よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

サービスの共創生、共進性、贈与性、互酬性

2010年03月08日 | 技術経営MOT
サービスについてはいろいろな定義がある。

「サービスとは、無形でありサービス提供者と消費者の相互作用を必要とするあらゆる経済活動 」(ローイ)

「サービスとは、人や組織がその目的を達成するために必要な活動を支援することである 」(故・亀岡先生@JAIST)

「サービスとは、価値を創造し取得する、提供者と顧客の相互作用である」(IBM)

「サービスとは、他者に対して提供される活動もしくは便益であり、本質的に無形で、購入者に所有権を一切もたらさないもの 」(Kotler)

2008年度「通商白書」 によれば、わが国では製造業の労働生産性を1 としたときにサービス業のそれは0.616 。同様の比率は、アメリカ0.919、イギリス0.760、ドイツ0.938、フランス0.974 。だから、サービスにはイノベーションが必要だとする論法がある。もっともな主張だ。サービスを交換の対象とする財にして市場化してゆけばたぶん生産性は上がる。だからサービス・イノベーションとは、サービスの合理化=市場化という側面がついてまわる。

サービスには共創性(co-creation)、共進性(co-evolution)という性格があると同時に、サービスには贈与性や互酬性が埋め込まれていることにも注意しなければならない。医療サービス、福祉サービスはとくにそうだ。医療や福祉では、「お互い様」、「みんなで助け合う」、「みんなで分け合う」、「明日は我が身」という共同体的な絆や規範といったものが根底にあり、たんに市場で一回性のサービス財を交換しているわけではない。社会との関係性の中で、あるいは共同体の一員として相互に関係しながら、これらの「サービスの場」に身を置いているはずだ。

見方によっては、低い生産性は、非市場的にサービスを位置づけてきた証なのかもしれない。つまり、社会イノベーションや医療サービスを議論するときの「構え」が問われるのだ。(1)徹底して市場化して効率、生産性を高めるようなイノベーションを推進する。あるいは、(2)効率、生産性といった規準を横においておき、社会の福利を重視するイノベーションを進める。

(1)はアメリカのやり方。(2)は大きな政府、ばらまき福祉につながる危険性多し。だだし、財源逼迫でできないのだが。さて、日本の選択は?

(1)or (2)ではない。(1)and (2)だから、ことはややこしいのだ。さて、ここで自分たちを映し出す鏡が必要となる。ここで発想の展開!案外、贈与と交換が混交するイスラーム的市場のありかたが参考になるのかもしれない。公的な保険サービスはどのような契約なのだろうか。興味は尽きない。

イスラームでは医療、福祉サービスはどのようなスキームで社会に根づいているのだろう。コーネルの医療経営大学院にはパキスタン、マレーシア、ヨルダン、インドネシアから勉強に来ていたムスリムが多数いた。彼らは、医療の多くの部分を市場原理の上に置いているアメリカ医療に批判的ながらも、それぞれの国や地域の医療サービスの効率化のためも、アメリカ的管理医療やHealthcare researchの方法の習得に余念がなかった。OB/G会があれば、いろんな議論をしたいのだが・・・。

惜しむらくは、医療経済制度比較論(Comparative Health Economics and Institutions)は、アメリカ、欧州、たまに日本を比較はするが、イスラームの医療サービスまでは比較の対象にするのは稀だ。

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