息子が中学に入学した4月9日の朝早く、実家のゴンタが天に召された。享年17歳。人間でいえば、きっと祖母のように内閣総理大臣から表彰状を貰える3桁の年齢になっていたのかも知れない。
最初に飼ったチロという犬が13歳の頃、家の裏の林に入ったまま行方不明になってしまい、家の全員が落ち込んでしまって何ヶ月かした頃(もしくはもっと経っていたかも知れないが)、仕事から家に帰ったら赤ん坊のこの犬が家にいた。母が言うには「くださった方がこの犬は血統書だといっていた」らしいが、私は諭すように母に「だったら何の種類なのか?」と聞き返したら、種類までは聞いていないという。
生まれたばかりのこの犬は、毛も無く大型のネズミのようだったのだ。こんな血統書の犬、見たことも無い。結局母は、この犬の両親はそれぞれ血統書だったらしいというホントか嘘か分からない情報を聞いてきて(端的に言えばそれが「雑種」の定義なのだが)、横文字のきれいな名前、例えばジャックだとかそういう名前は似合わないと思い、ゴンタ(漢字では権太)と私が名づけた。
結婚する前からゴンタは家にいて、結局私も妹も同じ年に結婚したので、その後ゴンタは両親の子供のように「わがもの顔」で実家で過ごした。目が白内障になり、階段も上り下りが難しくなった頃から、おしめをつけ、老人(老犬)のように両親に介護してもらっていた。
17年という歳月は、私が結婚し、子供が生まれ、その子が中学生になるまでの期間。犬の一生が私たちの人生にリンクしていているのだという事を改めて感じた。
単なる犬ではない、家族だ。
父は随分落ち込んでいる。無理は無い。毎日寝起きを共にしていたぬくもりがもう無いのだから。
ゴンタには、至らないすねかじりの兄妹が出て行った代わりに、実家の両親を世話して貰ったのかもしれない。本当に有難う、と言いたかったけど・・・・
本当に有難う。