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朝日新聞記事
経済産業省は19日、中長期的な産業技術政策のあり方についての提言をまとめた。「技術立国日本は危機的な状況にある」と警告し、複数の企業が協力して行う研究開発などの強化が必要だとしている。
経産相の諮問機関である産業構造審議会の小委員会がまとめた。提言は、日本は07年の特許の新規登録件数が世界1位なのに、実際の製品開発や市場開拓に効率的に結びついておらず、欧米に後れをとっていると分析。経済危機を受けた企業の研究開発投資の落ち込みも加わって危機的な状況に陥っていると指摘した。
こうした状況を打開するために、複数の企業や研究機関が共同で研究を行う「オープン・イノベーション」や、実際の製品化を見すえた基礎から応用までの一貫した研究開発の強化が必要だとしている。
<以上貼り付け>
以下意見です。
たしかに技術経営関係者の間では、「技術立国日本は危機的な状況にある」との見解には深刻なものがあります。そして上記のような多くの評論は、さらなる「オープン・イノベーション」の必要性を強調して終わります。
以前このブログでも述べましたが、危機の元凶は「オープン・イノベーション」の不徹底にある、という論法はよくわかります。
ただし、この種のメッセージを解釈するときには注意すべきことがあります。それは、「オープン・イノベーション」には産学官にわたる多様な当事者がいるわけで、この主張の便利なところは、「オープン・イノベーション」を進めてこなかった罪科を少数のセクターやプレーヤーに帰属させることなく、不作為の分散ができるということです。
まさに総論反省、各論言い訳ありあり、という問題を大局的に述べるのには「オープン・イノベーション」は実に好都合なレトリックとなります。
現下、日本で「オープン・イノベーション」が声高に唱えられ、喧伝されている背景にはこのような事情が存在しています。したがって上記のような「オープンイノベーション」を説くレポートや書物を読むときには注意が必要です。