よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

世界中に張り巡らされた根茎と化すウォール街占拠運動

2012年06月07日 | 恐慌実況中継

季刊誌「人間会議」に寄稿しました。詳細はこちらから。

<以下貼り付け>

「ウォールストリートを占拠せよ」(Occupy Wall Street:以下、OWS運動)ではソーシャルメディアが多用されたことが知られている。OWS運動は、社会システムのやぶれ、ねじれのようなものだ。筆者はOWS運動を、変幻自在に「空間」に根を張りめぐらせる複雑なリボゾーム(根茎)のようなものに見立てている。そこでは、さまざまな「差異」が既存の社会システムに意義を唱え、反対・反抗のメッセージを拡散している。

4つの反抗は米国の根幹を問う

当初は、実に様々な反対・反抗のメッセージが乱舞していたが、運動の過程を経て、それらの反抗のメッセージは、大別して4つに集約されてきている。

大量失業問題無策に対する反抗
米国の統計では失業率は9パーセントと言われている。しかし、非正規労働者で十分な賃金を得ることができない「アンダー・エンプロイメント」を含めると17パーセントという高い数値となっている。特に若者の失業問題は深刻だ。労働市場から排除されている人々が多すぎるのである。これらの背景から、オバマ政権は、失業問題に対して有効な政策をとっていないという批判が噴出した。

格差に対する反抗
富裕層上位1パーセントが全米所得の20パーセントを占めている。そして資産規模では上位10パーセントに属する人々が全米の資産の90パーセントを占めるという強烈な所得格差、資産格差がやり玉にあがっている。「99%の私たち」というスローガンには、「1パーセントのアメリカ人が占有する富に対して99パーセントのアメリカ人は排除されている」という問題意識が顕れている。もはや、この圧倒的な格差を容認すべきではない、という反抗である。

民主主義の換骨奪胎に対する反抗
さらに進んで、この格差を放置しているアメリカの民主主義はどうなっているのか、という疑問がある。圧倒的多数の持たざる「民」のために民主主義はあるはずなのに、まったくそうなっていない現状に対する反抗である。

強欲・金融資本主義への反抗
先に上げた3つの反抗は、行きつくところ現行の体制のバックボーンである資本主義のあり方に向かっている。99パーセントの人間が直接関与している実物経済を活性化させるより、むしろ、それに寄生して利益を収奪する強欲・金融資本主義が諸悪の根源というのである。その象徴としての「ウォールストリート」がやり玉に挙がっているという構図だ。

これら4つの理由が結合すると、明確な体制への反抗となる。すなわち、米国流のフリーマーケット(自由市場)によって、「自由」を享受できるのは、わずか1パーセントの富裕層である。特に実物経済にレバレッジを掛けて欲しいまま儲けて、破綻すれば、税金によって救済される大手投資銀行の存在に、人々は、強欲・金融資本主義の米国国家との結託を見てとった。それらの結託はアメリカの国是であるはずの民主主義の根本を否定するものなのだと。OWS運動は、現下米国の、市場主義、資本主義、民主主義のありかたに対する先鋭な反抗なのである。

<以上貼り付け>


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