goo blog サービス終了のお知らせ 

語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

書評:『珍姓奇名』

2010年08月27日 | エッセイ
 日本人の名字は、十万種もあるよし。
 宇宙という名字もあって、気宇壮大だが、マユツバな印象を与えて、本人は災難だろう。
 本書は、簡単には読めない名字や珍しい名字を3千種も紹介し、併せて珍しい地名もとりあげる。

 3部構成である。
 第1部では、全国的に多い名字2百傑(1位鈴木、2位佐藤、3位田中)をあげ、さらに地域ごとに多い名字を列挙する。
 出典は電話帳らしい。
 ちなみに、風紋の本名は37番目に多い名字である。

 第2部が本書の核をなし、珍姓奇名をこれでもか、というほど枚挙する。
 たとえば、数字だけの名字。
 五六(ふのほり)、九(いちじく)、十(もぎき)、百百(どど)、萬(よろず)、エトセトラ。「一二三(ひふみ)一二(かつじ)」という姓名の方もいらっしゃる。「一二三」が姓だ。
 かくも判じ物めいた名字がずらりと並んぶと壮観というほかはない。
 四月一日(わたぬき)、八月十五日(なかあき)あたりは説明されると納得いくが、小鳥遊(たかなし)、栗花落(ついり)、月見里(やまなし)となると謎々である。
 鷹がいないがゆえに安心して小鳥が遊ぶ、よってタカナシ。いっせいに栗の花が落ちると梅雨入りする、よってツイリ。山がないから月見ができる、よってヤマナシ。

 第3部は、珍姓、難姓、奇姓をひたすら列挙する。
 軽く書き流しているから、興味半分で読んでも面白いが、じっと眺めつづけていると、言葉に対するいとおしさみたいなものが湧いてくるから不思議だ。
 日本の各地で伝統ある地名が地名変更されて次第に消滅していく今日、言霊はかろうじて姓に宿って生き延びているのかもしれない。

□佐久間英『珍姓奇名』(ハヤカワ文庫、1981)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする