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自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

サービス・イノベーションの経営学・10

2010年10月05日 | 技術経営MOT


連載10ヶ月目は「共生サービス=人と人とが支え合う絆と健康基盤」です。

看護管理 2010年10月号 (通常号) ( Vol.20 No.11) pp1004-1009

一部抜粋してコピペしておきます。

<以下貼りつけ>

企業共同体からなんらかの理由ではじき出された人々の率、つまり完全失業率と自殺率との間には強い相関関係があります(相関係数=0.90)。人事制度、雇用関係の変遷、失業率と自殺率の変化を過去に遡って現在まで見渡してみると、日本の企業社会の共同体性は、着実に希薄化、衰微していることが分かります。

家庭についても一瞥します。小さな共同体の代表である家庭を持つことを選好しない非婚率の上昇、離婚率の上昇は、社会における家族や家庭のありかたが微弱なものになりつつあることを示唆します。家庭の中では、貨幣の支払いを伴わない無償のサービスが中心です。たとえば、家事にいそしむ主婦の仕事には通常、対価としての貨幣は支払われませんが、家事がなければ家庭は存続しえません。

また、ちょっとした「風邪」などでは、家族がいたわり合って暖かい食事を作ってゆっくり休ませるのが、ごくあたり前の家庭でのごくあたり前の風景です。贈与、互恵の精神的紐帯で結ばれる家庭の底力が低下していることと、無縁死、自殺などの現象は無関係ではありえません。

支え合う絆の再構築

上記の動きと連動して、新自由主義的な政策は、小さな政府の推進、公営事業の民営化、規制緩和、競争促進、労働者保護とともに、医療・保健・介護・福祉などの公的サービスを縮小してきました。かつては実体経済にとって潤滑油のような働きをしていたマネー経済が肥大し、グローバル化したマネー経済の市場で、あらゆる商機をうかがって利益を簒奪し、果てしない肥大化の末に政府は不良資産を処理するために巨額のマネーをマネー経済に投入しています。

医療・保健・介護・福祉などの公的サービスの拡大を抑制し、挙句の果てには公的サービスに投入すべき税金や国債で調達したお金までをもマネー経済に投入しています。グローバル金融経済が産み落としたデリバティブをはじめとして私的な金融サービスの暴走により、金融経済、実物経済ともに打撃を受け、さらには政府が税金を配分して行うべき公的サービスの機能不全をもたらしています。

そして昨今の日本には、贈与・互恵に裏打ちされた共同体の生活者同志が精神的な紐帯を保持しながら、支え合う「共」的サービスまでもが、着実に弱くなっているという構図が存在します。「共」的サービスが隅々まで行き渡り、瑞々しい信頼関係が溢れ、たがいにケアし合う社会が維持されているとしたら、自殺や無縁死の問題はここまで大きくはなっていないはずです。

このような状況で、①金融グローバリズムとそれと一体化した政府の暴走、②金融グローバリズム市場での「私」と政府の「公」のせめぎ合い、という二つの動きが立ち現れ、やがては大きな「公」と「私」が「共」を巻き込んで、文字通り共倒れとなるリスク(大恐慌のリスク)が増しつつあります。もし、「公」と「私」がとも倒れになれば、「共」も壊滅的な打撃を被り、贈与・互恵を中心にした「共」的サービスの薄弱化がさらに進むことになります。

市場経済が競争原理をもとに実物経済、マネー経済、そしてそのできもののようなデリバティブといった方向で膨張・拡大してゆくにつけ、どうやら瑞々しい共同体のはたらきを縮小・疎外させてきたようです。

ケインズ的な政策に重きを置く福祉国家では、財政が家庭や共同体の相互扶助や共同体の縮小に応じて市場経済の外側で所得再配分をしていた と説明されますが、もはやマネー経済の暴走の火消しに追われ、返すことができない国債を増発する政府には、まっとうに所得を再配分するだけの力は残ってはいません。

企業、地域、ご近所、家庭などの共同体の「共」の場を元気にし、「共」の場でともに生きてゆくことを共生と言うのならば、新しい時代の課題は、いかに健康基盤たる社会的絆を再構築、涵養する共生サービスを育んでゆくのかということになります。

<以上貼りつけ>

『もし、「公」と「私」がとも倒れになれば、「共」も壊滅的な打撃を被り、贈与・互恵を中心にした「共」的サービスの薄弱化がさらに進むことになります』と書きました。しかし、恐慌による「公」と「私」の共倒れは、短期的には「共」にダメージを与えるでしょうか、やがては、贈与・互恵の場としてのご近所、地域コミュニティ、家庭を始めとする、様々は共的な場が再活性化する契機となるでしょう。

その意味では、恐慌は、共生サービスを復活させる契機なのかもしれません。

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