(3)内容:気象庁長官の定例会見
 羽鳥光彦(57)・気象庁長官が、冒頭数分間、災害情報について報告。その後45分間、質疑応答。

 Q:放射能調査研究費が止められたことで、福島原発から流れる放射性物質をとらえていた観測が止められる事態になりかねなかった【注1】。これをどう考えるか。
 羽鳥:文部科学省から要請があった。当時としての判断は正しかったと思う。

 Q:世界が注目する放射能観測の重要性についてはどう考えるか。 
 羽鳥: 政府全体の計画の中で優先順位もあろうかと思う。文科省にお聞き願う。

 Q:気象研究所では7月から、放射性物質が広がる様子をホームページに載せている。なぜそれまで公開できなかったのか。 
 羽鳥:原子力防災計画においてSPEEDIが位置づけられ、文科省が全体の対応を行っている。文科省がそれを利用して最善の対応を行っていくのが妥当だ。ホームページの公開は、直前まで私は知らなかった。 

 <一連の経緯について長官としての考えはほとんど示されず、「文部科学省の指示にしたがったまで」という趣旨の発言が繰り返された。会見中「文部科学省」という言葉は16回使われた。>
 <青山道夫らのネイチャー論文の掲載を、所長が認めなかった件【注2】でも質問が出た。しかし羽鳥は「所長を信頼しております」と繰り返すだけだった。>
 気象庁企画課も福島原発事故とチェルノブイリ原発事故との比較は問題があるという意見だ、と付言した。
 長官自身の考えを問われても、<答えは「詳細は聞いておりません」「事実関係は掌握しておりません」だった。>

 Q:早く情報を伝えてくれれば被曝量が少なくてすんだのに、という人が福島には多くいる。そういう人々への言葉はないか。 
 羽鳥:気象庁としてのメッセージは難しいと思います。

 【注1】青山道夫が所属する気象庁気象研究所は、1957年から大気と海洋の環境放射能の観測を半世紀以上続けてきた。福島原発で爆発が起きた3月12日以降、高すぎる放射能が計測され続けた。ところが、突然、3月31日18時に本庁企画課から気象研に電話が入り、新年度の明日から放射能観測の予算は使えない、と言い渡された。
 【注2】昨年4月、青山およびベン・ケッセラー(米国ウッズホール海洋研究所)らの共著論文「福島原発から出た放射性物質の海洋環境への影響」は、「ネイチャー」誌に掲載することが決まっていた。青山の上司、緑川貴・地球化学研究部長は草稿を承認した。しかし、その翌日、前例のないことに、韮澤浩・企画室長から説明を求められた。その6日後、こんどは加納祐二・所長に呼ばれ、チェルノブイリ原発事故との比較を理由に不許可が言い渡された。加納所長は、気象庁に論文を見せ、意見を求めていた。青山は自分の名を削って掲載するよう求めたが、所属長の不許可を理由に、「ネイチャー」誌は掲載を取り止めた。6月初め、日米共同で福島沖の放射性物質を調べることになり、青山も参加予定だったが、辞退を命じられた。気象庁は「参加する予定はなく、事実とは異なる」と提案書に記されていた青山の名前の削除まで求めた。

 以上、朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠 ~明かされなかった福島原発事故の真実~』(朝日新聞、2012)の「第3章 観測中止令」に拠る。
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。