よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

ESRI国際フォーラム2009

2009年03月10日 | 技術経営MOT


今日は昼すぎから、内閣府経済社会総合研究所(ESRI)の社会イノベーションワーキンググループの委員を仰せつかっている関係で、ESRI国際フォーラム2009に参加。

今年のフォーラムは一皮むけた感じだ。開催趣旨に曰く、「これまでの我が国のイノベーション戦略は、2007年6月に閣議決定された「イノベーション25」に見られるように、技術シーズを発展させ、生産性を向上させることで描かれる将来像が中心」となってきた。

しかしながら、イノベーション政策とはイノベーションのサプライ・サイドの科学技術政策に限定されるものではなく、社会ニーズのディマンド・サイドから構想してゆこう、というのが趣旨。今後のイノベーション政策は、社会的な課題やニーズを踏まえた形で議論を展開し、社会の中でビジョンを共有し、それを実現するためのシステムを考え、実行することが重要である、と。

           ***

開会挨拶:平澤 泠
ESRI 国際フォーラム2009 実行委員会委員長
東京大学名誉教授

基調講演者:
Cita M. Furlani
米国 国立標準技術研究所情報技術ラボラトリー
ディレクター

Ralph Dum
欧州委員会未来発展技術 科学担当

諏訪 良武
ワクコンサルティング株式会社常務執行役員
エグゼクティブ・コンサルタント

Barend J.R. van der Meulen
オランダ トエンテ大学経営管理学院科学技術政策学部准教授

パネリスト:
原山 優子
東北大学大学院工学研究科教授

川原田 信市
内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官

           ***

平澤泠先生とは、たしか3年くらい前の第一回MOT協議会のとき以来の再会で、夜のパーティーで歓談となる。以前経営していた会社が、MOT協議会の企画、マーケティングをフルターンキーで請け負っていたのが縁となった。

まあそれはいいとして、平澤流モデレーションは、広範な潤滑油のような知識をパネラーのギア(専門知)に注入して異なる意見を持つ専門家の言説を見事にまとめる。賛成・否定の二元ではなく、あくまで弁証的に高い次元に議論を遷移させるワザはさすがだ。

諏訪良武氏のサービス・サイエンスが面白かったが、なるほど、シンポジウムという知識創造・創発の場づくりのサービスとは、「事前期待」をベースにいかにパネリストとフロアーを巻き込んで、新しい知見を生み出してシェアするにかかっている。

また、平澤先生、諏訪良武氏とアルコールを飲みながら雑談していて面白かったのは、サービスのデザインというのは、専門バカではできないのだ!ということ。細切れの専門知や分野を横断的にヨコグシでまとめてゆくようなウーピー的感覚(キワモノ、異界の越境、学際、異質のまとめあげ)がぜひとも必要だ。このあたりは、サービス教養というか、Tやπの「ー」に当たる見識ということだろう。

さて、パネラーのほぼ一致した見解としても、科学・技術シードを契機とするイノベーションの創発は先験的に予見、計画することは困難だろう。たしかに破壊的なイノベーションという代物は事後的に認知できるものであって、予見は難しいだろう。

さて、事前期待(ニーズ、あるいはservice preposition)とシーズの協創によって成立するサービスが駆動力となるサービス・イノベーションに注目するべきだろう。ここで現象面でのいくつかの根拠をあげておくと:

・その1:日本のGDPの70%はサービスから生まれている。

・その2:先進国の消費は脱物質化している。つまりモノの所有からモノの使用へシフトしてきている。(車を買う→リース・レンタルで済ます。ソフトを買う→SaaSで済ます。家を所有する→賃貸で済ます、iPodよりもi-Tunesなどなど)

・その3:利潤原理で運営される株式会社、非営利のNPO/NGO、大学、ビジネス起業家、社会起業家が造る付加価値は、おおむね70-80%がサービスに由来する。

近い現場では、

・その4:MOT大学院生(農工大など)が作ってくるビジネスプランの85%はサービス・ビジネスの計画である。

サービス化の流れは経済そのものの知識化・経験産業化の流れと表裏一体をなす。ものづくり(伝統的モノ系MOT)のみではなく、それとは別に、あるいは相互に補完するものとして、コトづくり(サービス作り系MOT)の流れがあるのだ。当然MBAの関心もサービスに収斂してくれば、MOTやMBAといった線引きは有名無実化するのは必然だろう。

そもそも社会とはJim Spohrerが言うように「サービス・システムのエコロジー」と同義だ。サービス・イノベーションを多様な主体が共に作り上げて分かち合う「場」がずばり社会。・・・という見方をすれば、スンナリゆく。

ひとつ、ここは、垣根をとぱらって法人や制度のビークルの種類に拘泥することなく、さまざまなエージェント(意志決定と行為の主体者)によってなされるサービス・イノベーションのあり方を議論したいものだ。もちろん行政というエージェントも含めて。十中八九、そのような方向に向かうだろう。面白い。

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2 コメント

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サービスサイエンス・イノベーション (めたぼうっちー)
2009-03-14 01:21:56
興味深く拝見させて頂きました。昼間はなかなか出席できません、、残念です。。
確かにサービスイノベーションの動き、注目すべき動きとの認識をもっています。先日も文科省サービス・イノベーション人材育成推進プログラムにて委員会やこのプログラムの選定がされている様です。
私のプランも85%の中の一つであり、業種もサービス業ですので、”モノつくり”も考えるのですが、”コトつくり”が特に多く考えてしまいます。
ウーピー的感覚は我々の仲間と共に持ち続けていたい感覚です。
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サービスサイエンス・イノベーション (ヒロマット~)
2009-03-14 09:47:31
めたぼうっちーさん、

サービス・イノベーション、本当に面白いです。MOTでもサービスをきちんとやっていかねばならないと思っています。

09年前期は人的資源管理論でサービスのテーマを扱います。

卒業してからも授業に参加する人もOKとするので時間があれば遊びに来てください。ウーピー仲間を増やしてゆきましょう!


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