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自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

技術経営的な人的資源管理論の拡張

2010年05月19日 | 技術経営MOT
こないだ「日本的経営あるいはジェームズ・アベグレン博士との対話」を書きましたが、この話は、人的資源管理論のクラシカルな視点からでした。

そこで、ここでは、技術経営領域でよく論じられるオープン化、モジュール化、製品アーキテクチャ、オープンイノベーションという視点から人的資源管理論を拡張してみます。試論です。

モジュール化とはシステムの全体を比較的独立性の高い部分(つまり、これがモジュール)に分けて、全体システムをモジュールで構築してゆくことです。

パソコン、電子機器、家電などの分野ではおなじみの手法です。最近では、これら以外にも様々な業界がつくるプロダクトにも普及しつつある手法です。さて、モジュール間のインターフェイスでどのような役割分担を行うのかについての「全体思想」を提供するのがアーキテクチャです。

製品アーキテクチャー上でモジュール化が進行している海外・日本企業の方々に対してコンサルティングしていて、気がついたことがあります。ぱっとメモします。(いつかはまともな文章にしたい)

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卓越した海外企業(産業)では製品アーキテクチャのモジュール化とともに、人材も積極的にモジュール化させてきている。これをモジュール人材と呼びます。ジョブサイズが大きい、管理職、専門職、経営者、技術、科学者、起業家というセグメントにまでモジュール化が及んでいます。

業務の内容つまりモジュールの中身は職務記述書(Job Description)で定義されることとなります。モジュール間のインターフェイスを保証するのが、クレデンシャル(学問歴、専門知、ノウハウ)と呼ばれているものです。どこぞの大学院でPh.DとかMScとかMBAでだいたいがわかります。

その結果、雇用市場のなかでも、高度モジュール人材の流動性は高く、彼ら彼女らは、新しいモジュールを求めて比較的たやすく転職をします。キャリアはヨコ出世型です。

そこでは人材は市場で「交換」される価値である、と見なされています。そして、価値志向の強い人たちはその「交換価値」を高めるための生涯を通しての勉強、あるいは生涯学習に余念がありません。

日本企業では、どうなっているのでしょうか。モジュール化はジョブサイズの小さな業務では進んでいますね。オペレーション・レベルの業務ならば、固定費を変動費化するという目的で、非正規化や外注化は常套手段となっています。しかし、ジョブサイズが大きい仕事はモジュール化がかなり遅れています。その証拠に、管理職や高度専門職の転職選好度は概して低く、またインターフェイスを保証する専門的教育も欧米に比べ浸透してはいません。社内擦り合わせ型の人材が多いのです。キャリアの方向はタテ方向願望型が多いですね。いわゆる内部化された労働市場ってことです。

オープンイノベーションの叫び声がよく聞こえる昨今ですが、人材が効果的、効率的にオープンに流動する仕組みぬきのオープンイノベーションはありえません。硬直的に内部化された労働市場に依存する日本の産学官世界から発せられる「オープンイノベーション」には、このように自己矛盾の構造が隠れているということは意識しておいてよいでしょう。

いずれにせよ、クラシカルなHRMではあまり面白くないですね。技術経営の視点で拡張した人的資源論が要請されていることには間違いがなさそうです。技術経営の方法論を実行するのは人=人的資源なのですから。

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