(1)エジプトが非常に重要であるのは、現在の人口の約1割が非カルケドン派キリスト教徒であるということだ。
非カルケドン派とは、カルケドン公会議の決議を拒絶して成立した諸教会のことだ。カルケドン公会議とは、451年にカルケドン、現在のイスタンブールのアジア側あたりで行われたキリスト教の公会議のことだ。
この公会議で、イエス・キリストは真の神で真の人であるという両性論が確認された。この両性論に反対したのが非カルケドン派の諸教会だ。アルメニア使徒教会、エチオピア教会、コプト教会、シリア教会などがある。
エジプトの非カルケドン派のキリスト教徒の9割はコプト教会だが、コプトを含めて非カルケドン派のキリスト教徒が人口全体の約1割もいるわけだ。すなわちエジプトは純粋なムスリムの国ではなく、イスラミズムとナショナリズムの要素が複雑に入り込んでいる。
その中においてキリスト教徒がそれなりの役割を持っており、同時に西側の窓になる。
(2)一昔前までは、コプト教会や非カルケドン派の教会は異端という言い方をされていた。しかし、神学的な研究が進んでくると、非カルケドン派の教会というのは、カルケドン派の教会と距離はそう遠くないということになった。ここでは詳しくは触れないが、公会議の中でも381年の1回目に定められた信条である、ニカイヤ・コンスタンティノポリス信条までは両派は一緒であると考えられるようになった。
日本にもコプト教会の信者が何人かいるのだが、前述の流れを受けてコプト教会ではなくコプト正教会と名乗りを上げている。
エジプトから帰ってきて改宗したような人が多いようだ。教会堂もある。ホームページも持っている。京都の木津川市にある。すでに開堂式を行い、教会も持っていてコミュニティができはじめている。
(3)世界的な動きとして、キリスト教の正統派であるかどうかの基準が、今やカルケドン信条ではなく、ニカイヤ・コンスタンティノポリス信条に戻っている感じだ。
(4)エジプトのキリスト教に触れるのは、ISとの関係で、今後エジプトがどのようになっていくかが重要だからだ。
ここでISが勧めている作戦は、コプト教徒への攻撃だ。コプトしか載っていないバスを襲撃したり、最も弱い子どもを狙ったりしている。コプト教徒を攻撃すると、エジプトのシーシー政権としては、コプトを守らざるを得ない。
そうすると、「なんだ、シーシー政権は異教徒であるキリスト教徒を守っているじゃないか」とエジプト国内のイスラム教徒から批判が出てくる。おそらくISはそのような計算をしている。ゆえに、これからも集中的にエジプト国内のコプト教徒を狙ってくる。
そのような状況が続けば、ヨーロッパのキリスト教社会が反応する。エジプトは一体どうなっているのだという、国際的な圧力が強まる。それによって、人口の9割がイスラム教スンナ派であるエジプトと、キリスト教圏との対立が激しくなる。これはISにとってプラスだ。実によく考えられている。
エジプト国内を割って、エジプトの中にあるエジプト人というアイデンティティを崩壊させる。そしてイスラム主義によるアイデンティティに転換していこうとしている。ISが考えているこの作戦が成功すれば、エジプトは大混乱に陥る。
□山内昌之×佐藤優『悪の指導者(リーダー)論 』(小学館新書、2017)の「第4章 軍を排除する男 レジェップ・タイイイップ・エルドアン(トルコ)、終身最高指導者 アリー・ハメネイ(イラン)」
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【参考】
「【佐藤優】『悪の指導者(リーダー)論 』」
非カルケドン派とは、カルケドン公会議の決議を拒絶して成立した諸教会のことだ。カルケドン公会議とは、451年にカルケドン、現在のイスタンブールのアジア側あたりで行われたキリスト教の公会議のことだ。
この公会議で、イエス・キリストは真の神で真の人であるという両性論が確認された。この両性論に反対したのが非カルケドン派の諸教会だ。アルメニア使徒教会、エチオピア教会、コプト教会、シリア教会などがある。
エジプトの非カルケドン派のキリスト教徒の9割はコプト教会だが、コプトを含めて非カルケドン派のキリスト教徒が人口全体の約1割もいるわけだ。すなわちエジプトは純粋なムスリムの国ではなく、イスラミズムとナショナリズムの要素が複雑に入り込んでいる。
その中においてキリスト教徒がそれなりの役割を持っており、同時に西側の窓になる。
(2)一昔前までは、コプト教会や非カルケドン派の教会は異端という言い方をされていた。しかし、神学的な研究が進んでくると、非カルケドン派の教会というのは、カルケドン派の教会と距離はそう遠くないということになった。ここでは詳しくは触れないが、公会議の中でも381年の1回目に定められた信条である、ニカイヤ・コンスタンティノポリス信条までは両派は一緒であると考えられるようになった。
日本にもコプト教会の信者が何人かいるのだが、前述の流れを受けてコプト教会ではなくコプト正教会と名乗りを上げている。
エジプトから帰ってきて改宗したような人が多いようだ。教会堂もある。ホームページも持っている。京都の木津川市にある。すでに開堂式を行い、教会も持っていてコミュニティができはじめている。
(3)世界的な動きとして、キリスト教の正統派であるかどうかの基準が、今やカルケドン信条ではなく、ニカイヤ・コンスタンティノポリス信条に戻っている感じだ。
(4)エジプトのキリスト教に触れるのは、ISとの関係で、今後エジプトがどのようになっていくかが重要だからだ。
ここでISが勧めている作戦は、コプト教徒への攻撃だ。コプトしか載っていないバスを襲撃したり、最も弱い子どもを狙ったりしている。コプト教徒を攻撃すると、エジプトのシーシー政権としては、コプトを守らざるを得ない。
そうすると、「なんだ、シーシー政権は異教徒であるキリスト教徒を守っているじゃないか」とエジプト国内のイスラム教徒から批判が出てくる。おそらくISはそのような計算をしている。ゆえに、これからも集中的にエジプト国内のコプト教徒を狙ってくる。
そのような状況が続けば、ヨーロッパのキリスト教社会が反応する。エジプトは一体どうなっているのだという、国際的な圧力が強まる。それによって、人口の9割がイスラム教スンナ派であるエジプトと、キリスト教圏との対立が激しくなる。これはISにとってプラスだ。実によく考えられている。
エジプト国内を割って、エジプトの中にあるエジプト人というアイデンティティを崩壊させる。そしてイスラム主義によるアイデンティティに転換していこうとしている。ISが考えているこの作戦が成功すれば、エジプトは大混乱に陥る。
□山内昌之×佐藤優『悪の指導者(リーダー)論 』(小学館新書、2017)の「第4章 軍を排除する男 レジェップ・タイイイップ・エルドアン(トルコ)、終身最高指導者 アリー・ハメネイ(イラン)」
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【参考】
「【佐藤優】『悪の指導者(リーダー)論 』」